リーナさん、任せといて!
ひとしきりアルマさんの説明を聞いた後、あたし達はいよいよ街へ入る事にした。
だってさ、もうコーチが「早く、早く」ってうるさいんだもの。
待ちきれない様子でせっついてくるから「子供か!」って思ったけど、まあ、しょうがないよね。一番命張って守ってくれて、剣まで失くしちゃったんだもの。
アルマさんも「じゃ、行こうか」なんて苦笑してるし、うん、さっさと街に入っちゃおう。
「うーん、やっぱり街中では危ないよね」
「そうね、まだ三人は慣れてないから、別々だと危ないかもしれないわ」
「だなー、キョロキョロしてるうちに懐から転がり出たりすると厄介だ」
町の門に近づいて来ると、急にアルマさんが真剣な表情で呟いて、リーナさんとコーチもその言葉に同調した。どうやらチビちゃん達三人が、街中でじっとしていられるかが心配らしい。
「ま、スラ吉に預けとくのが一番だろ」
コーチの「考える余地もない」って感じのセリフに、他の三人も、一も二もなく頷いた。
「スラちゃん、三人を匿ってあげてくれる?」
リーナさん、もちろんだよ! 任せといて!
大きくジャンプして了承を示したら「ありがとう」って微笑まれた。リーナさんの笑顔、優しくって大好きなんだよね。
リーナさんはそのまま後ろを振り返り、チビちゃん三人に視線を合わせる。
「いい? みんな、これからあの大きな町に入るの」
リーナさんが話しかけると、チビちゃん達も一斉にポヨンと可愛くジャンプする。
「街には珍しいものがたくさんあって、みんな色々見たいだろうけど、大人しくしていて欲しいの」
「僕ら以外の人間に見つかったら、凄く危ないからね。しっかり隠れていて欲しい」
「殺されるかもって覚悟しとけってこった。言っとくが脅しじゃねえぞ」
アルマさんがちょっとソフトに言った分を、コーチがズバッと言いなおす。当然、チビちゃん達は震え上がった。
だって、あたし達が暮らして来たあの草原で、一番怖い敵は人間だったんだもの。
アルマさんやコーチたちが特別なだけで、本当に人間は怖いんだって、あたし達は生まれてから幾日も経たないうちに誰だって思い知ることになる。
その恐怖が思い出されたんだろう、まるちゃんなんか早速水分が外に出始めた。
ジョットさんが無言でまるちゃんをよしよしと撫でているのがほほえましい。
「ま、そんなワケでだ」
コーチがコホン、と咳払いして続ける。怖がらせ過ぎたってちょっと気まずいのかも知れない。その様子を見て、リーナさんがにっこり笑ってコーチの前にずいっと出てきた。
「大丈夫よ。チビちゃん達は、小さくなってスラちゃんの中に隠れていれば安全だから」




