【注意! これは短編詐欺です】 〜俺はきっと負け幼馴染〜 【繰り返します! これは短編詐欺です】
あけましておめでとうございます。
二〇二二年最初の投稿になります。
最近また短編詐欺が多くなり、御大方のみならず発展途上の作者様も手を染める例が見られます。
そこで逆にあからさまに醜悪な短編詐欺を書くことで、これから一流に登っていく方々には「こんな真似したくないな」と思っていただき、既に一流の方には「こんなことしているようなものか」と羞恥心を刺激したいと思い書きました。
「大仏殿を蟻がせせる」という、びくともしないことのたとえとして使われる言葉があるように、私などの行動が世を変えられるとは思っていませんが、「蟻の一穴」の言葉もありますので、せめて今年こそは短編がちゃんと短編であるといいなと祈っております。
と、言い訳したところで短編詐欺なのは事実です。事情をわかって読んでいただける方は歓迎しますが、そうでないことはお引き取りいただいても構いません。
「トゥレーヌ、久しぶりね」
「シャテル、会いたかったよ、どうぞ、座って」
待ち合わせのカフェに早めに来ていた俺、トゥレーヌは幼馴染にして最愛の婚約者のシャテルが来たのを見つけると、彼女のために椅子を引いて迎え入れた。
俺もシャテルも田舎貴族の出。俺は二男で、シャテルは長女だけど上に兄が二人いる。なのでどっちも家を継ぐ立場じゃない。
そんな立場の俺たちだが、二人の家が家族ぐるみで仲良しなので、子供の頃から一緒に遊んでいた。同い年であることもあって二人はすぐに仲良くなり、十歳の時には婚約した。
婚約は家同士の合意事項だが、俺たちは仲が良かったし、我ながらマセガキだが、その時にはもうシャテルのことが女の子として好きだったので俺は喜んだ。シャテルも喜んでくれていた……と思う……
好きな女の子に意地悪して嫌われるガキンチョとか反面教師に恵まれたこともあり、ちゃんと好きだって伝えたり、高価じゃないけど贈り物したり、手紙書いたりしたので、シャテルとの仲もどんどん仲良くなっていった。
ここまではどこにでもある普通の話。でも俺の婚約者は……
「手紙読んだよ、勇気の聖女に選ばれそうなんだってね」
「えぇ、三聖女の筆頭に選ばれるなんて名誉なことだけど、責任重大だわ」
……そう、俺の婚約者は聖女なのである。
ここ、コンプランパ王国はコンプランパ大陸全土を領土とする王国であり、三人の聖女を擁することで知られている。
三人の聖女、勇気の聖女、力の聖女、知恵の聖女がいて、序列は勇気が筆頭で知恵と力がその下で同格、という格付けである。
この格付けの意味は、いろいろあるらしく
・勇気とは蛮勇ではなく恐怖を知ること。
・勇気なき力も、勇気なき知恵も、悪しきものとなりうるが、力と知恵なき勇気は、いずれ必要な力と知恵を身につける。
・勇気の素晴らしさは人間の素晴らしさ。
・聖女の力の源である聖力は恐怖で乱れる。勇気こそ聖力の根幹。
という、この国の、というかこの大陸で王国建国以前から信仰されている宗教の主神ヌウアルピリの教えだということだ。個人的にはツッコミどころが色々あるが、そういうものだ、受け入れろ、と習った。
で、当代の三聖女の引退の時期が近付いているということで、新しい聖女候補を選ぼうと選定が行われたのが今から五年前、俺たちが十二歳の時のことだった。
選定の日、なんとなく俺はシャテルが選ばれるような気がしてた。シャテルから名状し難き不思議な力を感じることが増えてきていたからだ。これは、ひょっとして聖女の力、すなわち聖力と言われる力なんじゃないか? って予感があった。
その予感通り、シャテルは聖女に選ばれた。その時の俺の気持ちは単純ではなかった。
婚約者が婚約者に選ばれて誇らしい気持ち? 少しはあったかも。
聖女の配偶者になって恩恵がありそうと思った? 全く思わなかったね。
何故ならシャテルと引き裂かれるかもしれないという気持ちが一番強かったから。
聖女は死ぬまで現役ではない。結婚だって出産だってできる。もちろん自由恋愛で問題ない。では、何も心配することはないじゃないかって? そうだね、建前上は。
でも、聖女は王族よりも敬われる存在で国の中枢に携わる存在。その配偶者にも自ずと相応の地位が暗黙のうちに求められる。例えば王族だとか、爵位だとか、軍の階級だとかそんな感じの。平民や下級貴族の男が聖女の配偶者になった事例がないでもないが、茨の道らしく、いくつかの難易度の高いテストを受けさせられるらしい。
俺のシャテルへの想いは、そんなことに怯む程度のものでは無い。無いが、王族や高位貴族に奪われるかもしれない。力及ばず聖女の配偶者(聖配、と呼ばれている)の試練を乗り越えられないかもしれない。それが、「引き裂かれるかもしれない」と思った理由だ。
そこまでわかっている以上、何もしないわけにはいかない。そこで俺が選んだのは……
「トゥレーヌだってすごいじゃない、聞いているわよ、聖女の騎士クラスで辞めずに残っているのはトゥレーヌだけなんですってね」
「必死で食らい付いていたら、気がついたら俺一人になってただけだよ」
……俺が選んだのは、聖女の騎士になる道だ。
聖女の騎士とは、その名の通り聖女を守る騎士、これになれば、聖女の仕事にも付いていける。ずっとそばにいられる。そう思って選んだ。
だが、聖女の騎士は一代につき一人選ばれるかどうか、という狭き門どころじゃない狭き門である。実際、当代には聖女の騎士はいない。
だが俺に迷いはなかった。もともと騎士科に進むつもりだったので、騎士科の聖女の騎士コースを選んだ。
最初は生徒がたくさんいたよ、聖女の恩恵にあずかろうという者、聖女に憧れる者、希少な地位について立身出世を望む者、力を試したいという者、面白半分の者、などなど。
だけど師匠である先代の聖女の騎士――そろそろ三桁の年齢になるはずだけど、それを一切感じさせない、いろんな意味で怪物みたいな人――の指導は過酷・苛烈という言葉すら生温い、地獄への片道切符としか言いようがないものであった。
結果、俺以外の全員が脱落し、俺一人が残ったというわけだ。
「トゥレーヌと一年間会えなくなるのね。寂しいわ」
「俺もだよ。シャテル成分が足りなくて禁断症状になりそうだ」
来年の聖女任命式の前に、実習と顔出しとして、一年間各地を聖女活動をするのだ。
そして俺も聖女の騎士としての実務訓練で各地を巡ることになる。だから、任命式前に会えるのは今日が最後なのだ。
「私も。帰ってきたらトゥレーヌの隣に他の女が立っていたら泣いちゃう」
「どう考えてそれは俺のセリフだよ。シャテルは日に日に美人さに磨きがかかっているし、なにより……」
「なにより?」
「ムルシアだっけ? イケメンと評判の護衛の神官、そんな男がシャテルのそばにずっといるなんて」
「あぁ、ムルシアね。大丈夫よ、公務の時に側にいるだけだから。身の回りの世話は侍女のにやってもらっているから」
ほんとは自分で全部できるんだけど、世話されるのも聖女の役目とか言われて、と苦笑混じりに話すシャテル。
でも、そのムルシアという男、ただのイケメン神官ではない。……イケメン神官ってだけですでに「ただの」ってつけるのはおかしい気がするが…… この国の第二王子なのである。……実際には「第二王子」という役職についているわけではないが、とにかく国王の次男なのである。
母親は正室ではなく、後宮に納められた元子爵令嬢、その名をソアラという。彼女は嫡男ではないとは言え男子を産んだ功績で「オンブルソル侯爵夫人」の称号を、国王より賜っており、ソアラ・オンブルソル伯爵夫人となっている。
王子がなんで神官をやっているかというと、わずかながら聖力を持っているので教会に属して信仰面から王国を支えるため、と建前上はなっている。
しかし、それを信じるものはいない。聖力を持っていることは本当のようだが、聖女の代替わりのタイミングを奇貨とし、筆頭聖女の聖配となり、その上で還俗して政治的影響力を求めることを狙っていることは公然の秘密である。
シャテルの護衛に狙いすましたかのように着いたのがその証左である。オンブルソル侯爵夫人の圧力も多分にかかったと言われている。
だからすごく心配で、シャテルには何度も注意喚起しているが、シャテルはムルシアに興味がないらしく聞き流されている。本当に心配だ。でも、これ以上言うと嫉妬していると思われる……実際嫉妬しているのだが……ので、ほどほどにしておく。
ともかく、今日という日を楽しもうと、二人のデートを楽しみ、しばしの別れを惜しんだ。……しばし、になればいいんだけど……永遠の別れになったりしないよな……俺、いま何かのフラグ立てたか? ……
それから師匠と共に各地を回った。戦闘だけかと思って……は、いなかった。
聖女を支える騎士として腕っ節だけではだめと、貴族の情報戦の戦い方や領地経営、国内各地のみならず諸外国の文化に至るまで叩き込まれていたからだ。
あるときは傾いた辺境貴族家の復興支援、ある時は地域伝統の祭りを切り盛り、そして魔獣の討伐など多彩な活動内容だった。
そしてその合間に、報道されている聖女の動向を確認していた。
「勇気の聖女とお付きの神官、お似合いのカップル」
「勇気の聖女、お付きの神官と真剣交際!?」
「勇気の聖女の聖配候補筆頭はお付きの神官?」
「勇気の聖女、聖女任命式にてお付きの神官と結婚発表か?」
続々と伝わってくる報道。わかっている、おそらくこれはオンブルソル侯爵夫人やムルシアが報道機関に働きかけているのだろう。長年貴族社会で生きてきた師匠の受け売りだが、たまに会うクラスメイトも同じことを言っている。
木端貴族とはいえ、俺とシャテルは婚約者として王国に届け出を出している。それは当然周知の事実だが、そのことを闇に葬るべく外堀を埋めにきているのだろう。
正直に言って動揺はある、あるが俺は修行に邁進した。
そして遂に一年が経った。
俺は師匠に呼ばれた。
「トゥレーヌ、今までよく頑張ったな」
!? 俺は驚愕した。あの師匠が おれをほめるなんて。
「ふふっ、何を驚く。お前は本当によく頑張った。全員落第させてやろうと思った儂のしごきにお前だけが食らい付いてきた。卒業を認める。お前は次の、聖女の騎士だ」
師匠が俺に手を伸ばす。
「お前が何のためにこの道を選んだのかはよくわかっている。だからお前には貴族の戦い方も社交会の生き方も教えたつもりだ。このあと、お前が何を得ても、または何を失ったとしても、これだけは忘れるな。お前は儂の自慢の弟子だ」
「……はい、師匠……」
この日、師匠と飲んだ酒の味を俺は生涯忘れることはなかった。
そして遂に聖女お披露目、そして聖女の騎士のお披露目の日を迎える。
王城へ向かう俺を待ち構える集団がいた。俺のクラスメイトたちだ。
彼らともいろいろあった。初めは田舎貴族のくせに聖女の婚約者ということで突っかかってくるやつもいた。だが、共に学ぶ中、今ではかけがえのない絆で結ばれた仲間たちだ。
「ありがとう、きてくれたんだな、みんな」
「僕たちのクラスの首席の晴れ舞台だ、もちろんくるさ」
俺以外のみんなはもう、聖女の騎士科ではないが、騎士科として一緒に講義を受けることも多かった。俺たちは十分にクラスメイトと言える。
「極東の皇国には、同じ調理器具で調理したものを食べた者は仲間だ、という趣旨の諺がある。トゥレーヌ、私たちはずっと仲間だ」
「ならば僕もトゥレーヌに言葉を贈るよ。太陽の沈まない国と呼ばれた海洋国家にこんな言葉がある。愛してその人を得るのは一番いいが、愛してその人を失うのはその次にいい、と。君が誰のために今まで頑張ってきたか、みんな知っている。そして、今の彼女の状況も。悲しい結末を迎えるかもしれない。でも今日何があっても君の未来に陰りなどない。そのことを忘れないで」
「ありがとう。みんな」
俺の語彙力は感激で死滅したようだ。ありがとう、みんな、しか言えなくなった。
そして会場入りする俺。手続き関連やドレスコード対応などは師匠が全部根回しをしてくれた。礼儀作法も必修科目であり、そこは一切抜かりは無い。
だが、開会前に一目シャテルに逢おうとした俺は、その足を止めた。シャテルとムルシアの抱き合う姿を見てしまったからである。俺は、今日、シャテルを奪われるのだろうか。そんな思いが頭を巡り、式典の高揚感は吹き飛んでしまった。
話は変わるが、今日の会場の警備担当はアーブルロンド伯爵である。いろいろとよくない噂に絶えない人物だが、そのような人物がこの場の警備担当についたことは、何か意味があるのだろうな、と俺は心の痛みを無理矢理押さえて警戒を強くした。
お披露目会が始まった。まずは三聖女の登壇である。一年振りに直に目にするシャテルは一層美しさを増していた。そしてその側には不自然なほどべったりとムルシアが侍っている。不快感で胸が苦しくなった。
と、その時、アーブルロンド伯爵が突然叫びだす。
「聖女に相応しいのは我が娘! この女どもは偽聖女だ! 殺せ!」
警備兵が突如弓矢を構えてシャテルたち聖女を狙う。そして弓に番られた矢が放たれた。その次の瞬間……
キィィィン
俺はシャテルの、聖女たちの前に立ち塞がり矢を叩き落とした。近くの矢は白い翼で払い、遠くの矢は光の翼で撃ち落とした。
「……白い翼と光の翼を持った騎士…… だと? ……」
これぞ聖女の騎士の証。聖力を用いて攻防一体の翼を駆使する聖女の騎士の戦闘形態である。
警備兵、いや、もはや賊どもと呼んで差し支えないか、とにかく兵たちを光の翼で無力化した後、俺はアーブルロンドを拘束する。(もう敬称は不要だろう)
「何をする下郎が! 儂はソーン、ソーン・ウアーブルロンド伯爵なるぞ! 離せ下郎! 我が伯爵家、そしてその繋がりのある闇の勢力総出で貴様を葬ってくれる!」
闇の勢力と繋がりがある、とかそんな大声で言っていいんだっけ? 知らんけど。
「聖女を護ることにおいてのみ、俺は世界最強の騎士だ、聖女を害そうとするなら貴様らと貴様らの一族郎党、そして闇の勢力とやらも含めて全ての首をこの光の剣が焼き切ると思え」
俺の迫力に気圧されたソーン・アーブルロンドは無様に失禁する。あとは駆けつけてきた本当の警備兵に任せればいいだろう。ここまで含めて王国シナリオ通りの茶番なのかな、本当の不測の事態だったのかな、そんなことはどうでもいい。
俺の一番の関心事は、お互いを庇い合うように抱き合うシャテルとムルシアの姿。そしてムルシアに向けて美しい笑顔で微笑むシャテルであった。
国王が俺に向けて声をかける。
「図らずも良い紹介になった。聖女の騎士、トゥレーヌ。ここへ」
こうして俺は念願の聖女の騎士になった。……なったのだが……
お披露目の後は宴会だが、始まるまでの間、あてがわれた控室に来客があった。
シャテルかと思ったらムルシアだった。俺は臣下の礼をとって迎えた。
「一介の神官の私にそのような礼は不要だよ」
俺の被害妄想かもしれないが、わかりきった物言いがムカつく。
「第二王子であらせられるムルシア殿下に対する礼としては適切なものと存じます」
答える俺。第二王子、という役職には正式にはついていないことをわかってて言ってやる。
「ふっ、まぁ、いい、君には私のシャテルが世話になったみたいだから一言礼を言いにきたのだよ、それでは」
誰がお前のシャテルだ、そう思いながらも膝を屈する俺。強い敗北の感覚が俺を包む。
ムルシア退出後、しばらくして俺は再びシャテルに会いに歩を進めた。そしてまたしても見てしまった。キスの直前、または直後のような距離で唇を近づけるシャテルとムルシアを。
俺はすぐさま踵を返した。
……認めたくないものだな、自分自身が負け幼馴染だという事実を……
パーティが始まった。乾杯、そしてファーストダンス、あとは踊ったり食べたり飲んだりという式次第だ。
俺は本当なら婚約者としてシャテルにファーストダンスを申し込み二度三度と踊り対外に聖配として存在感を示す予定だった。
だが、今では中心から遠く離れたところで、
もきゅもきゅと美味しいご飯を食べている。シャテルとムルシアのダンスなんて見たくないからだ。
鶏肉とココナッツフレークを混ぜ合わせたレモンを絞った料理に、お祝い料理に付き物のアチョーテの実で染めた赤い米を添えた料理を頬張る。お祝いの気分じゃないが、お祝い料理を食べると少しは気が晴れる。お祝いといえば泡だな、地元産のスパークリングワインも飲もう。
「シャテル、この泡、美味しいよ……あ、」
俺の隣にはシャテルはいないんだ。
白身魚にココナッツフレークを衣にし、ココナッツオイルで揚げた魚のフライがある。これ好きなんんだよな。王国の離島で作られる酸味の強いワインでも合わせるか。
「シャテル、この衣サクサクだね……あ……」
だから俺の隣にはシャテルは……
お、ムームーもある。熱く焼いた石に葉っぱで包んだ肉や芋を乗せて地中で蒸し焼きにする、これもお祝い料理だ。レウェナ・パラオアもある。じゃがいもを発酵種にしたパンだ。一緒に食べよう。内陸部で作られた濃い赤ワインと相性抜群なんだよな。
「シャテル、この組み合わせ前も食べたよね……ぁ……」
だから俺の隣には…………
デザートにパパイヤの蒸し焼きを食べて完璧。ふー、満足満足。
そして俺は一人バルコニーで涙を流す。シャテルと一緒にいたかった。シャテルと一緒にこの場にいたかった。これからもシャテルと一緒にいたかった。
……そこに……
「トゥレーヌ、こんなところで何をしているの!?」
シャテルが現れた。
「!?」
「トゥレーヌ、どうしたの? 泣いているの?
俺は涙を流したまま、シャテルを抱きしめた。そしてシャテルへの愛を語った。捨てないでほしいと縋った。
今日見たムルシアとの逢瀬のことも話した。その上で最後だからと無様に縋った。
でもその答えは無常だった。
「ごめ……、ちがうの……」
よくある婚約破棄小説とかで捨てる方の女性がよく言う言葉、らしい。
だから俺は言った。自分が不幸になってもシャテルが幸せになってほしいと思うくらいにシャテルのことが好きだから自分は身を引く、と。
振った男に新恋人の中を見せつけたければ聖女の騎士は続けるし、姿を見たくないなら傭兵にでもなるもう二度と姿を見せない、と。
シャテルは俯いて震えている。あ、自分で婚約破棄がしたかったのかな?
自分の心を繋ぎ止めるのを失敗した幼馴染に「幼馴染ざまぁ」をしたかったのかな?
だったらごめん、やり直していいよと語る俺。
シャテルは俯いて震えて…… そして鋭い眼差しで俺を見据えた後、確かにこう言った。
「歯を食いしばりなさい!」
そして軸足を踏み込み、その力を腰に伝え、上半身に伝えて、スナップを効かせて平手が煌めく。
「聖女ビンタ(レベル三)!」
続いてハイヒールの尖ったつま先が俺の脛を狙い撃つ。
「聖女の泣きどころキック(レベル一)!」
人体の急所の一つを撃ち抜かれ苦痛に屈んだ俺の頭を抱えて胸目掛けて膝蹴りが放たれる。腕の引く力と合わさった見事な一撃だ。
「聖女ティーカウ(レベル二)!」
頭部が下がり、後頭部を無防備に晒す俺の頭上から高々と挙げられたシャテルの踵が振り下ろされる。
「聖女踵おとし(レベル四)!」
そして蹲る俺の頭の頭頂部を自分の肩に押さえた状態で、自分の肩で俺を逆立ちさせるように俺の両足を掴んで開いて持ち上げ、高く飛びシャテルのお尻から床(素材は多分大理石だと思う)に落下する。落下の衝撃で俺の股と頭はダメージを負うが、シャテルのお尻も痛くないのか?
「聖女バスター(レベル五)!」
衝撃で地に伏す俺の両足首を各々の手で掴んだシャテルは俺の足首を掴んだまま高く飛び、俺の腕を足で踏んだ状態で俺の体を床に叩きつけた。
「聖女ドライバー(レベル六)!」
倒れる俺を頭が下、足が上になるようにし、下から(すなわち頭側)シャテルの頭突きが俺を宙に舞わせる。
「聖女リベンジャー(レベル七)!」
高く舞った俺の体に、自身も跳躍して追いついたシャテルは片足で俺の首を、もう片足で俺の片足を、そして左右の腕はそれぞれ俺の両腕を、一気に絞り上げる。
「聖女スパーク天(レベル十)!」
そのまま落下する二人だが、シャテルは俺と背中合わせの姿勢で手足を固定し、俺の頭と体を地面に叩きつけるように落下する。
「聖女スパーク地(レベル限界突破)!」
俺の体を離し、間合いを取るシャテル。どうやら終わりのようだ。何だったんだ今の攻撃は、婚約破棄のみならず俺を抹殺したいということなのか。そもそもシャテルの攻撃力は一体なんだ。聖女の騎士じゃなきゃ死んでいてもおかしくないぞ。そう思いながらも、とりあえず立ち上がる。
「立ったわね、それで…………、わ……いは……ふさ……わ……」
ここでシャテルが何と言ったのか、そして俺とシャテルの関係がどうなったのか、それはまた、別の話。
定番後書き:最後まで読んでいただきありがとうございました。
「面白かった」
「続きが気になる」
と思って頂けたなら応援いただけると嬉しいです。
皆様の応援の声が沢山あれば連載するかも?
本音後書き:何ておぞましいのでしょうか。
評価されたら連載する、とか、書いてて我ながら吐き気がします。
別の話じゃねぇよ、いまここで書け! って思います。
そして参考にしようと思ってた短編詐欺作家の御大が連載にならなかった短編全部消していたので参考にできなかった。。。
連載になると「皆様の評価が嬉しかったので連載しました」にかわるんですよね、その変わる前、とっておけばよかった。というか「元々連載する気だが、評価が低いから連載しなかった」が正しいのであって「評価が高いから連載した」ではないのですよね。
せめて今後タイトルや前書きに短編詐欺ですと書く……間違えた、連載候補の短編ですと書くくらいは広まってくれると嬉しいです。
さて、ここまで短編詐欺作家を揶揄してきましたが「短編詐欺作家」という共同体が存在するわけではないので、名誉毀損には当たらないそうです。ですが、もし短編作家たちが集まって「正義派作家軍」とか、銀河で英雄なお話の金髪の孺子から「賊軍」とか呼ばれそうな軍を作ったらどうなるかわかりませんが。
ここまで書いてきましたが、もちろん私もノーリスクでこの文を書けるとは、投稿できるとは思っていません。
(筋肉の、超えた人のタッグトーナメントの牛さんと蒙古の人チームと主人公たちの会話を剽窃して)
「短編詐欺作家諸兄たちを批判するわけですから私もそれなりの代償を払わないといけません」
「どんな代償を払ってくれるのかね?」
「もし本作が多数の応援の声を得てしまったら、ちゃんと短編詐欺としてのけじめとして連載を書き、さらに短編詐欺の大多数とは異なりエタらせず完結させると誓う!」
仲間たち「げぇぇ!!!???」
諸兄たち「お前は……それほどまでに俺たちのことを……」なんて言うわけありませんよね……
……それはさておき……
具体的には、更新頻度は毎週。文字数は……十万文字と言いたいところですが、ここはコミットしないとさせていただきます。
というわけで、こんな短編詐欺に評価がつくかどうかは知りませんが、皆様、よろしくお願いします。