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帝国の剣  作者: 0343
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パーティ結成

 黄金の楓亭に戻り全員を招集し、今後の方針を話すと共にクラウスに偉大なる大地の盾を、エリーに聖銀の槌鉾を渡す。


「クラウスにはパーティの守りの要になってもらう。エリーはそのメイスで力を活かして欲しい」


 シンが力と言うとエリーは複雑な表情を見せたが、渡された聖銀の槌鉾を見たとたんにうっとりとした表情に変わった。

 クラウスには更に黒鉄鉱製のロングソードを渡す、これは魔法武器では無いが品質はグンターのお墨付きの品である。


「こ、これを頂いてもいいんですか? キラキラ光って凄い綺麗で、これで殴るなんて勿体無い気がする」


 エリーは聖銀の槌鉾から目が離せないでいる。

 レオナがそれを見て私にはという目で見て来たので、レオナは装備が揃ってるから無いと告げると、肩を落とし耳の角度も若干下がり気味にして落胆していた。

少し悪い気がしたが、レオナの持つロングソードのモーントシャインは魔法武器で、しかも一級品であるし着ているワイバーンレザーの鎧はこれもまた魔法防具では無いが一級品である。

 これらに勝る品は早々お目には掛かれないので、今は我慢してもらおう。


 クラウスは与えられた盾と剣を身に着けるとしばらく呆然としていた。

 自分が憧れていた騎士になった気がして気分は最高潮に高揚している。

 激しく鼓動する心臓とともに顔に赤みが差し、口元にはだらしない笑みがこぼれ出している。

 カイルの方を見るとその視線に気が付いたカイルが、腰の刀、岩切を自慢げに見せて来る。

 それを見て二人同時に笑い出す。

 エリーがメイスから目を離せないまま、口調だけは恐る恐ると言った感じに聞いて来る。


「でも、これ……凄く高いんじゃ……」


 その言葉を聞いてクラウスとカイルも動きが止まり、互いの武具を見つめ出す。

 シンは三人を安心させるために笑いながらあっけらかんとした様子で軽く受け流す。


「気にするなよ、先行投資ってやつだ。これから迷宮でガンガン稼げばいいだけさ、明日からは今渡した武具を使って訓練しよう。後、今までの訓練に加えてパーティの連携の訓練も始めようと思う」


 シンの言葉に三人の顔が引き締まり、やる気に満ちた眼差しがそれぞれの武具に注がれていく。


 「それと、明日の午後は鎧を買いに行くから勉強はお休みにする。こらクラウス、嬉しそうな顔をするんじゃない、その分今日これからがっつりとやるんだからな」


 束の間の喜びから一瞬で絶望に変わってげんなりとした顔をするクラウスを、皆で笑う声が宿に響く。

 シンはその様子を見て、いいパーティになる予感をひしひしと感じていた。


---


 あっという間に日が経ち、迷宮に挑むため準備期間は終わりを告げた。

 基礎体力の底上げ、戦闘訓練、連携の確認、装備の用意と出来うる限りの準備を整えて来たパーティは出発の時を迎えていた。

 だが、ひとつだけ決めなくてはならないことがある。

 それはパーティの名前、暁の先駆者や新緑の風のようなパーティの呼称である。

 これはギルドに依頼を出したり、迷宮での活動に必要不可欠のものであった。


 「というわけで、パーティの名前を考えて欲しい。俺はこれから最後のメンバーの準備を手伝いに行くので皆で話し合って決めてくれ、これが決まらないとギルドにパーティで依頼が出せなかったりと不便なので頼んだぞ」


 シンはあえて名前を自分では付けなかった。

 シン個人のパーティではなく自分のパーティだと思えるように皆の話し合いで付けて貰おうと思ったからであり、わざと席を外すことにしたのだった。

 夕刻まで最後のメンバーと一緒に過ごし、各種の調整を済ませて宿に戻ると皆がシンを待っていた。


 「師匠、決まりました! パーティの名前は碧き焔に決まりました、どうでしょうか?」


 シンはどんな名前でも受け入れる気でいたが、その名前にした理由は知りたかった。

 

「どういう意味でその名前にしたんだ?」


「師匠が前に教えてくれた炎の一番熱い場所の色は先端の青色と、僕たちを鍛えてくれた師匠とレオナさんの瞳の色から取って名付けたんです」


「そうか、よし決まりだな! パーティ碧き焔の結成だ、今日はパーッと騒ぐとするか!」


 翌日からする予定の迷宮探索は更にその翌日へと延期された。

 調子に乗ったカイルとクラウスが酒を飲んで二日酔いになってしまったせいである。


---


 迷宮攻略におけるシンの装備はポーターではなく冒険者としての装備に変わっている。

腰に刀の天国丸を差し、背にグレートソードの死の旋風を背負い、鎧はストーンヘッドバッファローの革のジャケットの上からスケイルメイルの黒竜の幻影を着込み、一番上からバルチャーベアの外套を被る。

 投げナイフのホルスターをたすき掛けし、雑貨や食料、水筒などの入ったカバンを肩から掛けている。


 レオナの装備は、腰にロングソードのモーントシャイン、鎧はワイバーンレザーの皮鎧を着てケイブウルフ皮で作られたの外套を被り、背負い鞄をしょっている。

 予備武器としてシンから渡された黒鉄鉱のナイフを装備している。


 カイルは腰に岩切、ロックリザードの皮を使って作られた革鎧を着こみ、レオナと同じくケイブウルフの外套を被り背負い鞄を背負っている。

 予備武器は父の形見の短剣を装備している。


 クラウスは黒鉄鉱製のロングソード、偉大なる大地の盾に体はカイルと同じ装備でロックリザードの革鎧、ケイブウルフの外套、背負い鞄である。

 予備武器に小ぶりの片手斧を選んだ。


 エリーは聖銀の槌鉾、反対の手に小型のバックラーを括りつけている。

 体は他の二人と同じでやはりロックリザードの革鎧、ケイブウルフの外套、背負い鞄を背負い、予備武器は今までずっと使って来た短刀を選んだ。


シンのスケイルメイルの黒竜の幻影は消音の魔法が掛けられている。

 他のメンバーの鎧は全員が革鎧でおとは出ない。

 迷宮探索では、音がうるさいチェインメイルやスケイルメイル、プレートメイルの類は禁忌に近く、冒険者の主装備は基本的に革鎧が推奨されていた。

 狭い迷宮内では五月蠅い金属音は反響して遠くまで響き、敵を呼び寄せてしまう可能性があるからで、本当は防御力の高い金属製鎧を着たくても着ることが出来ないのであった。

 これは迷宮の中だけの話で、音を気にする必要のない戦場などでは、当たり前のように金属製鎧が主流として使われている。


 鞄の中には、保存食、水筒、松明の他に血止めのオトギリソウの葉をはじめとする各種薬草類、地図、ロープ、予備の鞄、火打石などの雑貨が詰まっている。


 最後の仲間はポーターで、基本は五人で戦うことになる。

 隊列は先頭がシン、右側衛がクラウス、左側衛がカイル、中央にエリーとポーター、後衛がレオナとなる。

 最後のポーターの仲間は前々から決まっているとシンは言うが、前日になっても会わせるどころか名前さえ教えてくれない。

 だが、シンがこれ程自信を持って言うのだからと皆はあまり心配はしていなかったのだが……


---


 迷宮に潜る日の当日、シンは最後のメンバーを迎えに行くと言って迷宮の入口方向ではなく何故か牧場の方へと歩いて行く。

 皆の顔にもしかしてと不安がよぎるが、これまでシンを信じて来たのだから最後まで信じて見ようと、黙って後を着いて行く。


「では、紹介します。ポーターのサクラさんです。みんな拍手!」


 誇らしげに龍馬のサクラが一歩前に出て、低いうなり声を上げる。

 それを見てレオナに眉間に手を当て俯き、エリーは笑い転げ、カイルはやっぱりといった顔をし、クラウスは呆れていた。


「師匠、サクラは龍馬じゃないか……」


「龍馬をポーターとしてはいけないとは聞いてないから大丈夫だろ。それにサクラは夜目が効くし匂いにも敏感だ、いい索敵要員にもなるはずだ。荷物も一杯積めるし最高のポーターだぞ」


「それはそうだけど、入口の守衛が何と言うか……」


「大丈夫だって、俺を信じろ。それより昨日と今朝教えた事は忘れてないな? 初めての迷宮だ気を張って行こう」


 そう言ってシンはサクラと共に迷宮の入口へと歩いて行く。

 その後をパーティメンバーは気の抜けたような顔をして着いて行くが、迷宮の入口が見えた途端、まるで別人のように気合いの漲った表情を浮かべる。

 入口付近にたむろしている者たちの視線を浴びながら、パーティ碧き焔は初めての迷宮探索に挑もうとしていた。

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