勘違い
俺には前世の記憶がある。猟師としてゴブリンを仲間と狩って、記憶が途切れている。なんてことない一日で死んだのか魔法に巻き込まれたのか。さっぱりわからねえ。慰めがあるとすればひとつ。貴族の子に生まれ変われた。
「先生、うちの子やせすぎでしょうか」
「うん。様子見しましょう。もしかすると」
思わずにやけてしまう。日本語をやっと理解できるようになった。異国の言葉をしゃべれないようだったらどうしよう。と危機感を抱いて数年。赤ちゃんは言葉を覚えてくれた。それだけではない。目の前に医者がいる。高いお金を支払ってやっと治療してもらえる医者。たかがやせすぎで病院に訪れるなんて。いいところの子供だ。貧乏人の家と金持ちの家どちらがいいかといわれたら金持ちのほうがいい。飯はうまいし、部屋はきれいだし、いい環境だ。
ふっと気が付いたら診察が終わっていた。って速い速い。心臓がどきどきする。車っていう乗り物はどうにも嫌だ。身動きがとれないように固定されて景色がびゅんびゅんと変わる。口がもっと回ればなあれはなんだ、これはなんだ、聞きたいことがたくさんある。目の前の景色をゆられながら眺めていると目の前が真っ暗になった。
じっとまどろんでいると暗かった部屋にぼんやりと輪郭が見える。ああ。寝て起きて。なんか退屈だ
「んっ」あーいーうーえーおー。むずむずするだけでよくわからない。言葉は覚えられたし気長にまとう。1,2、と。
「あははははは、うちの子スクワットしてる」
お母さんが笑っていた。スマホという薄い板を構えている。目につかないように体を鍛えていたのに。
医者「足に筋肉がついてるので運動してるのかもしれません」
やることないし体力つけとくか!と、がんばってます。