王城編最終章中編
「何がいいんだろ…」
綾斗はアリスの誕生日プレゼントを買いに城下町に来ていた。
街はアニメでよく見るような西洋風で獣人種、鳥人種、エルフといったファンタジー系のゲームでよく登場するような種族が沢山行き交っている中で数人の人間も確認することができる。
「おっと、」
横から大柄な獣人種の男が走ってきたのを綾斗半歩さがってぶつかるのを回避する。男は綾斗に目もくれずに真っ直ぐに走っていく。
「誰か、捕まえてください!!ひったくりです!!」
そう叫びながら獣人種の男が走ってきた方向から綾斗と同じくらいの年の人間の少女が走ってきた。
「…」
それを見た綾斗は右手を走り去る獣人に向けて心の中で唱えた。
火球
どうせ獣人だこの程度じゃ死なないだろ。
そう心で呟いて綾斗は右手に出来た小さな火球を放った。
綾斗の放った火球は真っ直ぐに飛んで行き、走る獣人を捉え、火球を背中に受けた獣人は数メートル宙を舞い、うつ伏せの状態で地面に落ちる。
「はい、どうぞ」
綾斗は獣人の側に落ちていた少女のものらしき鞄を拾い上げて少女に差し出した。
「ありがとう…ございます」
綾斗は微笑んで獣人の方へ向き直る。
うーん、気絶してるみたいだな、どうするべきか…
そんなことを考えているとようやく綾斗は自分に集まる視線に気がついた。
なんだろ…もしかして街で魔法を使うのが禁止されてたりする?
「なんの騒ぎだ?」
野次馬の後ろの方からドスの効いた声が聞こえてくる。
これってひょっとして逃げないとまずい感じ?
「こっち」
先程の少女は綾斗の手を掴むと引っ張って行き野次馬の群れを抜けて路地裏に入っていく。先程の場所からある程度離れて場所で少女は立ち止まり綾斗のてを放した。
「ありがとう、助かったよ」
綾斗がお礼を言うと少女はいえいえ、と言葉を返した。
「こちらこそ先程は助けていただき、ありがとうございました。私はニーナ、人間です」
「俺は綾斗、人間です」
元だけど…
「あやとさんですか、またご縁があればまたいつか」
「ああ、うん。ひったくりには気をつけてね」
ニーナはにこりと笑い、肩の高さまで手を挙げて小さく左右にてをふった。
綾斗も微笑み返すと同じように小さく手を振って別れた。
綾斗はニーナと別れた後、アリスのプレゼントを選んでいた。
「ほんとに何がいいんだろ?女の子にプレゼントなんて渡したことないしな」
独り言を言いながら歩いているとふと、アクセサリー屋の店先に置いてあった物が目にとまった。
それは小さめの輪が繋がったチェーンのネックレスに小さなハートがついているものだった。
「これにしよう」
即決だった。
鉄製で、色はそのままの鉄の色。だけれど綾斗にはアリスに似合うという確信があった。
「そろそろ帰らないとな」
日が暮れ始めてるのに気づいた綾斗は少し早めのペースで王城への道を歩き始めた。
遂には前書きに何も書かなくなった…
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
予定では王城編最終章は前編、後編の2部完結の予定でしたが思いのほか長くなり今回の中編をあいだに挟んだ3部構成に変更になりました。
それにしてもよく考えたら中編ではアリスの登場が1度もなかったですね…次回は登場するのでご安心を。
ということでまた来週お会いしましょう。