決意の日
一人でいじいじしていたら、アルマさんに「おいで」と手招きされる。
ああ、だからその「おいで」は危険なんだってば。
言われるがままウキウキと駆け寄ってしまう自分がうらめしい。今は全力でいじけていたというのに!
「スライムってやっぱり、他の魔物を倒すと能力値が上がるのかな?」
ポヨポヨと近づけば、アルマさんに真面目な顔で尋ねられる。
でも、そんな事聞かれたって困っちゃうよ。だって、あたしだって初めて強くなったんだもん。何が原因かなんて分からない。
仕方なく体を右に傾げれば「そっか、分からないんだ……じゃあ、スライムだけに何かを吸収したら能力値が上がるとかは?」と尋ねられる。
ごめんなさい……ぶっちゃけ全然分からないの。
今までは草しか食べてないし、昨日は逆にお肉も食べてみたしアシャムキャットの血も浴びちゃったし、夜も皆が色々勧めてくるから何食べたか分からないくらいなんだもん。
そのせいかもっても思えるし、アルマさんに言われたみたいにゴブリンを倒したからかもっても思える。
あたしはますます体を右に傾けた。
「ふふっ、体が地面につきそうだよ。全然分からないって意味かな」
笑われてしまった……。どうやら悩み過ぎて、傾げた体が地面につきそうになってたみたい。
ああ、せっかく尋ねてくれたのに、何の役にも立てなくってごめんなさい。
シュンとしていたら、アルマさんは「そんなに落ち込まないで、これから確かめていけばいいさ」って笑ってくれた。
アルマさんの笑顔に少しホッとしたあたしを、武闘家の武骨な手が摘まみあげる。
「スラ、これからも一緒に来るなら、強くなれ」
えっ……
「アルマもずっとは庇えない」
そう言われて、あたしは核がキュウっと縮む思いだった。
そうだよ、当たり前だ。
あたしだって昨日、アルマさんの手がさりげなくあたしを庇ってるのを申し訳なく思ってたんじゃない。
なのに何をのほほんと。
あたしって、ばかだ。
武闘家の言葉に全面的に賛同したあたしは、決意の証に何度も何度もジャンプした。
あたし……頑張る!
あたしの決意のジャンプを見て、アルマさんは「分かった分かった、分かったから」って笑ってるけど、あたし、本当に本気だよ?
「うん、じゃあ一緒に頑張ろう。人間もね、筋力トレーニングしたり食事を変えたり、実戦を重ねたりすることで強くなるんだ。『強くなる方法』が分かれば効率よく訓練することが出来るから、まずはそれを探そうか」
アルマさんの言葉に、あたしは大きく跳びはねた。