強さと引き換えの
「……っ!」
しっかりと受け止めてくれたものの、アルマさんはなぜか一瞬息を詰めたあと、激しく咳き込んでしまった。
もう心配で心配で、伸びたり縮んだりしながらアルマさんの様子を窺ったんだけど、今度はそれが面白かったらしくって吹き出しながら咳き込み始めた。
「……死ぬ……っ」
ああああ、ごめんなさい!アルマさん。
心配してただけなの、そんなクリティカルなダメージ与えるつもりじゃなかったの……。
すごすごとアルマさんの胸を後にして、反省の証として離れた場所でちんまりと身を縮めた。気分はもう、よくコーチがお説教されている時のポーズ、正座である。
申し訳ない、本当に申し訳ない。
「ごめんごめん、スラちゃん、大丈夫だから」
だって、そんな事言ったってまだ咳き込んでるじゃないの、アルマさん……。
平謝りのつもりで頭を下げてはみたんだけど、見た目は平べったくなっただけ。ああ、アルマさんにごめんなさいの気持ちが伝わるといいんだけど。
「大丈夫、大丈夫。でも今度からもっとソフトに来てくれると嬉しいかな」
その言葉にあたしは衝撃を受けた。アルマさんが咳き込んだの、もしかしてあたしのせいか!
そうか、心臓あたりにあたしのタックルを受けたようなもんなのか!
酷い。それは酷い。
自分のしでかした事に愕然とする。愛しのアルマさんになんて事しちゃったんだろう、もう気安くアルマさんに飛びついちゃいけない強さになっちゃったのね、あたし……。
ナックルとかの重さも手伝ってそれなりのダメージだっただろうに、笑って許してくれるアルマさん。でもアルマさんはもうちょっと怒った方がいいよ……だってあたしがもっと強かったら、命に関わる問題じゃないの。
あたしは、心密かにもう二度と感情に任せて飛びついたりしない事を誓った。
「あらら可哀想に、すっかりしょげちゃって」
「大丈夫なんだけどね、ちょっと不意打ちだっただけで」
リーナさんとアルマさんが「おいで」って腕を広げてくれるけど、無理。絶対に飛びついたりしないんだから、って地面にはっしとしがみついた。
「こらスラ吉!」
そんなあたしを、コーチのゴッツイ腕がベリッと地面から引き剥がす。コーチの目線までつまみ上げられ、そのままピン!と指で弾かれた。
やーめーてーよー!ブラブラするじゃない!
「お前なぁ一回失敗したくらいでなんだ、意気地のない!」
ピン!ピン!と連続で弾かれて視界が揺れる揺れる。
ちょ……酔う。
「いいかスラ吉、ガッと跳ぶのも技術なら、優し〜く跳ぶのも技術だ!」
言ってるうちに気が済んだのか、ようやくあたしはコーチの足元に降ろされた。
うう……言ってる事は分かるけど。
「分かったなら、優し〜く跳んでみろ!」
ビシっとアルマさんを指差す。でも、そんな……さっきダメージ与えたばっかりなのに。
モジモジしていたら、コーチは「アルマが心配なら俺でもいい!」と自分の分厚い胸板を指差す。
まあ、コーチならいいか。
アルマさんの1.5倍くらい胸板ありそうだし、鎧着てるもんね。
そして難なく優し〜く鎧の上に着地したあたし。コーチは「ほら見ろ、出来るじゃねーか!」とそりゃもう鼻高々だ。
そしてアルマさんは小っちゃな声で「あ、なんか寂しい」と呟いていた。




