頑張ったご褒美
まあでも、コーチのいう通り、チビちゃん達が強くなってくれるならその方がいいのは、あたしだって分かる。
いつまでもあたしの体の中で守るのだって無理があるってことも。
だから、これは喜ばしい事なんだろう。
チビちゃん達もよく分からないなりに褒められてる事だけはなんとなく察しているのか、可愛くぴょんぴょん跳ねるてるし。
喜ばしい……そう、喜ばしい。なんかちょっとこう、釈然としないけど!
そう思っていたら、リーナさんが満面の笑顔で近寄ってきた。しかも、白くてほっそりした腕に、どうやってのっけてるのかと不思議に思うくらいのお皿がのっている。
なんか湯気が出てるの。これってもしかして。
「はい皆、お疲れ様! 戦って疲れた後は美味しいご飯よね!」
やっぱり!
リーナさんのごはんはいつ食べたって美味しいの。あたしはさっきのなんか釈然としない気持ちなんかすっかり忘れて、リーナさんの元へまっしぐら。嬉しいって気持ちを小刻みなジャンプで全身使って表現する。
「はい、スラちゃんは特別活躍してくれたから、特別メニューよ!」
リーナさん!
リーナさん天使! なんて優しいんだろう……アルマさんがいなかったら惚れてたよ!
あまりの嬉しさにプルプルが止まらないあたしの前に、大好きなサラダとお肉と野菜をふんだんに刺した串焼きが置かれる。確かに、どれもあたしが好きなのばっかり。
嬉しくってお皿に全身浸してサラダを必死で取り込んだ。
…………? なんだろう、なんだか少し、ぽかぽかしてきたんだけど。
不思議に思ってお皿の中をよく見てみたら、見慣れないきのこが入っていた。既に半分くらいはあたしの体に吸収されちゃったけれど、小さな傘はまあるいかわいらしい形。じくの部分は長細くって色は全体的に紫色でなんかちょっと毒々しい。
そして味は……なんかこう、ぱちぱちはじけるみたいな、刺激的な味だった。
「どう? アルマ秘蔵の『マジックマッシュルーム』よ」
「頑張ってくれたからね。基礎魔力を底上げする、結構レアなキノコなんだよ」
あたしは、感動した。
こんなに幸せなことってあるかしら。そんな貴重なキノコを、惜しげもなくあたしに食べさせてくれるなんて。
「早く魔法が教えられるようになるといいね」
そう言ってにこにこしながら撫でてくれるアルマさんの優しい瞳に見守られながら、あたしはレアなマジックマッシュルームをゆっくりゆっくりと味わいながら消化した。
…………ああもう、幸せだなあ。
「あはは、可愛い。こんなにちっちゃくっても、好みとかあるのねえ」
幸せをかみしめていたあたしに、リーナさんの楽しそうな声が聞こえてきた。
リーナさんの視線の先にはチビちゃん達の小さな三つのプルプルボディ。確かによく見たら、チビちゃん達は全然別のものばかり食べている。




