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相方はデストロイヤー!?(後編)

「おいおい。こりゃひでぇな」


 俺は、村を見渡しながら言った。

 村のあちこちから火の手が上がり、村人たちはパニックになって逃げ惑っている。

 俺たちはその中から1人の中年の男を捕まえて、話を聞くことにした。


「ねぇ? なにがあったの?」

「ま、魔族がこの村を襲撃しに来たんだ! アンタら旅のものか? 早く逃げた方がいいぞ! この村はもう終わりだ!」


 そう言って、男は村の外の方へ走り去っていった。


「魔族か......おい、どうするよ」

「放っておくわけにもいかないわね。とりあえず、村の奥へ行ってみましょう。村人たちが逃げる方向の反対へ行けば、村を襲っている魔族がいるはず!」

「よしきた!」


 俺たちは、村の中央へ向かって駆け出した。




「カズヤ! あれ!」


 突然、アイシャが立ち止まり、斜め上を指差す。

 その先には、燃え上がる様な赤い肌に頭に2本の角を携えた、昔話に出てくる赤鬼の様な男と、黒色と碧色の入り混じった肌を持つ、1本角の細身の男がいた。

 2人とも、教会で戦った魔族たちと同じように背中から翼が生え、宙に浮いている。村を襲っている魔族というのはおそらくアイツらだろう。

 ほどなくして、向こうもこちらに気づいた。


「お前たち、村の連中ではないな。何者だ?」


 先に口を開いたのは、2本角の方の魔族だった。


「人に名を尋ねる時は、まず、自分から名乗るのが礼儀ってもんだぜ」


 俺がそう返すと、2本角の魔族は、顔に微笑を浮かべ、


「そうか。そうだな。ならば、教えてやろう。俺は、大魔王スパーダ様の直属の部下である魔王軍四天王の次に偉い暗黒八魔将のイグニート様の腹心である炎魔人グラム様の率いる魔炎親衛隊の五番隊所属の隊員オズボーンだ!」

「そして、俺はオズボーンの相棒の同級生の先輩の妻のいとこの不倫相手はとこの養子の知り合いのライボルトだ!」


 要するに2人ともただの三下じゃねぇか......つーか長ったらしく関係性を喋った割りに、完全に他人だし......

 俺は、肩を落とし、半目で2人の魔族を見る。


「そんなことより、アンタたち。こんな小さな村を襲って、一体どうするつもりなの?」


 話の軌道修正をする様にアイシャが尋ねた。すると、1本角の魔族が答える。


「知れたこと......この村は魔王軍の駐屯基地の1つにさせてもらう。村の住人は......そうだな。死ぬまで俺たちの奴隷として働いてもらおうか」

「そう。じゃあ遠慮なくぶちのめしていいわけね。カズヤ。アンタはあの赤い2本角の魔族の相手をして。私はあの1本角を片付ける!」

「了解!」


 俺は背中に背負っている自分の身の丈ほどもある聖剣、アーガストを引き抜き、構える。


「人間ごときが俺たちを倒すだと? やれるものならやってみろ! フレアパニッシャー!」


 2本角の魔族は、複数の赤い魔法陣を自らの正面に出現させると、魔法陣からいくつもの炎弾を発射してきた。

 普通の人間ならひとたまりもないが、今の俺にとっては大した攻撃ではない。

 俺はアーガストで、飛んでくる炎弾を打ち落としつつ、2本角の魔族の方へ走り寄る。

 そして、アーガストの刃を返し、跳躍して、宙にいる魔族の懐へと入った。


「なにぃ!?」


 赤い魔族の目が見開かれる。


「オラァアアアアア!」


 俺は、そのまま聖剣を勢いよく横に薙ぎ払った。

 刃のついていない聖剣の背が、2本角の魔族のどてっぱらにめり込む。


「ゴボハァッ!」


 2本角の魔族は、砲弾の様に勢いよく、飛んでいき、家を3つほど突き破ったところでようやくその動きを止めた。

 俺は華麗に着地を決め、


「安心せい。峰打ちじゃ」

「み、峰打ちでも.......それだけの質量のもので思い切りぶん殴られたら余裕で死ね.......ガクッ」


 2本角の魔族はそのまま完全に気を失った。

 再起不能にはなったかもしれないが、まぁ死んじゃいないだろう。


「よし、こっちは片付いたな」


 俺はアイシャの方へ目を向ける。


「ぎゃぁあああああああああああああああああ!!」 


 1本角の魔族はアイシャの特大火球を食らって、宙を舞い、ゴロゴロと地面を転がっていた。元々黒い肌はさらに黒く焦げつき、体の節々からはブスブスと煙が立っている。

 どうやら、あっちも終わったようだな。

 俺はアーガストを背中に戻そうとする。すると、


「フ......フフフ......」


 突然、1本角の魔族がうつぶせのまま笑い始めた。

 なんだ? 気でも触れたか?


「なにがおかしいの? 言っとくけど、今からアンタたちには魔族の生き残りが一体なにを企んでいるのか洗いざらい吐いてもらうからね。拷問でもなんでもしてやるから覚悟しなさい」

「フフ......無駄だ。所詮俺たちは三下、上からの指示に従っているだけで、計画についてはなにも知らされてはいない」


 オイオイ、とうとう自分で三下って言っちゃたよコイツ。

 それにしてもコイツらも何も知らないとは。魔族の生き残りを率いている奴はずいぶんと秘密主義者らしいな。


「だが、その三下の俺たちが、いくら小さいとはいえ、たった2人で村を攻め落とそうとすると思うか? 当然、増援は呼んである」

「なに!?」


 上空からなにかの気配を感じ、俺たちが上を向くと、そこには、空を埋め尽くさんとする魔族の軍勢がいた。


「マジかよ! 50体近くいるぞ!?」


 俺は、思わず叫ぶ。

 とはいえ、俺たちなら、倒せないこともないかもしれない。だが、まだ村の外に逃げていない村人もいるはずだ。

 この人数相手となると戦闘の規模が大きくなり、村人を巻き込んでしまうかもしれない。それに奴らが村人を捕まえ、人質に取るという可能性もある。

 流石に村人を守りながら戦うとなるとキツイぞ。

 俺は奥歯を噛みしめる。

 1本角の魔族は、俺たちを指差し、


「フハハハハハ! お前達はもう終わりだ! 今更謝っても遅いぞ! 我ら魔族に歯向かった罪! その身をもって思いしオブァッ......!」


 言い終わる前に、1本角の魔族はアイシャの火球を食らって気絶した。


「フン。いくら数は多くてもどうせ全員アンタらと大差ない実力でしょ。だったら......みんなまとめて1度にやっちゃえばいいのよ」


 アイシャは、不敵な笑みを浮かべ、両手を胸の辺りでかざし、大きな紅球を作り出す。そして、


「フレアシャワー!」


 その紅球を空高くに打ち上げた。

 空にいた魔族の軍勢は散り散りになり、紅球をかわす。

 結局、紅球は誰に当たることもなくそのまま空へ吸い込まれていった。


「なんだよ。ドヤ顔でやった割りに外してんじゃねぇか」


 俺が文句をつけると、アイシャはふふっと笑い、


「まぁ、見てなさい」


 と言う。

 ドォオン! 

 その時、空から爆発音が聞こえた。

 なんだ? と俺は空を見上げる。

 俺は一瞬、それを花火と見間違えた。

 花火の様に 1点を中心とし、そこから火花が円状に飛散していって......

 ......いや、よく見ると火花の1つ1つがかなりでかい!

 火花(というかもはや巨大な火の玉だが)は、流星の様なスピードで空にいる魔族の軍勢へと襲い掛かる。

 当然、魔族達も避けようとはするものの火の玉は1つじゃない。1つ避けたところで、今度は別の火の玉が襲い掛かってくる。

 火の玉は魔族に当たった瞬間爆発を巻き起こし、近くの魔族も巻き込んで、さらに被害を拡大させていった。


「ぎゃぁああああああああああああ!!」

「熱いぃいいいいいいい!!」

「翼がぁああああああああああああああ!!」


 爆発に巻き込まれ、翼を焼かれた魔族は次々に地面へと墜落していく。

 なんというか......焚火に吸い寄せられて、焼かれる羽虫を思い起こさせる光景だ。

 その様子を下から見上げていると、火の玉の内の1つが俺に向かって落下してくるのが見えた。


「うわっとぉ!?」


 俺は、即座に飛びのき、それをかわす。

 だが、完全にはかわし切れず、爆風を浴びて俺は、そのまま吹き飛ばされた。


「どわぁあ!?」


 飛ばされながら、周りを見てみると、魔族に当たらなかった火の玉はそのまま村へと降り注ぎ、家を焼き、爆発し、地面にクレータを作り上げていた。 

  

「み、みんなまとめてって! マジで敵も味方も見境なしかぁああああああああああああああああああああ!!」


 俺はアイシャに向かって叫ぶ。

 つーか結局、村巻き込みまくってるし!


「アハハハハハハハハ! やっぱり、魔術は派手でないとねぇ!」


 燃え上がる村をバックに高笑いするアイシャはこの世界の魔族より100倍魔族らしかった。


「あ、悪魔だ......!」


 逆さまの状態で背中から家屋にぶつかり、動きを止めた俺は、両足を壁にもたれさせた、壁倒立を失敗した時の様な態勢で、呟いた。

 こうして、村を襲撃しに来た魔族の軍勢は、その村と共に壊滅した。

 ちなみに幸運にも村人に怪我を負ったものはいなかったらしい、

 なお、破壊した村の修繕費用として、この後俺たちは4億シル(シルはこの世界の通貨の単位らしい)の借金を背負うことになるのだが、それはまた別の話だ。



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