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39話 皆で喫茶店

 放課後になり、久しぶりに皆で街中まで遊びに行こうと陽太が提案をする。

どうも陽太は芽衣と2人で家に帰ることが苦手になったようだ。


 湊も聖香と少しでも長く一緒にいたい。

湊が反対するはずもない。


 愛理沙と涼は、瞳お姉さんにお礼を言っていなかったので、この機会に先日の件のお礼と感謝を言いたかった。


 駅前のロータリー広場に自転車を置いて、6人で街中を楽しそうに歩いて行く。途中にあったゲームセンターで、2人組のカップルに分かれてプリクラを撮った。

愛理沙と涼にとっては初めてのプリクラだ。


 愛理沙は恥ずかしくて俯いてしまい、涼は照れて顔をカメラから外してしまっている。そのプリクラを見た湊、陽太、聖香、芽衣の4人は大笑いをして、愛理沙と涼にもう一度プリクラに挑戦するように、体を押してくる。


 しかし、涼も愛理沙もプリクラに慣れていない。もう一度試しても同じ結果になるだろう。そこで女子陣だけでプリクラを撮り、まずは愛理沙をプリクラに慣れさせる。美少女3人のプリクラはとてもきれいで可愛く、男子陣に好評だった。



「俺達は男子3人でプリクラを撮るのか。あまり見たくねーな」



 陽太が湊と涼の気持ちを代弁する。

誰も好き好んで、男子3人でプリクラを撮りたいとは思わない。

しかし、プリクラの機械の中へ入った陽太はノリノリで制服を脱いで、自慢の筋肉をムキムキさせてプリクラのカメラの中央に陽太が映る。湊と涼は陽太の邪魔をしないように端に寄ってプリクラを撮る。


 そのプリクラは芽衣に大好評で、芽衣は嬉しそうに鞄の中へしまっていた。


 なんとか愛理沙と涼もプリクラを撮り終える。

2人共、緊張しているのが、2人で抱き合っているプリクラが完成する。


 2人の初めてのプリクラの記念だ。

 愛理沙は上機嫌でできあがったプリクラを眺めている。


 ゲームセンターで一通り遊んでから、表に出ると外はすっかり夕暮れ時だった。



「今日は皆に紹介したい店があるんだ。俺と愛理沙がお世話になっている喫茶店なんだけど、なかなか料理も美味しいんだ。皆も一緒にいかないか?」


「涼が誘うなんて珍しいな。それなら俺達も付き合うぜ」



 陽太は芽衣の肩に手を置いてニッと笑顔で応えてくれる。芽衣も嬉しそうに笑っている。



「私も家に帰って夕飯を作るのも面倒だし、愛理沙ちゃん達と一緒に食べていく」


「聖香が行くんだから、俺も一緒にいくに決まっている」



 芽衣と湊からも了承が取れた。


 駅前のターミナル広場の駐輪場から自転車を取り出して6人でシアタービルの近くまで走っていく。

瞳お姉さんの喫茶店は、まだOPENの看板がかかっていた。

瞳お姉さんの気分次第で喫茶店がCLOSEになる時もあるから、OPENになっていることに安堵する。


 自転車を喫茶店も前に置いて、涼と愛理沙が玄関のドアを開けて中へ入る。



「あら? 涼君と愛理沙ちゃん。2人で来たってことは仲直りできたのね……良かったわ」



 カウンターから出て来た瞳お姉さんは涼と愛理沙の2人の顔を見ると満面の笑みを浮かべる。



「今日はお礼を言いに来たんですが……友達も一緒に連れてきました。夕食って何かできますか?」


「ありがとう……今日はお客様が少なくて、定食が余って困っていたのよ。何でも作っちゃうから、友達全員入って来て。店の中は広く使っていいからね。」



 瞳お姉さんの喫茶店はカウンター席の他に4人がけのテーブルが3つだけある。聖香と湊、陽太と芽衣、愛理沙と涼というふうに4人がけテーブルを2人で利用する。


 瞳お姉さんは嬉しそうに玄関へ行くとOPENのカードをCLOSEに変える。



「これで他のお客様は入ってこないわ。皆で楽しく騒いで、沢山食べて帰ってね」



 本当にこんないい加減な経営の仕方で、この喫茶店は儲かっているのだろうか? 他人事ながら、少しの不安と不思議を感じてしまう。



「俺はこのメニューに書いている焼肉定食の特大大盛でお願いします」



 そんな特大大盛なんてメニューはどこにも書いていない。しかし陽太は嬉しそうに顔を輝かせてメニューを頼む。



「いいわよ。筋肉君は大食漢なんだね。沢山食べないと筋肉できないもんね。お姉さんに任せなさい」


「おおー、このお姉さん、俺のことをわかってくれてるよ。顔も美人だし、スタイルもいいし、お姉さんは俺好みっす」


「ありがとう。でも高校生はお姉さんの好みの年齢より下だから……ゴメンね」



 確かに瞳お姉さんは童顔の美女だ……しかし芽衣の前でそんなことを言っていいのか。涼は嫌な予感がして、陽太達の座席を見ると、芽衣は既に冥界のオーラ―を放っている。



「可愛い彼女さんがいるのに、お姉さんに冗談なんていったらダメよ。彼女さんもいっぱい食べたら、スタイルが良くなるわよ。彼女さん……少し食べる量がすくなそうだから、気を付けてあげてね」


「そうだったのか……芽衣がスレンダーだったのは、芽衣があまり食べないからなのか。これからは俺と一緒の量を食べよう。俺は芽衣がスタイルが良くなるなら協力するぞ」



 その言葉を聞いて、芽衣の冥界のオーラ―が霧散していく。



「私が食べ切れなかったら、陽太が食べてね。私……これからは頑張って食べる」



 芽衣は食べる前から、気合を入れる。芽衣が頼んだのはチキンカツ定食だ。



「お姉さん、先日は愛理沙を助けてくれて、ありがとうございます。この間のお姉さん、すごく恰好よかったです。すごく憧れちゃいました。私は聖香です。これからは聖香と呼んでください」


「俺達、高校生では問題を解決できなかったかもしれませんでした。2人のことをありがとうございます」



 先日、聖香の家での一件で、すっかり聖香は瞳お姉さんのファンになってしまっていたようだ。


 湊は聖香から一応経緯を聞いているようで、席から立ち上がって瞳お姉さんに礼をする。湊も瞳お姉さんのことを気に入ったようだ。



「2人とは会ったのは最近だけど、昔からの知り合いなのよ。だから少しだけサービスしただけ。気にしないで」



 聖香と湊の2人は唐揚げ定食を頼む。涼と愛理沙は酢豚定食と野菜炒め定食を頼む。



「瞳お姉さんのおかげで、ゆっくりと涼と話をすることもできました。私の中でも決心することができました。本当にありがとうございます。私……涼に付いていきます……離れません」


「俺も愛理沙を離しません……どんなことがあっても傍にいます……本当にありがとうございます」



 愛理沙と涼が瞳お姉さんにそういうと、湊、陽太、芽衣、聖香の4人から拍手が沸き起こる。



「あなた達2人だったら、絶対に大丈夫……何でも2人で乗り越えられるわ。もし、相談したい時はいつでも気軽に来てね……それじゃあ、私は料理の支度をしてくるから、皆は楽しくしていてね」



 瞳お姉さんは定食の料理を準備するためにカウンターの奥にあるキッチンへ進む。



「こんな居心地のいい喫茶店があるとはな……これから俺もここの常連になる」



 陽太が満面の笑みを浮かべて、満足そうに腕の筋肉を動かしている。



「目当ては瞳お姉さんでしょう……絶対に1人で来させないんだから……私も一緒に来るからね。私も瞳お姉さんのこと気に入ったんだから」



 芽衣はそう言って、陽太の腕の筋肉にぶら下がっている。



「瞳お姉さんって素敵な大人の女性で……可愛くてきれい……憧れる……」


「聖香がそういうなら、俺も一緒にこの店に来るよ。今度から、何かあった時の集合場所は瞳お姉さんの店にしないか?」



 陽太、芽衣、聖香、湊の4人も瞳お姉さんのことを気に入ってくれて良かった。これから街中に来る時は、瞳お姉さんの喫茶店が涼達の集合場所になった。

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