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騎士になりたい男

 元貴族のセムスは騎士になろうとしていた。

 

 貴族クローライト家の後継争いに負けて逃げる様に家を去ったセムス。

 当然貴族と言う階級は剥奪され平民落ちした。

 

 騎士になろうといくつかの国を訪れたのの平民落ちした彼に対しての扱いは冷たいものだった。

 何処の国に行っても家柄を重視する騎士団で平民の彼を雇ってくれるところは無かった。


「くそー! 今回も面接にたどり着く前に門前払いかよ! やはり上級平民じゃないと騎士にもなれないのか! あの時勝手に家を出なければ上級平民ぐらいの階級は貰えたかもしれねーのに、何故俺は逃げた?」


 だが過ぎたこと。

 今更後悔してもどうにもならなかった。

 

 平民が上級平民になる道は狭かった。

 

 冒険者ギルドで武功をあげる事。

 大商人となり多額の納税をする事。


 その二つしかなかった。


「俺に出来る事と言えば戦うことぐらいしかねーから上級平民になるには冒険者ギルドで冒険者ランクをSランクまで上げるしか道は無いが、冒険者ギルドでSランクまで上げるのには一体どれだけの時間が掛かるんだ?」

 

 そうぼやきながら酒を飲み、今日の冒険者ギルドの清算票を見つめる。

 清算票にはEランククエストの討伐報酬として四万ゴルダと40ランクポイントと書かれていた。

 

 冒険者ギルドのランクは誰でもなれるFランクから始まり、

 Eランク昇格必要ランクポイント 1,000

 Dランク昇格必要ランクポイント 2,000

 Cランク昇格必要ランクポイント 4,000

 Bランク昇格必要ランクポイント 8,000

 Aランク昇格必要ランクポイント16,000

 Sランク昇格必要ランクポイント32,000

 が必要である。

 

 しかもランク昇格の度にランクポイントは0にリセットされる。

 つまりSランクになる為には合計63,000ポイントも必要なのである。

 今日一日掛けてやったEランクの護衛クエストだと1,600回もこなさないとならない。

 休み無く続けて四年ちょっと掛かる計算だ。

 

 だが実際には毎日クエストにありつける訳も無く、クエストを受けられるのは二日に一回がいいところだ。

 

「十年か……」


 十年もこんな生活を続けないといけないと思うと気が遠くなる。

 

「俺は一生冒険者のままで腐って終わるのかな?」

 

 セムスはそんな事を考えながらやけ酒を飲む毎日であった。

 

 

 * * * * *

 

 

 そんな中、とある街の酒場で噂を聞いた。

 

『武闘会で勝てば騎士になれる!』

 

 なにやら武闘会で勝つだけで貴族になれるという噂だった。

 信じがたい事であったが、藁にもすがる思いで受付に行き話を聞く。

 噂は真実であった。

 勝つだけで上級平民を通り越し貴族になれる。

 しかも負けたとしても試合で健闘すれば騎士になれる! 

 

「正に俺の為に用意された武闘会だ!」

 

 そう思うセムスであった。


「騎士道競技会の出場手続きをたのむ!」

「お客さん、本気で参加されるつもりですか?」

「そうじゃなきゃわざわざこんなとこまで足を運ばないだろ!」

「冷やかしでは無いようですね。では参加費の三百万ゴルダをいただきます」

「え!?」

「三百万ゴルダです」

「え!?? 三百ゴルダじゃなく?」

「はい、三百万!ゴルダです」


 参加費の三百万ゴルダも支払えなかったセムスは泣く泣く騎士道競技会への参加申し込みを取り下げるのであった。

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