識別するにはどうするの?
「しっかし流石にスライムだけあってそっくりだな、見分けがつかねえ」
ううむ、と顰めてコーチが腕組みした。やっぱり人間からはあたし達、みんなおんなじように見えるのね。あたし達はお互い、ちゃんと見分けがつくんだけど。
「スラ吉はデカイし色々体ん中に入ってるからまだ分かるが、こいつらはさっぱりだ」
「そうねえ、なんか目印になるものでも持ってもらった方がいいかしら」
「うーん、じゃあちょっと待って」
アルマさんが急に真剣な顔になってチビちゃん達をじっくりと見つめ出した。
いいなあ、アルマさんにあんなに熱く見つめられて。
ついつい嫉妬しちゃう。でも、チビちゃん達は人間の大きな顔が近寄ってきてジロジロと見るもんだから、ちょっと緊張してるみたい。
モジモジと体を動かして、居心地悪そうにしてる。まあ、うち一体はそんなの気にも止めずに、お肉にかぶりついてるけれど。
アルマさんは散々チビちゃん達を観察したあと、次男君をつまみ上げておもむろにこう言った。
「この子はリーナが鍛えてやって。一番素早さがあるみたいだ」
なるほど、アルマさんったら適性を見ていたのね。果物が大好きな次男君をリーナさんにポンと渡す。次男君は嬉しそうにリーナさんの手の中にすっぽりとおさまった。
言われてみれば確かに、一番逃げ足が速いのはこの次男君だ。臆病だけど、そのおかげで素早さが上がってるのかもね。
「あら、いいの? チビちゃんもそれでいいのかしら」
リーナさんの言葉に、次男君は早速小刻みに高速ジャンプで答えている。
「あはは、いいみたい。嬉しい」
リーナさんがヤダなんて不埒な輩はチビちゃんの中にはいないと思うよ?人間の中では一番細くて小さくて恐怖感少ないし、美味しいものくれたし、言葉や動きも穏やかだ。いい匂いだってする。絶対にリーナさんがイチオシだよね。で、多分次がアルマさんだ。
ジョットさんは無口すぎて最初は何考えてるのか分からないし、コーチなんか暑っ苦しくて怖いと思うんだよ、最初は。本当はいい人なんだけど、初見がちょっとね。武器も物騒だし。
「良かった、じゃあ名前付けて……あと、何か身につけられるものをあげて。大切なパートナーだからね」
「わ、嬉しい。じゃあ、ポヨちゃんでどう? ぽよぽよ跳ねるから、ぽよちゃん」
次男君はその名の通りぽよぽよ跳ねて喜びを表してるけど……いいなあ。なんとなく可愛い名前で。あたしなんかスラちゃんとかスラ吉とか呼ばれて、ザ・スライム的な感じなんだけど。
「よし、じゃあポヨちゃんにはこのバンダナをあげちゃおう! きっとかっこいいよ!」
おまけに素敵な赤いバンダナまで貰っちゃって、嬉しすぎたらしい次男君ことポヨちゃんは、喜びのトリプルジャンプを決めていた。




