表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

魔王の死

 ……アクェラシュ家初代当主、アクェル――私の祖父は、饗宴の席で魔王を討ったとされる。

醜悪なる魔族達が入り乱れる北部高原にて覇を唱えた魔王は、邪教の魔を操って人心を掌握し、その妖術で以て如何なる戦にも勝利し続けた…。

 やがて、その音楽隊が奏でる恐ろしき不協和音が……我ら農耕民の大地に響き渡ると、下劣なる魔王は苛烈なるVandalism(ヴァンダリズム)の末に北部高原の過半を征服せしめ、その音色は遂にラドノルサ帝国首都カハルにまで達する――。


 ――シフェトル専制公ハルウェリ陛下の狩猟隊長であった祖父アクェルは、停戦交渉と銘打った暗殺計画に参加。杯にシシリ花の毒が盛られたが、歴戦練磨の魔王にとっては戯れに過ぎなかった。毒が齎した微かな匂いの変化を、魔王は感じ取ったのである。

 魔王は祖父達(暗殺者達)に杯を投げ付け、激怒した。「我が愛馬に帝都カハルの皇宮で飼葉を食わせてやる!」「皇帝の寵愛を受けし皇后を――吾の祝宴にて給餌とし、皇帝を踏み台に帝国の玉座で勝利の美酒を呷ってやるのだ!」と、怒りのままにラドノルサ帝国征服を口にしたのだ。

 祖父の仲間達は……待ち受ける拷問と処刑の苦痛を思って身が竦み、眼前の怒り狂う猛獣を前にして、身動き一つ取れなかった。だが祖父は――勇者アクェルは違う。勇者は守衛の直剣を奪うと、食卓を駆け上がり、乾坤一擲の思いで……運命の一閃(・・・・・)を放った。

 ……魔王は討たれた。終わらせたのだ。世界を襲った悲劇を、梟雄なる魔王の征服劇を。全てを終演に導いた。我が祖父は英雄と讃えられた。


 ――その後、窮鼠が猫を噛むが如く守衛達を斬り伏せ、混乱の中で魔王の居城を脱した勇者アクェルは、皇帝陛下の御前に於いて――魔王旧領の一つルトゥエサ伯に封じられ、方伯と成る。

魔王亡き魔族軍は、後継者(ディアドコイ)の座を巡る大内戦の末に凋落へ至り、魔王旧領の一部は皇帝陛下の北伐親征で――帝国に吸収されたのだ。



 ……そうして…祖父が手に入れた称号を、今、孫が継承する。

私はルトゥエサ方伯ホルセン1世アクェラシュ。大勇者アクェルの子孫にして帝国諸侯が一人。

これと言った野心は無いが、所領を廃れさせるつもりは無い。

私は、我が祖父より受け継げし土地を……守り続ける。勇者アクェルの征服地を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ