ただの独り言《プロローグ》
明転
朝が来る。
朝が来た。
あぁ、だるい。
今日も奴らは、私を蝕む。
今日はダメな日だな。
こんな日は、部屋に引きこもっていたい。
だが、こんな日は決まって、誰かが来る。
世話は全て投げてしまおう。
私はただ、座っていよう。
パサリ、と落ちた羽織を拾い上げ肩にかける。
決まった髪飾りは、忘れずに。
カタン、と音を立てる杖に手を伸ばし。
私は扉に手をかけた。
今日も絶不調の体は、私を蝕む。
あぁ、いいな、これ。
ただ1つ、例えば植物しか召喚できないような最弱の魔力で最強になりたい。
太陽光を浴びても生きていられる吸血鬼になりたい。
自殺願望を、格好良く締めくくりたい。
あぁ、いいな。
カタカタと、筆が進む。
西洋かぶれの部屋は、私の趣味だ。
格好良いだろう?
誰も文句を言っていないのだから、格好良いのだ。
それでいい。
私は、劇団を創設した。
それなりの団員を抱え、それなりの演目の数をこなしている。
知名度は、いまいちか?
知らんけど。
いいのだ。
私は、あのスポットライトの下に立ちたいだけなのだから。
あの光は、私を照らす。
私だけを照らし出す。
観客の瞳は私だけに集まり、その双眸に私を刻み込む。
それが何よりの快感を、私に与える。
それでいい。
そんな強がりも、言えてしまうのだから。
扉を叩く、音がする。
ふむ。
音量が少々小さい。
劇場で鳴らすのなら、あと5くらい音を上げさせる。
ギィイ、と音を鳴らして扉が開く。
こちらは丁度良いな。
扉の音があまりにも大きすぎると、しらけてしまう。
不安を隠さない表情で、部屋を見渡す。
少々、やり過ぎなくらいだな。
でもまぁ、素人にしては上出来だ。
合格点をやろう。
部屋に居る全員の視線が、扉の方へ滑る。
脅かし過ぎだな。
あぁ、部屋が暗めだから、というのもある。
私が、この暗さがいいのだ。
心地がいい。
私がこれ、といったらこれになる。
それでいいのだから。
そうして客は、口を開いた。
――今日も舞台の、幕が上がる