ぽよん、ぽよん、ズルズルズル……
明日はもう旅に出ちゃうわけだから、この重さに一刻も早く慣れなきゃいけない。あたしは地道に部屋の中を行ったり来たり、動きが少しでもスムーズになるように練習していた。
ぽよん、ぽよん、ぽよん、としばらく跳んでは、ズルズルズル……とスライドする。
ずっと跳ぶのはね、やっぱりすごい疲れるんだよ。でも、地を這うのはなんか跳ぶより余計に汚れる気がするし、動き的にホラーな感じがするから好きじゃないし。
やっぱり乙女たるもの、匍匐前進よりキュートなジャンプだと思うのよ!
自分に言い聞かせてはぽよん、ぽよん、ズルズルズル……を繰り返す。今の苦労がきっと、明日のあたしを助けてくれる筈だと思うの。
「うわあ、大変そうだね」
「やっぱり重いんじゃないかしら」
うん、ぶっちゃけめっちゃ重いけど……でも、頑張るよ。せっかくのジョットさんとコーチからのプレゼントなんだもの。
「明日からあんまりキツいようだったら僕のところにおいで、最初は休み休みいかないと戦闘の時にへばっちゃうと危ないから」
アルマさん……!
なんて、なんて優しいの!
さすがにハイジャンプをかませるほど体力が残ってなかったあたしは、アルマさんのお御足にスリスリと寄り添った。
「ごめんな、あいつらいいヤツなんだけどちょっと大雑把なんだよね」
かがんでヨシヨシと撫でてくれる手の優しさに、あたしはうっとりジーンとしてしまった。
やっぱりアルマさん大好きだなあ……。
一生懸命伸びをして、アルマさんの撫でてくれる手にスリスリする。ああ、幸せだなあ……。
「でもさすがにこの様子じゃ、これ以上負荷をかけるのは可哀想だ」
「そうね、急がなくてもいいんじゃない?」
そんなあたしの頭の上で、アルマさんとリーナさんがひそひそと言葉をかわした。二人はチラリとあたしを見て、そして二人で頷きあっている。
なあに? あたしに関係あること?
気になってそわそわしていたら、リーナさんがいきなりプッと吹き出した。
「やだスラちゃん、気になっちゃった?」
気になり過ぎて、どうやら変なポーズになってしまったみたい。ちょっと恥ずかしいけど、でもあたしに関係あることなら聞いておきたいんだもの。
あたしは重い体をヨイショと動かして、ひとつぽよんと跳んでみせた。
「分かった分かった、じゃあ話だけでもしておこうか」
アルマさんは手近な椅子に腰掛けると「スラちゃん、おいで」と手を差し伸べる。アルマさんはお膝の上に飛び乗ったあたしをポフポフと撫でながら、事も無げにこう言った。
「リーナとも話してたんだけど、スラちゃん、魔物の肉を食べると能力が上がるだけじゃなくて、魔力も少しずつ吸収してるみたいなんだよね」
……うん?
それって、どういう事?




