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殺される!……からの?

……殺される。

その言葉しか浮かばなかった。



アシャムキャットを瞬殺したのは、もっともっとタチが悪い『人間』で。

さらにいうなら、ギラギラ光る巨大な剣を軽々と振り回す、野蛮な『冒険者』だった。



完全にアウトだ。だってこいつらは、食うためじゃなく、殺すためにあたし達を殺すんだ。


スライムかよ

シケてやがる

初心者の経験値稼ぎにゃいいんじゃないか?



バカにしたみたいに笑いながら、たくさんの仲間達をゲームでもするみたいに次々と殺していく恐ろしい光景を何度見ただろう。



アシャムキャットを軽々と屠った剣士の周りに、わらわらと仲間達がやってくる。


あたしは絶望に震えた。



「ちょっと、弱い者イジメは止めなさいよ?血まみれじゃないの」


「バーカ、助けてやったんだっつうの、ありゃあアシャムキャットの血だ。スライムのくせにちっちぇの庇ってたからさ、漢気あるじゃん」


「へえ、かっこいいね」


「死なせるには惜しい」



……え?


思わぬ会話の方向性に、思わず見上げれば。

仲間の一人が急に座り込んで顔を近づけてきた。さっき「へえ、かっこいいね」って、言ってくれた人だ。



黒縁のメガネをかけた人だった。剣士に比べたらヒョロっとしていてローブと杖を纏っているところを見るに、彼はきっと魔法を使う系の人なんだろう。



「よく頑張ったね。はい、これご褒美」



なんと彼は薬草をあたしに落としてくれたんだ。


傷ついた体は猛烈に薬草を欲していて、最初の一枚で核が、二枚めでゼリー部分がみるみるうちに回復した。残りまで全部食べ尽くせばこの疲労感も全て回復しそうだけど、そんなものはちょっと休めばなんとかなる。


あたしは残った薬草から、そっと離れた。



ありがとう、まさか人間に情けをかけて貰えるなんて思った事もなかったよ。

十分回復したから、残りは返す。


だって、薬草なんてこの広い草原でも滅多に出会えない貴重品だって、毎日草を食べまくっているあたしだからこそ、本当に良くわかってるから。



「?……まさか、返してくれるの?」



彼は、私の意図をわかってくれたようだった。

「そうです」って言いたいけど、あいにくあたしには声帯がないもんだから、お返事はできないの。仕方なくプルプルっと体を動かしてみた。



「な、漢気あるだろ?」


「なんか可愛い」


「スライムとはいえ立派なもんだ」



さっきの剣士とその仲間達の声が頭上から降ってくる。一方目の前のたぶん魔術師さんは、びっくりしたみたいにまんまるな目をしてあたしをじっと見ている。


そして、破顔した。



「いいヤツだなあ」



にっこり笑ったまま、なんとあたしの体をよしよしと撫でたではないか!

人間に!

まさか人間に褒められてナデナデされる日が来ようとは。



あまりに予想外の事態に、あたしの体はピーン!と硬直してしまった。


プルプルボディが信条のスライム属にあるまじき失態である。

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