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お説教の時間です

こうやって落ち着いて見るとよく分かる。身を寄せ合って震えているのは、まだ若い……子供と言ってもいいくらいの冒険者達だった。あたしが言うのもなんだけど、ヒヨっ子冒険者って感じなんだろうなあ。


よっぽど怖かったんだろう、お互いに抱きしめ合って泣きじゃくっている。逃げ延びた今になって恐怖が襲ってきたのかも知れない。



「大丈夫よ。二人とも少し水を飲んで、それだけで少しは落ち着くから」



リーナさんが、ヒック、ヒックとしゃくり上げる戦士の女の子の背中をゆっくりとさすりながら、少しだけ水を飲ませる。ゴブリンに連れさられる寸前だったんだから、怯えてて当然だよね。


タオルを渡してまずは彼女の気持ちを落ちつかせる一方で、軽鎧の子にも水を飲ませて、リーナさんは本当に甲斐甲斐しく世話をしていた。


あ……軽鎧の子は男の子だったんだ、細身の彼は体つきだけでは男女の別が分からなかった。優しげだけど頼りない…まだまだ子供の顔。


胡座に腕組みしたままその様子を睨んでいた剣士は、やっと二人が落ち着きを取り戻してほうっと大きく息をついたのを見て、おもむろに口を開いた。



「で?お前達、ランクは?」



ランクって、冒険者達の強さ?みたいなのを表す言葉だよね、多分。草原にくる冒険者達がよく口にしてるもの。



「D……です」


「なんであの場にいた。この近辺は今、Cランク以上しか入れない筈だ」


「ギルドで言われなかった?通達があった筈だけど」



あまりにも怖い剣士の雰囲気に、リーナさんがちょっとだけ助け船を出す。



「言われ……ました」


「じゃあ何であんなところに居た。ゴブリンくらいなら自分達でもいけるとでも思ったか?」



剣士の口調は何処までも厳しい。でもきっと図星だったんだろう、ヒヨっ子冒険者達はすっかりうなだれてしまった。



「名を上げようと思ったんだろうが、実力もないくせに粋がられちゃ迷惑だ」


「ギルドが通達を出すのは、それだけ危険度が高いってことよ」


「それに、今みたいに勝手されちゃあ、依頼を受けて討伐に向かったパーティーまで危険に巻き込む事もある。お前らのせいで、ウチの魔術師は死にかけた」



やっと頬に赤みがさしてたヒヨっ子ちゃん達、もう青くなっちゃってる。


可哀想だけど、剣士の言うことはもっともだと思うし、あたしだってもし魔術師さんが死んじゃってたらこんなに冷静にヒヨっ子ちゃん達を見守っていられたか分かんないもんなあ。



「………っ」



声もなく、ヒヨっ子ちゃん達の眼からまた大粒の涙が溢れだす。



「二度と勝手な真似をするな」


「す……すみません……でした……!」



ボロ泣きながら謝るヒヨっ子ちゃん達に「説教は以上だ」と剣士が立ち上がる。



「飯は食わせてやるから休んでろ」


「そうね、傷だらけですもの。でもあいにくウチの魔術師は今魔力切れだから、明日まで待ってね」



剣士はぶっきらぼうに、リーナさんは優しくヒヨっ子ちゃん達に語りかける。


明日ってことは、明日になったら魔術師さんはまた魔法を唱えるんだろうか。


あんなに真っ青なのに。

あんなに冷たい手をしてるのに。


無理、させたくないなあ……。



あたしは迷った末……宝物の薬草を、ヒヨっ子ちゃん達の前に差し出した。

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