虐殺
「ギギャアアア!」
「グガッ」
「グゲエエエエッ」
奇妙な悲鳴をあげながら、煤にまみれ、あちこち焼け焦げたゴブリン達がわらわらと巣から飛び出てきた。
それを、さっきの火魔法を唱えた人が無表情に切り捨てていく。あんなに凄い魔法を使えるのに、剣の腕前も凄いだなんて、なんかズルいんだけど。
聞けばこの中ではただ一人、Bランクなんだって。あれより上がいるなんて、あたしから見たらもう悪夢みたいで想像もしたくない。
だってほら、なんかもうゴブリンが可哀相になるくらいの虐殺っぷりじゃない。
生々しい火傷と切り傷が刻まれた小さな体が、巣の前で折り重なるように積み上がっていく。
怖くってプルプル震えていたら、アルマさんがそっと懐を押さえてくれた。その温かさになんだかとっても安らぐ気がする。それだけで勇気が湧いてくるのって、ホント不思議。
「さあ、行こう。炎は奥までは到達していない筈だ」
「ああ、ゴブリンを纏めあげてるヤツがいるなら、奥で守りを固めてる筈だもんな」
アルマさんが一歩動けば、触発されたように剣士が歩を進める。
そして、一番先にゴブリンの巣である狭い洞窟に入っていったのは、やっぱりあのBランクの冒険者だった。
それにしても、いやはやもうどれだけ居るの、ゴブリン。
この前来た時からここまでで、絶対100匹以上やっつけたと思うの。アルマさんとあのBランク冒険者の魔法で跡形すら残ってないヤツも多いと思うし。
腰をかがめて歩いていくと、無数に広がる脇道からゴブリン達が襲いかかってくる。アリの巣みたいに入り組んだ洞窟はいったいどこまで繋がっているのかさえ定かじゃなかった。
今は一番大きな道を選んで、ただひたすらに進んでいる情況だ。
前に群がる敵は、Bランクさんがバッサバッサと斬って行く。大剣は背の鞘に納めてしまって、頼りなげな小さなナイフで戦ってるというのに、戦闘力がなんら衰えてないみたいなのが恐ろしい。
脇道からのゴブリンは、脇と後方を堅める冒険者達が仕留めるわけだけど……意外にも、活躍していたのは武闘家さんと盗賊のリーナさんだった。
「ちくしょう!俺もぜってぇナイフ系買う!」
悔しそうに叫んでる剣士さんは案の定、いつもよりは動きにくいらしい。
「まあまあ、予想通りだろ?」
「うるせぇ!ショボい水鉄砲チマチマ撃ってるお前には慰められたくねぇっつの」
「効率的と言って欲しいね」
緊張感がない感じするけど、結構な数をちゃんと倒してるのはさすがだと思う。
それにしてもアルマさんの魔法、水魔法なのかな。
確かに効率的にゴブリンを倒してると思うけど……体のど真ん中だけを狙って撃ち抜いてるみたい。他は無傷なのに、簡単に死んじゃうの。
あれって、ゴブリンの核みたいなのを撃ち抜いてるのかなあ。
そう考えて、あたしは急にドキドキしてきた。
なんとなく、なんとなくだけど、あの『水鉄砲』、工夫すればあたしにも出来るんじゃない!?




