莉里ちゃんのお誕生日パーティー!
「せーの!」
「お誕生日おめでとう!」
「……ありがと、皆」
皆で準備を終わらせて、桃ちゃんが莉里ちゃんを連れてきました。
玄関を開けたと同時に皆で声を合わせておめでとうと言ったのですが、莉里ちゃんはすんなりと言葉を返してきました。
「あれ、あんまり驚いてない?」
「……バレバレ。皆がこそこそしてた」
「なんや、バレてたんか~」
「残念だったね、千佳ちゃん」
「でも、姉さんがそわそわしてましたよ。家に帰ってからずっと落ち着かない様子でしたから」
「……桃、やめて」
秘密をバラした桃ちゃんに、視線で文句を言う莉里ちゃん。
私は顔を紅くしている莉里ちゃんの腕を取って、リビングへと案内する。
「さてさて。時間的に夕食はまだだけど、遊ぼう!」
「……ふぉ!」
リビングへと入った莉里ちゃんは、私たちの渾身の飾り付けに声を上げます。
壁には紙飾りを、いつも使っているテーブルには愛ちゃんの家から持ってきてもらった花柄のテーブルクロスを引いて、照明はいつもより暗め、そして暖色にしました。
「……すごい」
リビングを見回す莉里ちゃんの目はキラキラと光って、口数は少なくともとても嬉しそうな笑顔を見せてくれました。
それを見て、私たちも嬉しくなります。
「よろこんでくれて良かった!」
「……皆、ありがと」
「どういたしましてやで~」
「莉里ちゃんが喜んでくれてよかったよ」
「サプライズ成功ー!」
「せいこー!」
いや、驚いてはいないと思うよ。
メグちゃん、花ちゃん。
「よし、それじゃあ莉里ちゃんが主役だから! 何がやりたい?」
「……桃は何がしたい?」
「姉さんがやりたいことでいいんですよ」
「……トランプ」
「よっしゃ、千佳ちゃん用意や!」
「いえっさー!」
今日は莉里ちゃんの手となり足となります!
「さぁ皆、食事ができたわよ」
「あ、はーい! じゃあ莉里ちゃんはここで座っててね!」
「……手伝う」
「だーめっ。主役は尽くされるべきなのだよ!」
立とうとした莉里ちゃんを座らせて、それ以外のメンバーで料理を運んでいく。
莉里ちゃんの好きなハンバーグをはじめ、綺麗に盛り付けられたサラダや山盛りのから揚げなど、見るだけで涎が出る料理が並んでいきます。
リビングのテーブルには私たち子供が、ダイニングの方にはお母さんたちが座って食事が始まります。
丁度定時過ぎたくらいなので、早く帰って来ないと無くなっちゃうぜ!
「では、莉里ちゃん合図をどうぞ!」
「……いただきます」
「いただきます!」
うん、美味しい!
莉里ちゃんが好きなミートソースで絡めたハンバーグは、口内で肉汁が溢れ出てきて私たちの頬が垂れ落としていきます。
莉里ちゃんの誕生日ということもあり、今日は皆で莉里ちゃんにあーんをしてあげることにしました。
「はい、莉里ちゃん。からあげやで~」
「……あーん」
「じゃあ愛は、サラダをどうぞ」
「……むしゃむしゃ」
「莉里ちゃん、おにぎりどうぞ!」
「……はむはむ」
「莉里ちゃん! プチトマトー!」
「……へた取って」
「姉さん、ハンバーグです。どうぞ」
「……まいうー」
「さぁ莉里ちゃん。おーお」
「……」
「おーお」
「……」
「ああう」
「……えっと」
「うう、うー!」
「……だ、誰か。も、桃」
何をしているかと言うと、運動会のお返しです。
私が口でから揚げを挟んで、莉里ちゃんの顔へと近付けています。
莉里ちゃんは顔を紅くしながら、周りへと助けを求めるようにキョロキョロしますが、皆に視線を外されて涙目です。
「ああ!」
さぁ!
「……うう、はむっ」
「んん! ちゅっ」
「……!!!」
やってやった……。
お菓子のゲームならぬ、から揚げゲームで少しだけ莉里ちゃんの唇を奪いました!
「……!!」
顔を真っ赤にしてる莉里ちゃん、唇含めてご馳走様でした。
さて、周りで怒りの視線を伸ばしてくる女の子たちを宥めましょうか。
「……はじ、めて」
そんな故意のアクシデントを切り抜けながら、私たちの楽しい夕食パーティーは過ぎていくのでした。
「……やたっ」
莉里ちゃんの密かなガッツポーズと共に。




