読み聞かせ
書を手に取ったグラウクスが胸を張り声高に言う。
「神機グラウクス、これより勇者様の為に、書を読まさせていただきます! しっかりとその内容をお心にお刻みください」
「頼む!」
フクロウはページをめくり書を読み始めた
「むかっ!
むっ!
む!
むか!
しー!」
「おい、全然読めてないじゃないか!」
「大丈夫でございます。これぐらいの魔導書、神機である私が読めないわけが……、
あるっ!
あっ!
ある!」
「ダメだだな。これは。期待はずれだな。全く」
「うぉぉぉー! 勇者様見捨てないで!!!!」
「あれだけ偉そうに言ってて全然読めなかったな」
「あれは……そう! 目の調子が悪くて読めなかったのでございます」
「ホントかよ? 今まで目の事なんて一言も言ってなかったよ?」
「本当です! 本当! 今度は神器として本気を出してやらさせてもらいます。少々お待ちを……」
「メガネ掛けても読めなかったら帰ってもらうからね」
「あーん! 帰れなんて言わないで下さい! だ、大丈夫です! このグラウクス、メガネなんて古臭いものなんて使いません。これです! これ!」
フクロウは石版のようなものを取り出した。
「これは異世界の最新技術で作られました『タブレット』と言うものです」
「たぶれっと?」
「はい。異世界の魔導技術の結晶の魔道具でございます」
「ほー。この石板がねー」
「これさえあれば、全知全能知識の泉でございます」
「書のこともわかるのか?」
「ええ、当然でございます」
「どうつかうの? 思いっきり叩けばいいのかな? それとも投げるの?」
「なに言ってるんですか! そんな乱暴に扱ったら壊れてしまいます! そーっと指でなぞるだけでいいんです。試しに、さきほど読んだ入門魔導書のタイトルを入れてください」
「たいとる?」
「表紙に書いてある名前です」
「ほう」
「これをですね、タブレットの画面のここの枠に、指でなぞってこうやって、こうやって手書きでそっくりに入力するのです」
「ほう、タイトルに書かれている文字とおんなじ様な文字が『たぶれっと』に浮かび上がったな」
「ここまで出来たら書の文字の横にあるここの『検索』と書いてある四角いボタンを押すのです」
「なるほど……押してみるぞ」
すると魔導書の中の絵と似た絵がタブレットの中に浮かび上がった。
そしてそれが動き出した。
「なんだこれは! 絵が動き出したぞ! しかも何やら異世界語で喋ってるし!」
「それが『動画』と言うものです」
「す、すごいですね」
食い入るようにタブレットを見つめるメアリー。
「動画か、確かにこれは凄い! でも、話してる言葉がさっぱり解らないな」
「わからないですね」
メアリーも話してる言葉が解らないようだ。
「それならご安心を。画面の下のほうにある『字幕』と書かれているボタンを押してみてください」
「これか。うぉ! これは凄い。なんか画面の下のほうに僕が読める文字で話の内容が表示されるぞ?」
「これなら私にも話の内容を理解出来ます」
画面には普段使ってる文字で
──むかーしむかーし、あるところにおじいさんおばあさんは住んでいました。
と表示された。
「どうです? これなら書の内容を理解する事は出来ませんか?」
「出来る出来る! これなら凄く簡単だ!」
ラザレスとメアリーは書の内容と全く同じ内容の『動画』と呼ばれるものを五分で見終わった。
どこからともなくラザレスの頭の中に声が響く。
──ラザレスは『入門魔導書:むかしばなし いっすんぼうし』を既読。
──既読効果により経験値1000を得ました。
──ラザレスの経験値が上限を超えましたのでレベルアップします。
──ラザレスのレベルは1から4に上昇しました。
経験値が1000増えレベルが上がったとの声がラザレスの頭の中に響いた。