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次期頭首選出試合①

 遂に貴族の名門クローライト家の次期当主を決定する試合が行われることになった。

 まだ朝靄の残る早朝の中庭にて次期当主になる権利を持った三人が集まる。

 試合の立会人はクローライト家頭首のオルス・クローライトと、近隣の領主三人。

 観戦者は屋敷と耕地の使用人百二十人ほどが集まった。

 立会人と観戦者は魔法の覚えのあるメイドや執事達が張った安全結界の中で観戦している。

 

 頭首オルス・クローライトより試合のスケジュールが発表された。

 

 第一試合 長男ファルス vs 次男セムス

 第二試合 第一試合勝者 vs 三男ラザレス

 

 明らかに長男ファルスが次期頭首になることを想定した試合スケジュールである。

 実際ファルスが次期頭首になることを立会人に披露するための試合であった。

 実質的な試合は第一試合のセムス戦で、第二試合はファルスの強さを見せ付けるためのエキシビジョン的な扱いの試合であるのは明らかである。

 明らかにラザレスはかませ犬的な扱いだ。

 

 だがラザレスは本気でこの試合に勝とうとしていた。

 メイドのメアリーと結婚するために!

 一昨日に炎耐性を取り、昨日は炎の達人級魔導書を読んだので攻撃力だけなら長男ファルスと同レベル程度には達しているはずとラザレスは考えている。

 むしろ炎の完全耐性が有る分ラザレスの方が有利であろう。

 ラザレスはそう考えていた。

 

 

 頭首のオルス・クローライトから試合のルールが説明される。

 

 1.試合は対戦相手が負けを認める迄行われる。

 2.貴族として恥ずかしくない試合をすること。

 3.試合中不慮の事故で死亡してしまっても負けとする。

 4.勝者には三つの願いを叶える事とする。

 5.試合中に逃亡した場合は我家の名誉を貶めたとして奴隷落ちとする。


 何処の家でもこのルールと大差ないルールで次期頭首の選出試合が行われている。

 

 ルール4の三つの願いと言うものがあるが実際には

 ・勝者が次期当主となる

 ・敗者を平民落ちとする

 ・敗者を家から追放する

 を宣言することが慣わしで決まっていて正確に言うと

 

 4.勝者を次期頭首とし、敗者を追放する

 

 というルールだ。



 * * * * *


 第一試合のファルス vs セムス戦が始まった。

 

 対峙する二人。

 ファルスは余裕をもった表情をしている。

 だがセムスは明らかにうろたえた表情をしていた。

 

「兄者! これはどういう事なんだ?」

「何のことを言っておるのだ? 弟者よ」

「なんで魔導士の兄者が、鎧を着て剣と盾を持っているのかと聞いているんだ!」

「貴族の当主を決める試合に魔法で勝っても立会人に格好がつかないだろう」

「兄者は魔法しか使えなかったのでは無いのか!? 嘘を吐いたのか!? 貴族ともあろうものが! ゆるせん!!!」

「愚かな弟者よ。誰もこの俺が魔法しか使えないとは一言も言ってない」

「いや間違いなく聞いたぞ! 炎の達人級魔導書を読んでいると」

「炎の達人級魔導書を読んだのは事実だ。だが剣が使えるかとは一言も聞かれなかったので答えなかっただけだ」

「なんだと!?」

「それよりも弟者のその装備は一体なんなんだ? 剣を扱う者なのに鎧も着ずに炎耐性の魔導士向けの装備で固めたそのだらしない格好は? なんで剣士がローブなんて物を着てる?」

「これは兄者が炎魔法を使ってくると予想しての対策だ」

「相手の言うことを全て真に受けていたのでは貴族の当主としてやっていく事などは無理! さっさと負けを認めこの家から出て行くのだ!」

「まだ試合もしてないのに負けるわけにはいかねーよ。背中を見せたら貴族じゃねー!」

「いい心がけだ! なら、その身をもって我剣を受け止めよ!」

「望むところだ!」


 二人は剣を交え始めた。

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