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帝国の剣  作者: 0343
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ギルド

 ギルドの中は思っていたより広く、壁には掲示板のようなものがあり、そこに依頼の内容などを書いたメモの様な物が張ってある。

 質の悪い紙に書いてあるもの、千切れた羊皮紙に書いてあるものなどまちまちである。

 シンはまず説明を聞こうと中年の男がいる受付へと進んだ。


「いらっしゃい、何か用かい?」


 中年の受付は気だるげに対応する。


「こんにちは、ギルドを利用するのが初めてで……」


「ああ、よそから来たんだろ、掲示板の見かたを説明する。上に数字が書いてある、一が日雇い、二が長期雇用、三が調達、四が荒事だ。あとは受けたい依頼の紙を受付に持って来ればいい。」


 さっさとあっちへ行けと言わんばかりの態度に腹が立つが、気を落ち着かせて掲示板を見に行く。

 まず日雇いの一番の掲示板を見る。

 殆ど紙が貼っておらず、早々に諦めて二番を見る。

 長期雇用の方もあまり残っていない。

 隣の三番を見るが、その内容の殆どが商人達の取引でありシンではどうにもならない。


「結局、これしかないんだよなぁ……」


 一人ごちながら四番の掲示板を見ると、酒場の用心棒から傭兵まで多種多様の依頼の紙が貼ってある。

 シンが掲示板を見ていると、後ろから声を掛けられる。


「そこの君、仕事を探してるのか? 人に感謝されてやりがいのあるいい仕事があるぞ。これだが、どうだ?」


 声を掛けて来た職員が持ってきた紙をみると案の定、荒事の定番の傭兵だった。

 内容は、賊退治。朝晩の食事支給、手柄により報酬増額有りと書かれていた。

 シンは少し悩んだ後、詳しく話を聞くことにした。


「最近ソシエテ王国から、大勢の難民が賊と化して北方辺境領を荒らしまわっているのは知っているかい? そりゃ北の方は惨いもんらしくてさ、そうならないように東方辺境伯、つまりここの領主様が領内の賊の討伐隊を組織する事にしたんだ。普通の傭兵と違って、領主様が後ろについてるからその点は安心だよ。どうだい? 給金は応相談、おそらく腕を見てから決めるんだろう。腕に自信があるなら是非受けるべきだね。傭兵でこれほどの好条件はなかなかないよ、定員になり次第募集終了だから受けるならすぐに指定の場所に行ったほうがいいよ」


 シンは迷った、確かに領主の後ろ盾があれば給金未払いとかは無いだろう。

 だがまた人を殺すのかと思うと流石に気分は沈む。

 他に取り得があればいいのだが、この世界で手に職が無いズブの素人を雇ってくれるような所はないだろう。

 結局はこの依頼を受けざるを得ない。


「わかりました、早速指定されてる場所に向かいます。ありがとうございました」


 シンは職員に礼を言うと、指定の場所の第三城壁西門わきの空き地へと向かった。



---



 第三城壁に西門わきに行くとガラの悪そうな連中が列をなしていたのですぐにここだとわかった。

 数人の騎士が順番に荒くれ共を捌いていく。

 シンは列の最後尾に並んだ。

 シンの順番が来た。

 騎士はシンを上から下まで一通り見ると、二百四十三と書かれた割符を渡した。


「合格だ、右に並んで指示を待て」


 シンはいきなり合格と言われ何が何だかわからず、騎士に問いかけた。


「え? 合格って何がですか?」


「お前、傭兵やりに来たんだろ? 見た所健康だし獲物も持ってる。だから合格だよ」


 そんな適当でいいのか、と思いながら言われた通りに右に並ぶと前の男が話しかけて来た。


「まずは合格おめでとさん、見ろ、左に並ばされたやつらは傭兵不適格のやつらさ。まぁ見た目弱そうだと弾かれるし、病気持ちなんかも弾かれるのさ。そしてここからは強さの確認、騎士共と模擬戦をしてその結果で給金が決まるって寸法だ」


「なるほど、勝てば給金が高くなるのか?」


「勝てればな、健闘を祈るぜ」


 まぁ金を払う以上は実力を見たいと思うのも当然か。

 札の番号は二百四十三、この人数全員やるのかな? こりゃ結構時間掛かりそうだな。


 二時間以上待ってやっとシンの番が来る。

 後ろを見ると七人並んでいたので二百五十人が定員だったのだろう。

 結構ギリギリだったなと思いながら、試験官の騎士に札を渡す。


「よし二百四十三番、そこの木剣で立ち会うんだ。勝てばより高い給金を約束する、では行け」


 言われた通りに木剣を手に取る。刀より重いので具合を確かめるために二度程素振りをする。


「準備はいいか? 始めるぞ」


 そう言ったと同時に騎士が襲いかかって来た。

 上段からの鋭い振りに風切り音が唸る。

 シンは大きく引いて距離を取ると攻防に対応しやすい中段、相手の眉間に剣先を向ける正眼の構えを取った。

 その姿を見て騎士は一瞬眉を顰めるが、気合いと共にまたしても上段から振り下ろしてきた。

 シンは相手に主導権を握られ続けていたので後の先を取って強く踏み込み抜き胴を仕掛ける。


 ガツンとした鎧に木剣が当たる感触がしたが、その衝撃の強さから僅かに浅く感じられた。


「そこまで!二百四十三番、お前を日に銀貨五枚で雇おう」


 試験官の声が響くと辺り一面騒めきだした。

 傭兵の相場がわからないシンはそれが高いのかどうかわからなかったが、傭兵の契約書の羊皮紙にサインをする。


「よし、次の者、前へ」


 シンは木剣を返却し、次の試合を見ているとかなり小柄な少年が戦っていた。

 十四,五歳位か、まだ体も出来上がってない年なのに傭兵なんて出来るのだろうか? 地球の現代でも少年兵はいたから有りなのかも知れないな。

 などと考えながら見ていると、流石に力では勝負にならないからか素早く左右に動きながら脛を狙っていた。

 だが騎士には通用せず、攻めあぐねているところに剣を合わされてその衝撃で木剣を落としてしまい負けた。


 少年は一応合格したようだが、シンと目が合うと不機嫌そうに目を細めてどこかへ行ってしまった。

 その後も試合を見ていたが特に驚くような出来事も無く終わり、試験官から明後日の朝出発するので用意して集まるように言われ解散させられた。

 シンは宿に戻りながら物騒な未来の事は頭の隅に追いやって、明日一日は観光でもしておこうか? と意外と呑気な事を考えていた。








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