今生だってオタクしたいっ!
車に乗った私は、これからの身の振り方について考えていた。
詰まる所、私は振られ損なのだ。
しかし婚約破棄しようにもこちらの家から打診した為、断りにくい。
西園寺 瑠璃子と皇 終夜の婚約発表はまだ先の話だが、記憶を取り戻す前の自分が自慢げに言いふらした為、既に他の家には周知の事実となっている。
自分から墓穴を掘るなんて、何をやっているんだ私。
つまりそんなことをしたら、双方共に面目が立たない。
はぁーっとため息を漏らす。
「お嬢様、やはり学校で何かありましたか?」
私のことを当たり前のようにお嬢様呼びをしてくる男性は、送迎運転手の小嶋 大助さんだ。
彼にも今まで随分と迷惑を掛けてきた。
主に瑠璃子の我儘だとか、理不尽な言い掛かりだとか、八つ当たりばかりしてきた気がする。
自分のことだけれども、私だったらげんこつぐりぐりの刑だ。
「……小嶋さん、今まで本当にありがとうございました」
「っ!ちょ、ちょっと待って下さい。ここでクビになると、仕事の宛が無いんです!」
私のお礼の言葉は解雇予告に聞こえたらしい。
私は思わず苦笑した。
「ふふ、違います。たまにはお礼の言葉を言いたくなったのよ」
「は、はぁ……あ、今日は予定にエステの予定がありますが、いかがなさいますか?」
「え、エステぇ!?」
私は思わず聞き返した。
「は、はい!花嫁修業には必要だと奥様が仰っていました」
違うわ!花嫁修業にエステってどうゆうことなの。せめて料理教室!
前世の私ですら、エステなんて痛くてくすぐったくて、みっちゃんに連れられて1回しか行ったことが無いのですが。
それに瑠璃子は外面じゃなくて、内面を磨くべきだから。身体は磨かなくて良いから!
そうだった、私の今の両親はどちらも娘に関してはアホになれる人だったよ。
「別に良いわ、雑誌を買って帰るから書店に寄って頂戴」
やって来ました!書店の2階にある、アニメ・漫画コーナーへと!
瑠璃子はファッション雑誌や美容に効く本は買えど、日本サブカルチャーの良さには気付か無かったらしい。
こちらのコーナーへ来たことは無かった為、しっかりと漫画本を見るのは今生初になる。
小中高生の恋愛バイブルとして、瑠璃子が少女漫画を買わなかったのは盲点だったな。
そうしたら、自分が典型的な当て馬なのだということにも気付けたかも知れないのに。
私はそう思いつつ、本棚の上に手を伸ばした。
す、凄い!
前世、あらかた興味のある漫画は読み尽くしていたとは思っていたが、この世界の日本サブカルチャーに財宝の山を見つけた様な気分になる。
これもこれもと、いつもの容量により30冊近くのタワーになっていたのを見て私は思った。
どこに置くんだこれ。
無理だ、オタクバレはどうしてもしたくないが生き甲斐の一つでもあるので、辞められない。
うーんと頭を捻らす。
残念だが思いつかず、どうしても気になった1冊だけレジへと持って行った。
「こ、これは!何てブサ可愛いんだ!」
レジでは、スタンプカードでアニメの非売品グッズが当たるキャンペーンをやっていた。
さっき、今持っている漫画のマスコットキャラクターであるギュギュちゃんのキーホルダーがぶら下がっていた。
アンバランスな顔と体が、絶妙なブサカワ感を醸し出している。
く、悔しい!
あの漫画のタワーごと買っていたら、2回は引けたはずなのに。
また通い詰めて当ててやるっ!
って、いけないいけないセーブしないと身の破滅へと一直線だ。
私は落ち着かせるように深呼吸をした。
小嶋さんを待たせているので、いつもより早めに買って切り上げたが、記憶を思い出す前の瑠璃子の方が早く買い終えていたことを思い出した。
ごめん、小嶋さん。
「そういえば、今夜は麗子お嬢様が来られるようですよ」
車に戻り小嶋さんにひとしきり謝った後、そんなことを言われた。
げっ!麗子か。
私は思わず顔を顰めた。
白木院 麗子とは従姉妹同士になるキャラクターの名前だったからだ。




