表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界に渡った狩人たち  作者: カカセオ
第一章 狩人たち
7/13

07 狩人と野生の群

 Hunter and Nature Troops――通称HANT(ハント)、一昔前の狩りゲーを更にリアルにしたかのようなVRMMOだ。


 垢等の汚れや傷などの表現も充実しており、容積無視な収納は銀行の倉庫ぐらいで無論時間経過で劣化する。

 モンスターの解体もアイテム作成も実際に行わなければならず、PCプレイヤーキャラクターにはレベルは無く能力値を上げようと思えば現実と同じく鍛えるしかない。

 鍛えても外見的な変化は無く成長限界も存在しないなど、ゲーム的な部分は多々と在るが、VRMMOで主流な剣と魔法の中世風ファンタジーとは一線を画す泥臭さ。

 それを新鮮に感じた人々が食いつき、一人、また一人とのめり込んでいった。

 そして今では押しも押されぬタイトルの一つとなっている。

 二匹目のドジョウを狙って開発に取り組む所も少なくないが、HANTほどの自由度を再現できずに終わる。


 このゲーム、PCにレベルは無いが、取得できるスキル(技術)と呼ばれる物にはレベルがあり各種補正を受ける事ができる。

 例えば、片手剣のスキルを取得していればレベルに応じた腕前になり、薬草知識のスキルを取得していれば思い浮かぶ。

 取得の仕方もレベルの上げ方も簡単で、スキルに該当する行動をしていればそれで十分。

 スキルは多種多様で、1レベルだと初心者程度だが、最大の10レベルともなれば玄人並。

 SASスキルアシストシステムと名付けられているこれのお蔭で、運動や覚える事などが苦手な人でも楽しめる様にはなっている。


 一見すると間口を広くしているようだが、本当の所はちょっと違う。

 スキルは現実での能力に該当するレベルまで自動的に上がる。

 そして、ゲーム内で同じ行動をしていてもレベルの上がり方は個々人で違う。

 SASのお蔭でできているのか、できるからレベルが上がるのか。

 最大レベルにたどり着いた頃には、大抵体に染み付いてしまっている。

 実情を知っているプレイヤーは、SASと書いて養成ギブスと読む。


 なお、SASは着脱可能。

 オートとマニュアル、自由度が広いのは当然後者。

 外してからが本番、それまではチュートリアルだと、深みに嵌った者たちは語る。


 魔法が無いのが特徴の一つだが、本当に無いのかは不明。

 なにせ、最近になってようやく気功が見つかったのだ。

 妙な所におかしな物を仕込む事が多い運営なので、無いとは言い切れない。


 気功が見つかったとき賛否両論あったが、今は概ね受け入れられている。

 いくらリアル志向でも、いやだからこそ超人的な能力も欲しいと思うのが複雑なゲーマー心というもの。

 特に、気功が見つかる前から人間辞め……もとい、超人的だった上位陣を間近に見ていた古参勢に歓迎された。


 気功の発見は様々なものをもたらした。

 気に反応して特殊効果を発揮する素材から新たなアイテムが作られ、能力が底上げされたお蔭で多くのプレイヤーの活動範囲が広がった。

 そして、それが発見された。


 気功の使い方の一つ、見えない物を見る事ができるセカンドサイトでしか確認できない空間の歪み。

 何かあるのだろうと色々と試した結果、それが別フィールドに繋がるゲートだと分かった。

 ゲートは一時的に開くと、すぐに閉じた。

 プレイヤーは新たな世界に心を躍らせて潜り抜けたが、その多くは程無くして死に戻って来た。

 冷静に考えれば当然の結果だった。

 なにせ、開け方からして一定以上の気力の篭った衝撃なのだから。

 それ位できないと、生き残れないという意味なのだろう。


 そんな場所へ嬉々として飛び込み、移住する者たちがいた。

 気功を修めた上位陣。

 今までの場所に歯応えの無くなった彼らにとって、ちょうど良い新天地だった。

 負けじと上級者たちが追ったが、常時滞在するのは危険すぎてそちらに移住まで至る者は少なかった。

 その代わり、実力が付くまでの腰掛とゲート周辺に集落を造り、そこから通っている。


 プレイヤーの大半を占める中級者からしてみれば、上位陣も上級者も似たり寄ったり。

 始めの頃は元の方を内側(インナーサイド)、新たに見つかった方を外側(アウターサイド)と呼んでいたが、その内呼び方が変わった。

 人外側(アウターズサイド)、と。


 そんな人外側、最近ちょっとした異変が起きている。

 上位陣の姿をめっきり見なくなったのだ。

 色々噂されているが、その行方を知るものは居ない。



―――



 (人)外側狩人記 66冊目


 ・

 ・

 ・

 ・


331:やっぱり上位陣見てないか?


332:ぜんぜん


333:さっぱり


334:これっぽっちも


335:やっぱり止めたのかな?


336:全員一度にはないだろ。組んで遠くで狩ってんじゃねえ?


337:あいつら組むような狩りなら轟音がダース単位で響いてきても不思議じゃないんだが、それないしな……


338:前見たく宇宙で戦っているとか?それなら不思議じゃないだろう


339:いや、それでもなんか観測できるはず


340:運営の暗躍説はどうだ?


341:CPOの時見たくか?でもなにか事前アナウンスぐらいあるだろ


342:他に見ない奴っているか?


343:知り合いではいないな


344:最近来ないの居るけどテストの点数悪かったから禁止中だとさ


345:俺に良い考えがある。世界を救うために召喚されたんだよ、きっと


346:ラノベ脳乙


347:それは無い(笑)いや、あいつらなら出来そうだけどさ


348:むしろその世界の方がヤバイよな(笑)


349:ちゃんと手加減するんじゃないかな、たぶん、きっと


350:内側の惨状思い出しても同じ事言えるか?


351:あれってどこまでやれるか試しただけだろう、結果は酷いけど。流石に大丈夫だろう


352:試さないと言えるか?


351:・・・ごめん、言えない


352:あの時点であれだけの惨状、今だとどれほど被害になるか……


353:外側は異常に丈夫だから何とかなってるけどさ。それでもああだし


354:……とりあえずその世界の冥福を祈ろうか


355:南無〜


356:なむなむ


357:・・・お前らも十分ラノベ脳だよ


 ・

 ・

 ・

 ・



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ