スラちゃん改造計画
「食べるもの……調理方法によっても変化ってある?」
「まだ食べた回数が少ないからよく分からないな。この数回見た感じじゃ肉の串焼き食べた時よりシチュー食べた時の方が上がったけど、食材の豊富さや量な感じがする」
「栄養バランスとか、そういうのも関係するのかしら」
「うーん、どうだろう。今のところなんとも言えない」
リーナさんとアルマさんが真剣に話してる横で、もう飽きたのかボンヤリ地面を眺めていたジョットさんが、ちょっとだけ目を見開いてから、あたしを見た。
なあに?なんか用?
「スラ」
目線で来い来いと訴えてくる。
せっかくお話できる声帯があるのに、勿体無い。もっとアグレッシブに喋ればいいのに。
そんな事を考えながらポヨン、ポヨン、と軽く跳ねながら近づくと、ジョットさんはしゃがんであたしの前に両手を広げた。
「パンチ、してみて」
パンチ?いいけど。
ジョットさんの手のひらを、さっきみたいにポカポカ殴ったら「一発だけ」「集中して」と次々に注文を付けられる。
なんだろう、もう特訓にはいったの?これ。
「全力で」
くっ……さっきのも、結構本気だったんだけどね!
あたしは振りかぶって、振りかぶって、精一杯力を溜める。
どりゃあぁぁぁぁ!!!
全力のパンチが炸裂!
ポヨン、と可愛い音がした。
「スラ、全力?」
小首傾げるのやめてください。全力ですとも。
仕方なくあたしは、軽く跳ねて全力である事を肯定した。
「パンチに力がない」
うん、ポヨンって音したもんね。
無言で考え込んでいるらしいジョットさん、しばらく固まったみたいに動かなかったのに、急に閃いた!みたいな顔でそこらの石を拾った。
なんでしょうかその、リーナさんの拳サイズの石。
「スラ、これ重石にしよう」
おもし?
「スラは重心が定まってない。だからパンチが軽い」
あっ……あたしのパンチを分析してくれてたのか!ジョットさん、凄い!
「とりあえず、これ、かわり」
ぐいぐいと押してくるジョットさんの熱意に押し切られ、言われた通りにデカめの石を体の中に取り込んだ。
パンチを繰り出す方の逆側に石を配置し、パンチを繰り出してみる。
あ、確かになんか、パンチしやすいかも。体が浮かないから、パンチだけがちゃんと打ち出されてる感じするもん。
でもこれって、強くジャンプする時に足場にググッと力かけるのに似た感覚じゃない?
そっか、その状態でパンチする部分だけを突き出せば、今より重いパンチがだせるのかも。
「スラ、これも」
考えてたら、さらに小ぶりな石まで追加された。これはパンチする方に仕込めっていうけど、ちょっと、さすがに多すぎない?
アルマさんの薬草が傷ついちゃったらどうするのよ……!




