待っててくれるの?
「スラちゃん」
振り返ってくれただけでも嬉しくて、あたしは全身が震えた。なのに眼鏡が光って、アルマさんの表情が見えないの。
ねえアルマさん……! あたし、あたし……!
「大切なお友達なんだろう?」
そうだけど、でも。
「僕達がいたら、お友達の方が落ち着かないだろう? 向こうで待ってるから、ゆっくり話してくるといい」
え……?
その言葉に、あたしは思わず固まった。今、もしかして待っててくれるって、言った……?
「つもる話もあるでしょ?」
「あんまり遅せえと置いてくからな」
リーナさんとコーチも、そんな事を言いながら去っていく。
待ってて、くれる。
待っててくれるって、言った……!
良かった、良かったよおおお〜〜〜!!!
全身の力が一気に抜けて、もはや形も保てない。急にあたしがハリを無くしてぐにゃっとなったせいで、群がってたチビちゃん達が支えをなくしてコロコロと転がってしまったのはちょっと申し訳なかったかも知れない。
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「遅せえなあ、スラ吉のヤツ」
「仕方ないわよ、久しぶりに会ったんでしょう?」
どれくらい跳ねただろう、やっとコーチ達の声が聞こえて来た。かなり離れた場所で待っててくれたみたいで、あたしは若干真面目に置いていかれたかと心配したくらいだった。
「あのままあのスライム達と行っちまったとかじゃねえよな」
少しだけ不安そうなコーチの声。
ちょっと失礼な事言わないでよ、そんな事するわけがないじゃない! たしかに説得に手間取っちゃって遅くなっちゃったけど。
早く誤解を解きたくて、あたしはそりゃあもう一生懸命に跳ねた。
「あ、あれスラちゃんじゃない?」
「遅せーぞスラ吉!……ん?」
「あれ?」
アルマさん達の視線が痛い。そりゃあそうだよね。
「なんかちびっこいのも、ついてきてねーか?」
そうなの、今あたしの後ろからはチビちゃん達がピョンピョンと一生懸命跳ねながら頑張ってあたしについて来ている。多分アルマさん達から見たら、4匹のスライムが一列になってピョンピョン跳ねながら近づいて来てる感じに見えてる筈だ。
「あはは、何あれ可愛い」
「スライム行列」
リーナさんは楽しそうに、ジョットさんはボソリと呟くみたいに、それぞれ一言だけを口にした。
跳ねて跳ねて、やっとアルマさんの元に辿りつけば。
アルマさんはとてもとても困ったような顏をした。
「スラちゃん……その子達は?」
うう……ごめんなさいアルマさん、だってついてくるってきかないの。申し訳なくって申し訳なくって、あたしは思わず身を縮めた。




