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19話 皆と一緒のゴールデンウィーク

 ゴールデンウィークにはいった。

涼は女子だけで旅行にでも行けばと愛理沙に提案するが、愛理沙は旅行に行く気持ちなどないと言う。

家で掃除をしているほうが愛理沙は落ち着くらしい。


 せっかくのゴールデンウィークが勿体ない。



「涼はゴールデンウィークに何か用事があるの?」


「うん……毎年、亡くなった家族の墓へ参りにいくんだ。だから1日だけ家を空けるね」


「涼の家族のお墓なら、一緒にお参りしたい……涼のアパートにもお世話になっているし」


「せっかくのゴールデンウィークを墓参りに使う必要はないよ。もっと楽しいことに使って」


「私は涼といるほうが安心するの……他の人達だと警戒してしまうし、緊張する。だから涼と一緒にお墓参りに連れていって」



 そこまで言われると涼も断ることができない。本当は涼が愛理沙をどこかへ連れてい行ってあげればいいのだが……女子とデートをしたこともない涼が、デートの場所など考え付くはずもない。



「墓参りは明日だから、今日は愛理沙と一緒に街に出よう。2人で街に出るのはアパートへ来て以来だろう。」



 青雲高校へ通うのに、高台から街まで通っているが、青雲高校は街の中心街から外れていて、涼と愛理沙は街の中心街へ2人で行ったのは家財道具を買いに行った時だけだ。


 涼はポケットからスマホを取り出して湊にLINEをする。



《今日は愛理沙と、街へ出たいのだが、女子と2人で行動したことがない。どこへ案内すればいい?》



 すぐに湊からLINEの返信がくる。



《仮彼氏の涼が愛理沙とデートすることになっていることがおかしい》



 湊に疑われてしまった。すぐに涼も返信する。



《成り行きでそうなっただけだ》


《そんな楽しいことは皆で分かち合おう。待ち合わせは駅前のロータリー広場だ》



 湊に強引に予定を組まれてしまった。


 そのことを愛理沙に伝えると、愛理沙はおかしそうに笑う。



「私と涼もデートなんてしたことないものね。皆が一緒のほうが楽しいかも……私はそれでいいよ」



 涼としては愛理沙とデートをしてみたかったが、愛理沙がそれで良いというなら仕方がない。

 私服に着替えてアパートを出る。今日は皆が一緒ということなので、2人で歩いて高台から街中のターミナル広場まで歩くことにした。


 待ち合わせの時間まで十分に時間がある。空は快晴で雲一つなく、そよ風が吹いていて、とても気持ちが良い。


 愛理沙と2人で並んで歩く。陽光に照らされた愛理沙はまさに美少女。

隣に歩いている涼は自分が恥ずかしくなる。



「どうしたの?」


「愛理沙がとってもきれいだからさ。隣に俺が歩いていいのかって思っていたんだ」


「アウ―――涼はまたそんなことを言う……涼も恰好いいよ。私は涼と歩くのが大好きよ」



 愛理沙は恥ずかしそうに照れながら、涼に思いを告げる。

愛理沙の気遣いは嬉しいが、やはり涼には勿体ない美少女だと思ってしまう。



「涼は自分の魅力がわかっていないわ……だって、すごく甘いマスクをしてるのよ……学校では涼にも隠れファンは多いんだから」



 学校で涼が人気があるなんて、そんな噂を耳にしたことがない。

愛理沙が涼を元気づけようとして、励ましてくれているんだと思う。


 イケメンで、女子から人気なのは湊だと思っている。

湊は聖香が好きだけど……そのことは内緒だ。


 それに元気が良くて、陽気で男女共に人気があるのは陽太だ。

元生徒会長の芽衣も陽太のことを気に入っている。


 それに比べると、どこか影が薄いと涼は自分のことを感じる。

涼は他人の心の距離を測ることは得意だったが、自分のことには無頓着な性格だと自分で気づいていない。


 ロータリの広場に付いて、2人で木陰に立っていると、湊、陽太、楓乃、聖香、芽衣の5人が集まった。

まさか全員が集まるとは思わなかった。



「ゴールデンウィークといってもさ。俺の家なんてジムだろう。だから今日は客が沢山いて、ジムでトレーニングをすることもできないんだぜ」



 陽太が豪快に笑って、涼の肩を叩く。



「今日は楓乃ちゃんと遊ぶ約束をしてたんです。湊ちゃんからLINEをもらってビックリしました。愛理沙と涼ちゃんの2人だけで、抜け駆けデートなんて許せません。私達も一緒に遊びに行きます」



 聖香が豊満な胸を張って、涼へと抗議をする。



「私の家で同居していた時は、涼はどこへも連れて行ってくれなかったのに……愛理沙だけズルい」



 なぜか楓乃が涼と愛理沙に怒っている。



「私は暇だったから陽太に付いて来ただけよ。別に陽太と遊ぶ約束をしていたわけじゃないからね」



 芽衣は誰からも聞かれていないのに、なぜか言い訳をする。



「そんな訳だから、皆で遊びに行こう。カラオケは涼と愛理沙が苦手だから、今日は却下するとして……映画でも見に行かないか?」



 皆が静かになったところで、湊が映画を観に行こうと提案する。



「別に駅前に来たからと行って、何か遊ぶ所があるって訳でもないしな。ゲーセンに行っても、楽しめる者と楽しめない者に分かれるしな。湊の提案でいいんじゃないか」



 全員、異論なく映画館へ行くことで決まった。


 それぞれに思惑があるようだ。

涼はもちろん、映画館の中で愛理沙と仲良くしたいという気持ちが大きい。



「皆の意見が決まったところで、シアタービルまで歩いていこう」



 駅前のターミナル広場から離れて人並みの雑踏の中を皆でシアタービルへと向かう。


 湊が先頭に立って皆を誘導する。

その後ろに聖香と楓乃の2人が歩いていく。

そして、陽太と芽衣が並んで続く。

一番最後尾に涼と愛理沙が付いていく。



「涼…皆が揃うと頼もしいね」


「ゴールデンウィークらしくていいと思う」



 交差点の信号を渡って、皆で楽しく談笑しながらシアタービルを目指す。

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