これは酷い……!
アルマさんは正しかった……! なんなの、この酒臭さ!!!!
「うう、頭が痛い……」
すでにリーナさんは赤い顔で足元もふらついている。コーチやジョットさんは平気そうだけど、アルマさんは終始顔をしかめているから、お酒の匂いは好きじゃないんだろうなぁ。
この森、ほんとすごいんだよ。森自体が霧深くてなんだか湿った感じなんだけど、もうねぇ、空気にお酒が霧になって紛れてる感じなの。なんだか体の中にお酒が吸収されちゃいそうで怖い。
そんな心配もあながち間違ってはいなかったみたいで、パーティーの先頭をぐんぐんと力強い足取りで進んでいたコーチの頭の上から、トップくんがコロリと転がり落ちた。
「トップが落ちた」
後ろに続くジョットさんが素早く受け止めてくれてホッとする。さすがジョットさんだ。
「おお、わりい。ありがとな」
振り返ったコーチが「どうした、寝ぼけたかぁ? ほら来い」なんて呑気なことを言いながら、トップくんを呼び寄せるけど、トップくんはジョットさんの手の中でふにゃっと形を崩した。
「お?」
そんなトップくんをコーチが指先でツンツンとつつく。そして急に心配そうにオロオロし出した。
「どうしたトップ! おまえふにゃふにゃじゃねえか! 弾力がまるでねえ!」
「酔っ払っちゃったの……かも……」
リーナさんが、息も絶え絶えに言う。
「私だって酔っ払ったみたいになってるもの……。他の子と違って、トップくんはほぼ全身外気に晒されてたから……」
ホントだ。言われてみれば、あたしはアルマさんの懐の中だからある程度ローブで守られているし、ポヨちゃんはリーナさんのポシェットの中だ。まるちゃんは道中恒例のジョットさんの拳の中からお外に出る訓練をしていたから、ほぼノーダメージっぽい。
トップ君はコーチの頭の上にちょこんと乗っかってたからねえ、確かにこのお酒が混ざってるっぽい霧を一番たくさん吸収しているかもしれない。
「まじか。まぁまだコイツはガキだからなぁ。そのうち酒も教えねえとなあ」
コーチは見当違いなことを呟いてジョットさんの掌からトップくんをつまみ上げると、つかつかとこっちに寄ってきた。
「悪りぃがスラ吉、またコイツ預かってもらえるか」
ま、そうなるよね。あたしはアルマさんの懐の中で、軽くジャンプしてみせる。体の大きさから考えても、あたしがかくまってあげた方がいいと思うし。
「リーナもこの分じゃ危ねぇな。アルマ、お前の師匠がいる場所は、見当ついてるのか?」




