夕闇の森
なんだろう揺れている?体が揺れているのか、それとも……?あゆむが下を見ると、あの3匹の男の子達がドリィと一緒にかけっこをしていた。あゆむのハンモックの下を通る度に、
「早く起きろ!」だの、
「このお寝坊さん!」だの、
「夜が来ちゃうよ!」だの、言いながらハンモックを揺らしているのだった。ドリィはようやく起きたあゆむにニィーっと笑いかけると、
「おはようあゆむちゃん。よく眠れた?」
と声をかけた。
ドリィは確かに寝てはいるのだが、それでもあまり寝てないはずだ。それなのに本当元気だなぁ。ドタバタはしゃぎながら走り回っているドリィを見て、あゆむは関心した。揺れに酔いそうになりながらもハンモックを降り、テントの中を見回す。なんだか急に妙な胸騒ぎがした。どこにもフラウの姿が見当たらないからだ。まだあの大きなドラの音は鳴っていないはずだが…。
あゆむは急いで窓に駆け寄り、
「ドリィ!」と即座にドリィを呼んだ。
ちょうどその時フラウが戻ってきた。少し慌てた様子でまだ駆け回っている男の子達を抱きかかえると、
「さぁ、坊や達。もう少しの間良い子でお留守番出来るかしら?」
そう元気良く言ったフラウの顔は、笑っているが、やはり少し様子が変だ。
「フラウさん僕お腹空いちゃった。何か買いに行ってもいい?」
ドリィも気付いたのかすぐに駆け寄る。
「私も外に行きたい。」
あゆむもドリィに続いた。でもフラウは首を横に振るだけだった。ドリィはすがる様な目で、フラウのエプロンの裾をギュッとかたく握りしめている。
とうとう根負けしたフラウがそんな2人を見て小さく息を吐くと、
「いいわ、少しの間だけよ。」
と、外への道をあけたのだった。
トロッコ乗り場の前では、大人達が皆集まっていた。泣いている者もいる。近くのテントへと次々に運ばれる犬達…その姿は血まみれだった。ひどい怪我をし、苦しそうにテントへと入っていく。あゆむはあまりの衝撃で吐き気がした。ドリィも体を小刻みに震わせている。
皆の中にはロビンもいた。怪我はない様だが、その代わりに頭から血を流している者を抱え、テントへと入って行った。
「いい?あなた達はもう帰りなさい。買い物は後にでも出来るでしょう?」
フラウはドリィの言う買い物が、外に行く口実だったと気付いていたらしい。そして足早にロビンの後を追って行った。
「ドリィ、外のこと知ってたんでしょう?」
あゆむの口から震えた声が出た。
「うん、僕外に勝手に出ちゃったんだ。そしたら皆が見えた。見つかると怒られるから慌てて中に入ったんだ。」
「ドリィ君、それにあゆむちゃん!」
テントから出て来たロビンが2人の前に大急ぎでやって来た。
「駄目じゃないか、ちゃんと中にいなきゃ!」
ロビンの口調は昨日とは違い、とても厳しかった。
「ロビンさん!あの、これ…私達のせいですよね。あんな無理なお願いを言ってしまったから。どうしよう!ロビンさん……ごめんなさい!」
厳しい顔のロビンの前であゆむの鼻がツンと痛む。
「違う!僕のせいだ。僕が提案をしたんだ。」
あゆむの言葉に反応し、ドリィも小さく小さく呟いた。
ロビンはフッと肩の力を抜いた。大きく首を張り、目の前の2人の肩を優しく抱き寄せた。
「いや、決して君達のせいなんかじゃない。たまたま運が悪かったんだ。ああいう隠れ家はいくつもあってね。その一つが大佐派に見つかってしまった。始めは皆捕まりかけたが、抵抗し戦った。我々は催眠銃を使っていてね、大佐派を眠らせることが出来たんだが、それでも全員というわけにはいかなかった。残った奴らにやられてしまったんだ。だが、すぐに他の皆が応戦に加わり、誰も捕まらずに済んだ。それだけでもまだ良かったのさ。」
そして2人の顔を交互に見ると微笑んだ。
「大丈夫!心配なんかしなくてもいい。昨日君達が来てくれたおかげで、皆とても勇気付けられたんだ。本当だぞ!さぁ…もう中に入りなさい。ここにいてはいけない、いいね!」
ロビンは軽くドリィとあゆむの頭をコツン合わせると、トンネルへと走って行った。
コンボルト大佐はひどい!昨日なんか想像と違ってたなんて思っちゃったけど、とんでもない!想像通りだ!ひどいことを簡単に出来る醜い奴なんだ。あの時も皆をどうやって捕まえようかとかきっと考えている最中だったんだ。あゆむは大佐の顔を思い出し、思いっきり地団駄を踏んだ。
「あゆむちゃん!この街を出よう!ここにいちゃいけない気がするんだ。」
唐突にドリィがあゆむの方を向いた。
「え?ドリィ?どうして急にそんなことを!みんなを放って私達だけ出て行けないよ。例え出るとしても今は絶対危ないって!」
ドリィの突拍子のない言葉にあゆむは強く言い返した。
「違うよ!放っておくんじゃないんだ。……あの魔女さんに会いに行くんだよ。」
ドリィが少し声を落とす。
「どうやって?」
あゆむはますます驚き、声を荒げた。
シーッ!ドリィが人差し指を口に当てた。
「だってドリィ!魔女って本当にいるのかわかんないんでしょう?」
「大丈夫!魔女さんはちゃんといるよ。僕こう見えてもあの森には詳しいんだ。お友達だっている。なんとかなる、絶対に魔女さんに会えるから。ね、あゆむちゃん、お願いだ!」
ドリィの強い意志にあゆむは戸惑った。だがここにいても何も出来ないことだけは明らかだった。あゆむも首を縦に振ったのである。
怪我をしている者を抱えていた反グループの皆が、それぞれトロッコに乗り込み、トンネルへと入って行く姿が見えた。使われているのは、あのもの凄い速さで走る中央のトロッコと、並びのトロッコだ。
ドリィとあゆむは、大急ぎで一番近くにあるトロッコの隅に隠れた。何故かこのトロッコだけ離れた場所にあった。こんな所にあったかな、あゆむは思った。でもちょうど良い、この方が見つかりにくいだろう。
こっそり皆がいる方を見るとまだ慌ただしく動いている。大丈夫、こっちを見ている者はいない。様子を見ながら腰を低くし、トロッコに乗り込む。体を全て隠しまた様子をうかがった。
向こうでは反グループのメンバーを次々と乗せたトロッコが、今にも走り出しそうだった。
「よし!あゆむちゃん。あのトロッコに合わせて動かそう。僕が合図したらそのボタンを押して。」
ドリィが3色のボタンを指差した。
「緑に赤、黄色のボタンまであるよ。ドリィ一体どれを押せばいい?」
「じゃあ…緑だ。いい?いくよ……今だ推して!」
あゆむがドリィの合図に合わせて緑のボタンを押した。
ガタガタガタガタガタガタ……
トロッコは今までのと違い、小さく小刻みに震え出した。そして音もなくゆっくり、ゆっくりと進み始める。
「ドリィ、なんか変だよこのトロッコ…ボタンが違ってたんじゃない?………ドリィ!?」
ドリィが即座にあゆむの口を抑えた。
目の前には道は無かった。2人を乗せたこのトロッコは真っ逆さまと言っても過言ではない、一気に滑って行ったのである!
落ちるっ落ちちゃうよ!お尻が浮いて落ちて転がって……ぎゃあぁぁぁぁぁ〜!
ストン!ゴロゴロゴロゴロ……あゆむの体は何回転しただろう。意識があっただけでも良かったといえよう。
「いったぁい!なんなのよあのトロッコ!見てもういない。」
さっきまで2人を乗せていたトロッコは音もなく姿を消していた。
「ちょっとドリィ、大丈夫?しっかりしてよね。」
あゆむはドリィの頬っぺたをパシパシ叩いた。頭と目が反対方向にぐるぐる回っていたからだ。ドリィったらアニメみたいなことをして!頭をブルブル振り起こしているドリィを見てあゆむは苦笑した。
下が柔らかい土だったから体は汚れてしまったが、その代わりかすり傷もなく済んだ。
「あゆむちゃん、見て!」
ようやく元に戻ったドリィが目の前を差した。あゆむは生唾を喉に通しながら頷いた。周りに立ち込めていた砂埃、土埃のもやが段々薄らいでいく。そして2人の前にゆっくりと姿を現したのは、大きな、そしてなんとも暗い、森だった。
「行こう!あゆむちゃん!」
ドリィが力強くあゆむの手を握った。
まだ下の方で埃のモヤがうごめいている。森の近くまで差しかかると、その巨大な黒い木々達は2人を今にも飲み込もうと待ち構えているみたいだった。あゆむはドリィの手を強く握り返した。
一歩一歩怖々とした足取りで2人は森へと入って行く。一歩一歩、また一歩。
ザワザワザワザワ……
突然風と共に大きな音を立て森が揺れた。あゆむは前にもこんな揺れを感じた時のことを思い出した。木々達が今も何かを発している様な、そんな感じの揺れだった。
「ドリィ、後ろ見て!さっきまでの場所が…もうないよ。」
そう、あのトンネルの入り口が森へと姿を変えていたのだ。
「大丈夫!あゆむちゃん。森は僕らを受け入れてくれたんだ。ちゃんと目の前で広がっている。進もう。」
ドリィがあゆむの動揺を遮る様に言った。
森が私達を受け入れた…って?ドリィには木々達の言葉がわかるの?何本も何本も果てしなくぎっしりと生えているこの木。なんだろう、木は私達を見てさも面白そうに笑っているみたいだ。気味が悪い!
寒気があゆむを襲った。どうにか落ち着こうとドリィを見ると、その目は真っ直ぐに前を見据えていた。そんなドリィの目はとても心強かった。大丈夫!ドリィと一緒だもん。怖がることなんてない。
こうして魔女に会う為に、2人はいつしか風がすっかりと止んだ、この森の奥へと進んで行ったのだった。
段々息苦しく感じてきた。何でだろう、あゆむの息遣いが荒くなる。ただ歩いているだけなのだが、仄暗いこの森の中はやけに暑く感じた。喉もカラカラに乾いており、あゆむの額からは汗が時折滴り落ちた。前髪がべったりと顔に張り付くのを感じながら、ただひたすら前を歩いて行った。
あゆむの手は確かにドリィと繋がっているのだが、時々一人でいる様な錯覚に陥り、その度にドリィの手の温もりを確かめた。
「あゆむちゃん大丈夫?少し休もうか?」
ドリィがあゆむの弾む息遣いを感じたのか、あゆむの顔を覗いている。それにあゆむは声にならない声を喉から絞り出して答えた。
「いい…。ドリィ、それよりも道は合ってるの?なんだかとても暑くて、それにもの凄く息苦しいよ。」
「うん、あゆむちゃん。それなんだけど……実はね…。」
ドリィがあゆむに耳打ちした。
「えーーー!!」瞬間、あゆむは発狂した。
「ちょっとドリィ、迷ったってどういうこと?この森には詳しいんじゃないの?」
「うんうん、迷ったって言っても、ほんのちょっとだから。本当にちょっとだけなんだ。」
ほんのちょっともへったくれもないわよ…。そんなこと早く言ってよね。もう駄目だ…私歩けない。へなへなとあゆむの体が下に落ちる。
「ドリィ、やっぱりタンマ。ちょっと休もう。」
「ごめんよ、あゆむちゃん。でも聞いて、一つわかったことがあるんだ。この森は姿を変えないということだよ。今、僕らがいる所の何処かにヒントがあると思うんだ。」
ドリィもなるべくあゆむのそばから離れないようにしゃがみ込んだ。
「でもそのヒントをこのまま探すのは難しい。だから、ヒントのヒントになることをお友達に聞かなくっちゃ。」
「じゃあドリィ、まずどうやってその友達に会うかを考えなくっちゃならないってこと?そんなに時間があるとは思わないし、ゆっくりもしてられないよ。」
あゆむの言葉にもちろんっとドリィが頷く。
「うん、わかっている。僕も早く魔女さんに会いたい。だから、僕なんとかしてお友達に会いに行って来るから、手を離さずに待っててくれるかい?」
ドリィがすぐ横の木を叩いた。
「え?ドリィ何処か行っちゃうの?どうするの?もしはぐれちゃったら。」
「大丈夫、絶対にはぐれたりなんかしないよ。だって僕この木の上に行って来るんだもん。それから風を見る。外の空気は正直だからちゃんと教えてくれるんだ。だからあゆむちゃん、絶対にこの木から手を離さないで。この木に手を当ててくれてることが、僕からの目印にもなるんだ。」
ドリィの言葉にあゆむの心臓はまるで太鼓みたいに大きく鳴り出した。こんな所で一人になるなんて嫌だ!でも、だだをこねている場合じゃないのはわかっている。とにかく必死に木につかまり、例え振り回されたとしても決して木から離れずに済むよう、両手に力を込めた。
そんなあゆむを見届けた後、ドリィはスルスルと木をつたって、上へと目指して行った。
ドリィなんだけど、ドリィじゃないみたいだ。あゆむは思った。まるで小さな黒い影だ。あゆむがどんなに目を凝らしても木のてっぺんが見えない。ドリィはちゃんと辿り着いたのだろうか?
キーンと耳鳴りがした。空気のうごめく感覚もない。あまりの恐怖に目を閉じると、何かがあゆむを押し潰そうと襲って来る様な、そんな気がして慌てて目を開けた。周りなんか見渡せない。そんなことをしたらつい気が緩んで手を離してしまいそうになる。今はこの木にしがみついていること、そのことに集中しよう。そしてあゆむは改めて両手に力をいれた。
その頃、ドリィがようやく上に辿り着いていた。無我夢中で木を登ったせいで、その姿は葉と枝のささくれで擦り切れ汚れていた。
月はおぼろげな姿を見せている。灰色の雲がこの森を被っており、風は無かった。
大丈夫!とにかく待つんだ。空気の匂いを感じるんだ。ドリィは深呼吸し、ゆっくりと瞼を閉じた。
とても静かだ。かすかな音さえない。だがドリィには何処からか、空気の切り裂きと共に、やって来るのがわかっていた。
来た!ドリィは目を開けた。
一瞬ドリィの髪がなびいた。
何今の音。わずかな音があゆむの耳をよぎった。確かに笛を吹く様な音が聞こえて来たのだ。
それは遠い、遥か上の方から…ドリィ?
ブオオオオオオオオオ〜!!
突然、強い激しい風が吹きつけた。あゆむはあまりの強さに手が木から離れそうになった。なんとか木に捕まる。駄目だ、風の衝撃で手が滑りそうだ。
ドリィ!ドリィ助けて!
駄目!私が手を離したら目印が無くなるじゃない。ドリィとはぐれちゃう。あゆむはもう我を忘れ木にしがみついた。
「あゆむちゃーん!」
ドリィ!?瞬間にしてあゆむは何かに抱えられ、その体は宙を舞った。あゆむの体を抱え上げた者、白くて、だが透き通っていて、とても柔らかい綿のような……その正体は風そのものだった。
「あゆむちゃん、大丈夫?ちゃんと捕まっててくれたから僕もすぐにわかったよ。ありがとう。遅くなってごめんよ。」
その風の塊はドリィとあゆむを優しく包み込んでいた。
「ドリィ、これは一体どういうこと?私達浮いてる!?」
あゆむはフワフワと透き通る風を通して、地面がかなり下にあるのを感じた。ドリィはいたずらな目をしてあゆむを見ている。
「まさか、ドリィあなたのお友達ってこの風なの?すごい!びっくりしたぁ!……風が生きて意思を持っているなんて…。」
「うん。僕あゆむちゃんと会う前ずっと森にいたんだ。ひとりぼっちじゃ寂しいから歌を歌って過ごしたのさ。そしたら出会えたんだ。それから何日も何日もお喋りをした。色んなことを話したよ。とっても仲良しになった。その後あゆむちゃんに会えたんだよ。僕、その時とっても嬉しかったんだ。」
ドリィは嬉しそうに笑った。
あゆむもその時のことを思い出した。ドリィと会う前突然風が吹いたんだっけ。木々達の揺れを見て、何かが来る様な気がしたんだ。でもそしたらドリィの歌声だった。私それに誘われる様に奥へと進んで行ったんだっけ。
「あゆむちゃん周りを見て!すごいよ!」
ドリィが身を乗り出した。
2人の周りではさっきまで全く動く気配すらなかった木々達が、その大きな体を右へ左へと揺らし暴れていたのだった。葉を揺らし枝を縦に振り回しながら、この強い風によって激しく揺れ続けた。
「あったぁ!」
突然ドリィが大声を出した。
あゆむも見るが見えない。目の前の木々の揺れが視界の邪魔をする。
「ねぇあそこだよ。あの木を見て!あの木の所に僕らを連れて行っておくれ。」
ドリィは風の中から真っ直ぐに指差した。
揺れを続けている幾本の木のそのまた奥。一本の木だけが微動だにせず、じっと立ちすくんでいた。まるでそこだけ風を通さないかの様に、その木は決して動かなかった。
風はドリィの声に応え、すぐさまクルクルと円を描きながらその木を目指し進んで行った。それに反応し、周りの木が風を進ませまいとブンブン枝を回し襲ってくる。それでも風は揺らぐことなくまっしぐらに進んだ。そして風は一本の目的の木に辿り着くと、ブオオオオっと一声上げた。
「うん、大丈夫さ!ちゃんと見つけたから。ありがとう。とっても助かったよ!」
ドリィには風の言葉がわかるのだろう、すぐに礼を言った。
やがて風はゆっくりと下がり始め2人が立つことの出来る位置まで降りた。そしてその体をドリィとあゆむの間から優しくはがし、弧を描きながら何処かへと去っていったのである。
ドリィは大きく手を振っている。意思を持つ風、きっとあの風はドリィを慕い、いつでも飛んで来るのだろう。
風が去った後の森は静寂を取り戻し、周りの木々達は元の動かぬ姿へと戻っていた。
あゆむは急いで木に両手を当てた。また見失いそうな気がしたからだ。
「あゆむちゃん、ここが魔女さんに会えるヒントだ。魔女さんは何処かできっと僕らを見ているはずなんだ。ここからはお願いするしかない……だからお願い!魔女さん。僕らは皆の力になりたいんだ!その為には魔女さんの力が必要なんだ!お願い道を開いて!」
ドリィは両手を木に当て必死に叫んだ。あゆむもすぐさま同じ様に祈った。
「お願いです。私達に会ってください!」
ギュっと目をつむり、両手を木に押し付けた。今までこんなにも強く願ったことなどなかっただろう。
しばらくは何も起こらなかった。ふと、あゆむの手に何かが触れた。いや、触れたというよりはあゆむの手が木にめり込んだのだ!
その時、ぐにゃりと曲がった一本の木が真っ二つに分かれ、そしてアーチ状の入り口を作った。
やがてその奥から新鮮な冷たい空気とともに、声が聞こえてきた。
—2人とも…さぁお入り。こっちに来るんだ— と。
一瞬風もないのに森がざわめいた。