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帝国の剣  作者: 0343
44/461

第二層へ

ちょっとだけいつもより早めに投稿します。

 翌朝、暁の先駆者に指定された集合場所に行くと八人の屈強な男たちがシンを待っていた。

 若干引緊張しながら挨拶をすると、前回のパーティとは違いフランクな感じで返事をされて肩すかしを喰らった。

 パーティ暁の先駆者は七人パーティであとの一人はシンと同じ荷物持ポーターちだった。

 リーダーの名前はハンク、青い瞳をしブロンドの髪を短く刈り上げた二十代前半の気さくな男で、他のメンバーも前パーティのイアンの栄光のようにポーターを軽んじたりはしなかった。

 シンと同じくポーターの男は、グラントと言い四十代後半で頭は剃り上げてスキンヘッドにしている。

 聞けば以前は冒険者だったが、歳をとり仲間が引退してしまいパーティを解散。

 だが彼は迷宮に潜ることが好きで、潜りたいがためにポーターになった変人だと自分で言って笑っていた。

 流石に年齢的衰えを感じたので冒険者として潜るのは辞めたらしい。


---


 暁の先駆者の面々とシンが挨拶を交わしているのを遠くから忌々しげに見つめる男たちがいる。


「おい、ポール、あいつだろ? 確かにいい鎧着ていやがる。身包み剥がせばいい金にはなりそうだが、暁の先駆者が相手じゃちとキツイぜ?」


 ポールは眉間に皺を寄せ厳しい顔をしている。


「わかっている。だが正式に加わったわけじゃねぇみたいだから次の機会を待つさ。久しぶりの金づるだ逃がしゃしねぇよ」


---


 ポーターとしてのシンの装備はストーンヘッドバッファローの革のジャケットの上にスケイルアーマーの黒竜の幻影を着、新たに買った投げナイフを収納している革の襷を掛け、その上からヴァルチャーベアの外套を羽織っている。

 腰には愛刀、天国丸と黒鉄鉱製のナイフを佩び、肩から皮のカバンを掛け、その中に食料その他を入れている。

 背中には背負子しょいこを背負うため、大剣の死の旋風は宿に置いて来てある。


「グラントさん、シンに色々と先輩ポーターとして教えてやって下さい」


 ハンクの言動を見ているとグラントにある一定の敬意を払っているようだった。


「任された! シン、お前を一人前のポーターにしてやるからな、覚えることはたくさんあるがどれも生き抜くために重要な事だからしっかり覚えろよ!」


 そう言ってバンバンと力強くシンの肩を叩く。

 メンバーの一人、名前はヨーヘンという赤髪のでそばかすの多い愛嬌のある男が気さくに話しかけて来る。


「シンは一層は潜ったことがあるんだよな、どんな敵に会った?」


 前回はスケルトン、ケイヴウルフ、ケイブバット、マーダーバニー、キラーエイプに遭遇したことを伝える。


「一層の大抵の敵には会っているんだな、しかしキラーエイプに会ってパーティ全滅とは運が悪かったな。あとは、そうだなぁケイブバイパーくらいだな注意するのは……こいつは普通の蝮なんだが当然毒がある。ケイヴバットばかりに気を取られているとうっかり踏んで噛まれることがあるんだ。上だけでなく下も注意して歩くんだぞ」


 忠告に感謝を述べ、早速言われた通りに上下に注意して歩く。

 隊列は前衛が二人、左右に二人ずつ、真ん中にポーター二人、後衛が一人という隊形で進んでいく。

 松明の数は全部で五本、前に一本、左右に一本ずつ、真ん中に一本、後ろに一本と十分な明るさを保っていた。


「シン、迷宮では松明を使え、ランタンでは駄目だ、ランタンのが嵩張らず、油を足せばずっと使える利点はあるが、この迷宮では松明のがいい。この迷宮にはスライムがいるんだが、天井から落ちて襲ってくることがある。松明だと弱点の火の熱を察知して落ちてこないが、ランタンだと落ちて来るんだよ。だから嵩張るが迷宮では松明のがいい、いざとなれば松明は武器にもなるからな」


 早速グラントが迷宮のイロハを教えてくれる、感謝しながら聞いていると今度はグラントはシンを褒めた。


「シン、お前は良く分かっている。武器は予備も用意しなきゃダメだ、その点お前は剣と大型ナイフ、投げナイフとばっちりだ。お前カールスハウゼンに来る前は何やってたんだ? 立ち振る舞いから行って農民じゃないだろう?」


 傭兵をやっていたと言うと、周囲からもやっぱりなとか装備の質から貴族の子弟かと思っていたんだがとか色々な呟きが聞こえる。


「その外套の毛皮、バルチャーベアか? 結構値が張っただろう?」


 右を守るハーベイと言う槍使いが話しかけて来たので、ルーアルト王国のアリュー村での話をするとハーベイだけでなくパーティ全員が驚いた顔をする。


「おいおい、二人で倒したってのか、本当かよ! 吹かしじゃねぇんだな? じゃあその鎧はどうなんだ? 業物に見えるが……」


 これもガラント帝国での話をすると、皆黙ってしまう。


「おい、お前とんでもない奴だったんだな……その鎧、下手すると国宝クラスだぞ…………」


 グラントが驚きと呆れが混ざった感じで話しかける。


「いや、ただ運や巡り合わせが良かっただけだ。実際紙一重の戦いも多かったし……それに迷宮は傭兵とは勝手が違う。単純な戦闘なら未だしも探索など色々と覚えることは多い。グラントさん、改めてよろしくお願いします」


「お、おう……そうだな、何も戦闘だけが迷宮探索の全てじゃないもんな……わかった! 任せとけ!」


 そう言ってまたシンの肩をバンバン叩く。

 それを見てパーティに流れていた雰囲気も和らいだ。

 リーダーのハンクも冗談交じりで場を和ます。


「そうそう、でも俺たちも冒険者としてのプライドがあるからな、シンにだけいい恰好をさせるわけにはいかないぜ。だが、もしもの時にはあてにするからな、そのときはよろしく頼む」


 暁の先駆者は現在四層を攻略中とのことだった。

 普段はポーターはグラント一人なのだが、今回ポーターを二人にしたのはギルドの依頼をこなすのに必要だったからである。

 今回は二層に生えてるマンイータートラップという人食い植物のつると三層のギガントードの毒腺がターゲット、その他も金になる物はなるべく持ち帰りたいためポーターを増やしたそうだ。

 一層を適度な緊張感を保ちつつ進んで行く。

 敵の密度が低いのか、それとも誰かが通った後なのか敵と遭遇せずに奥まで進むことが出来たが、もう少しで二層への階段という所で敵と遭遇する。


「前方に敵影、おそらくスケルトン。数は三体、武装は不明、撃破して階段に駆け込むぞ!」


 全員の了解の声を聴いてからパーティはスケルトンへと突撃する。

 前衛の最初の一撃で二体が頭をたたき割られ倒される、その後間髪を置かずに右側衛のハーベイが槍の石突で三体目の頭蓋骨を突き壊す。

 見事な連携と手際の良さにシンは驚きやはり四層まで潜ってる実力者なだけはあると感心する。

 あっという間に三体のスケルトンは撃破され、そのままパーティは階段へとなだれ込んだ。


「スケルトンって何か素材とか落としたりするのか? この前のパーティで骨の破片を拾わされたんだが……」


 階段を降りながら質問すると、パーティから笑い声が起こる。


「あははは、精々持ってる武器くらいだね。それもスケルトンが持ってるような武器は錆びていたり、壊れているのが多いから金にはならないよ。それにしてもそのパーティは無知で愚かだな、どうせ手当たり次第拾わせたんだろう? 金になる物はギルドの掲示板を見ればわかるのになぁ、シンお前も戻ったら目を通した方がいいぞ」


 どうやら前のパーティに無駄な事をやらされてたらしいとわかると腹が立ってくるが、自分も掲示板の情報を見落としていたことを反省する。


「さて、シンは二層初めてだから説明するよ。今回二層での目的はマンイータートラップという人食い植物の蔓。蔓を踏むと巻きついて凄い力で中央の口に放り込まれるから注意してくれ。口には牙が生えていて喰われたらタダじゃ済まないからな、当然蔓じゃなくて口やそのまわりを踏んでも食いついて来るから気を付けて。

二層は蟲の魔物が多いんだ、アイアンビートルとかアサシンマンティスとかジャイアントセンチピードなどが特に要注意だ。

まず、アイアンビートルはとにかく硬い。倒すには関節を狙うか、頭を鈍器なんかで引っぱたいて気絶させてからひっくり返して柔らかい腹を攻撃するのが有効だ。尖った角による突撃に落ち着いて対処すればあとは問題ない。

アサシンマンティスは巨大なカマキリだ。鎌は物凄く切れ味が鋭い、腕や首など簡単に切り落とされるから十分に注意してくれ。待ち伏せ型の魔物で音を立てずに襲い掛かってくる強敵だ、天井に張り付いてることもあるから上にも注意を払ってくれ。

ジャイアントセンチピードは毒のある大ムカデだ、噛まれると毒液を注入されてしまうから絶対に噛まれないように。噛まれると熱が出て患部が腫れ上がる程度の毒だが、噛まれた場所が悪いと最悪死ぬ。

それと昆虫系の魔物は頭を潰さないと中々死なないし、頭を潰してもしばらく暴れまわったりするので注意すること。あとはその時に教えるよ、この迷宮はここからが本番だよ」


 リーダーのハンクの説明を聞き緊張の汗が滲み出る。

 ここからが本番か……気合いを入れるシンと暁の先駆者は迷宮第二層へと足を踏み入れた。







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