おすすめ動画
「動画を見終わったときに出て来る絵がいくつも有るんだけど、これはいったいなんなんだ?」
「『あなたへのおすすめ動画』ですね」
「おすすめ動画?」
「今見た動画に関連する動画の事ですね。話の内容が似てるとか、出演者が同じとか、製作者が同じとか、何かしらの繋がりのある動画の事です」
「なるほど。ちょっと見てみていいか?」
「どうぞどうぞ。ご遠慮なさらず」
関連動画を見てみることにしたラザレス。
それは今までの絵が動く動画と違い、なにやら呪術的な文字の読み方や書き方解説する動画であった。
見ている最中はあまりにも難解で理解しがたい内容であったが、その動画を見終わると同時に呪術的な文字が読めるようになった。
再び、ラザレスの頭の中に声が響く。
──ラザレスは『おぼえよう! あいうえお』を既読。
──既読効果によりスキル『日本語習得基礎:LV1 ひらがな』を得ました。
「この動画を見たら、何かを覚えた気がする」
「どれどれ、わたくしがスキルを確認してみましょう。ほう、これは凄いですね」
グラウクスは小さな頭でうなづき感心している。
「呪術言語の『日本語』を覚えたみたいですね」
「呪術言語は『日本語』と言うのか」
改めて動画のタイトルを見てみると、今まで読めなかったタイトルが読めるようになっていた。
タイトルの読み方に間違いが無ければ「おぼえよう! あいうえお」と言う動画だ。
『あいうえお』と言うものが何をさすのかは解らないが、それを解説した動画だったと言うことが解る。
「メアリーも覚えられたか?」
「はい、ご主人様。わたくしも『あいうえお』と言うものをおぼえて、少し読めるようになったみたいです」
「それは良かった」
「今度の関連動画には他の『おぼえよう』も有りますね。全く読めない文字ですが」
「ちょっと気になるな。見てみるか」
「はいっ!」
今度の動画はかなり高度な内容だったが、動画を見終わった時点で急に読めるようになった。
頭の中に声が響く。
──ラザレスは『おぼえようかん字 小学一年生』を既読。
──既読効果によりスキル『漢字習得:LV1 小学一年生』を得ました。
今度は『おぼえようかん字 小学一年生』だった。
習得したスキルを見ると『漢字習得:LV1 小学一年生』となっている。
どうやら今の動画を見た事で、魔導言語のさらなる高度な文字を覚えたらしい。
「よし! メアリー どんどん見るぞ!」
「はい! ご主人様。がんばりましょう!」
僕たちは立て続けに関連動画を見まくった。
すると動画の殆どを字幕無しで見れるようになってた。
窓の外を見るともう空が白みかけてる時間で僅かに明るくなっていた。
動画を見終わると、頭の中に声が響く。
──ラザレスは『現代国語三』を既読。
──既読効果によりスキル『漢字習得:LV12 高校三年生』『日本語文法習得:LV12 高校三年生』を得ました。
「今見たのは『現代国語三』で習得したのが『漢字習得:LV12 高校三年生』『日本語文法習得 高校三年生』だな」
「ずいぶん覚えましたね」
「書も同じ言語で書かれてるみたいだし、読めるか解らないが少し読んでみるか」
「はい。書架から何冊か持ってきますね」
そう言ってメアリーが部屋を出て行き、ワゴンに書を積んで戻ってきたのは十分後だった。
ワゴンには150冊位の書が積まれていた。
「お待たせしました。ご主人様」
「ずいぶんと持ってきたな」
「書架にある初級魔導書、初級秘技書を全て持ってきました」
「よし、読んでみるか」
「はい」
ラザレスは本の表紙に手を載せる。
すると頭の中に動画を見た時と同じく声が響く。
──ラザレスは『初級魔導書:ファイア』を既読。
──既読効果によりスキル『初級魔法:ファイア LV1』を取得しました。
「うお! 表紙を触っただけで中身を見てないのに何か覚えた」
「勇者様、新しいスキルを習得していますね。今覚えたのは『ファイア』の呪文です」
「まじか!」
本のタイトルを見ると『初級魔導書:ファイア』と書かれていた。
ファイアは先ほど動画を見る前に使おうとして打てなかった呪文だ。
「よし、今度こそ撃ってみる」
メアリーとグラウクスが見守る中、ラザレスは窓から見える庭に生える立ち木を目掛けて魔法を詠唱した。
「ファイヤ!」
すると手から人の頭ほどの巨大な火球飛び出す。
見た事ないサイズのファイヤだった。
火球は庭に生える木に着弾。
大爆発。
庭の半径30m程を業火で焼き尽くした。
「すげー! 僕、始めて魔法使えた!」
「やりましたね! ご主人様」
「勇者様! 素晴らしいです! それに今まで見たことの無い威力のファイアでしたね」
これがラザレスの快進撃が始まる最初の一歩だった。