パパ&ママの決意
それでも怖いもの知らずのチビちゃん達は、揃って元気良くジャンプする。
そして、パパ&ママはお互いにそっと体を触れ合わせたあと、決意したように軽いジャンプでその意を示した。
……いいの?
だってまだこの子達、こんなにちっちゃいじゃないの。この草原でパパさんとママさんに守られて、大人になった方が幸せなんじゃないのかな。
そう思ってパパ&ママに思念を送ったら、思いもかけない答えが帰ってきた。でも、それは……とても納得がいく内容でもあった。
この草原だって危険だ、って二人はそう言うの。
確かにこの草原でも、大人になるまで生き残れるのはそう、ほんの少数なんだ。
スライムやレベルの低い魔物達がたむろするこの草原は穏やかな気候だし、たまに薬草だって取れる。お肉が美味しいって噂の魔物も多いし飲める程度に綺麗な水場もある。少し向こうの森にはもうちょっとだけ強い魔物もいて魔物の種類はとっても豊富だ。
草原や森の魔物にとってはあたし達スライムはお手軽な餌だし、町の冒険者にとってはこの草原自体が初心者の腕試しにちょうどいいって、そう言ってる。
ある意味『狩場』だと言っていい。
これまであたし達は、そこに何の疑問も持たなかった。
あの場所で生まれ、草を食み、捕食者に出会えば必死で逃げて、子を成しある日命を落とす。それはあたし達にとって自然なサイクルだ。
でも。
あたしが人間といるところを目の当たりにして、強くなっているのを見て、子供達がそれを望むなら送り出そうと決めたって言うの。
草原にいたっていつ命を落とすかなんて分からない。
現にアシャムキャットに狙われて、一度は死にかけたチビちゃん達。
思う通りにさせてやりたいんだ、ってそう言われたら……もう、あたしに言えることなんか何もなかった。
僅かな沈黙のあと、コーチが厳しい顔で再度問う。
「俺らの命令は絶対だ。理不尽な事を言われるかも知れねえぞ? 本当にそれでもいいんだな」
チビちゃん達は全力で、パパ&ママは重々しく。それでもしっかりと同意のジャンプを披露した。
「だとよ。いいんじゃねえか?」
あっさりと言い放ったコーチに、アルマさんは「もう〜……」と困り顔。
「よし! 来い、チビども!」
コーチはまるで鳥でも腕に呼ぶみたいにゴツい左腕をかざし、チビちゃん達に号令をかける。思わず、といった様子で次々コーチの腕に飛び乗ったチビちゃん達は、ちょっと緊張しているけれど、嬉しそうでもあった。
「じゃあ、こいつらは預かるぜ!」
残る右手でパパ&ママをグリグリっと乱暴に撫でたコーチは、豪快に笑った。




