あたしだって戦える!
その一瞬に間合いをあっという間に詰めたゴブリンウォーリアが剣を振り下ろしてくる。
その剣を、アルマさんは杖で受け止めた。
ガキッ、と硬質な音がする。どうやらアルマさんの杖には中に金属が仕込まれてるみたいで、ゴブリンウォーリアの剣でぶった切られる事もなく、金属が擦れる嫌な音を発しながら持ち堪えている。
すごい、アルマさん。
……って思ったけど、よく考えたらこのゴブリンウォーリアは、さっき剣士に力比べで勝って深手を負わせたんだったじゃない!
剣士より断然細い腕のアルマさんが、そう長い事持ち堪えられるわけがない。
今なら。
アルマさんと力比べしてる今なら。
腕の力も意識もそっちに行ってて体の方はガラ空きだ。
今、チャンスなんじゃない?
あたしは、全身にありったけの力を込めて、アルマさんの体を思いっきり蹴った。
あたしの体が、猛烈な勢いでゴブリンウォーリアの体の中心を射抜く。
硬い鎧に阻まれて、致命傷には至らなかったかも知れないけど、それでもゴブリンウォーリアの体は大きく後ろに吹っ飛んだ。
あたしの体ももちろん跳ね返って宙に舞う。
「スラちゃん!」
アルマさんが慌ててキャッチしてくれる。
「大丈夫か!」
大丈夫、自慢のプルプルボディだもん、あたしの方はノーダメージ! それよりも、アルマさんが無事で良かった。
あたしの無事を確認して、ほっと息を吐いたアルマさんは「また危ない真似して!出てきちゃダメだって言っただろ!」と、目を吊り上げて怒っている。
でも、そんなのこっちのセリフだよ。さっきのは絶対、アルマさんの方が危なかった。
あんなに危険な状況で、まだ成功するかも怪しい水鉄砲に全てを託すなんてできなかった。これまで何千回と跳ねてきただけに、体当たりの方が絶対勝率が高かったんだもん。
「大丈夫だから、大人しく入ってなさい!」
アルマさんに厳しく言われたあげくに懐に押し込まれたけど、あたしは今の体当たりで少しだけ自信がついてしまった。
あたしだって、必死になってチャンスをうまく捕まえられたら、あんなにおっきくて強いゴブリンウォーリアなんて敵にも、一矢報いることが出来るんだって分かったから。
アルマさんの懐から覗いて見れば、ゴブリンウォーリアは頭を二、三度ゆるく振りながら起き上がるところだった。
立ち上がった途端にこっちを憎悪を込めたギラギラした目で睨んだかと思うと、奇声を上げ、剣を振り上げる。もうその目にはアルマさん以外映っていないようだった。
それでもアルマさんは微動だにしない。
迫ってくるゴブリンウォーリアが、目の前で呆気なくくずおれる。ゴブリンウォーリアを背後から仕留めたのは、やっぱり剣士だった。




