いいんですか!?
今度こそ潔く立ち去ろうとしたあたしの体が、いきなり宙に舞う。
!!?
なに?
軽い衝撃があったから、何かに足元を掬われて宙に跳ねあげられたみたい。くるくると回りながら落下したあたしを、無骨な手が受け止めた。
「まあまあ、そう急ぐなって」
け、剣士!お前か、せっかくの決心を無駄にしたのは!
今そうとう頑張って立ち去ろうとしたのに、なぜ邪魔をするの。恨みがましく見ていたら、乱暴にグリグリっと撫でられた。乱暴すぎて揉まれたと言った方が近いかも知れない。核にダメージがきたらどうしてくれるのよ……!
あまりに乱暴な手つきに若干ムッとしちゃったんだけど。
「もういいじゃん、連れてってやろうぜ」
剣士様のその寛大なお言葉に、今しがたの無礼は一切不問と処す事にした。
なんという太っ腹。さすがアシャムキャットから助けてくれただけはある!なんていいヤツなんだ、剣士!
絶賛したいところだけど、あいにく声帯は持っていない。剣士の手のひらの上で、全力でポヨンポヨンと跳ねて見せた。結果として一緒には行けなかったとしても、一瞬でもそう思ってくれた事がただ嬉しい。
ありがとう、剣士。
「なんなら俺の懐に入れときゃいいだろ」
ええ……それは、なんかヤダ……。
「ちょ!お前っ失礼なヤツだな!」
はっ!つい本音が。
うっかり平べったくなってしまった。
剣士は憤慨してるけど、お仲間さん達は大爆笑だ。シーフのリーナさんなんか「まあねぇ、汗くさそうだもんね」とどさくさに紛れて若干酷いこと言ってるし。
「じゃあ、私は?私が連れてってあげる」
シーフのリーナさんの申し出に、思わず跳ねた。……ところを、すかさず剣士に上下からギュウギュウと潰される。剣士の手のひらの上で失礼な態度をとった事を反省するくらいには不快な責め苦だった。
「絶対ダメだ!さてはてめえオスだな!?」
なんたる言いがかり。そういや剣士は最初っから「漢気がある」とか、失礼しちゃう言い方してたっけ。
「スライムって性別あるの?」
「さあ、知らね。ノリだノリ!」
と、剣士とシーフのリーナさんはもう雑談に入ってしまっている。剣士の手のひらから地面に降りたあたしは、ちょっとだけ頭を悩ませた。
さっきの話から考えても、一緒に行くとしたら結局のところ、誰かの手を煩わせるしかないってことだろう。そりゃあそうだ、ゴブリンとあたし達スライムなら、一対一でも余裕で負ける自信がある。
あたしを連れていくなら、単独行動なんかさせておけないんだ。
危険すぎる。
そう、魔術師さんが言ったとおりなんだよね。