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人牛エスケープ  作者: T-Wan
2/2

横浜駅脱出②

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「っくそぉぉぉ!!!!」


俺の手が少女に向かって伸びる。

少女も俺の方へ手を伸ばす。

ミノタウロスの拳が下降を始める。

少女と俺の手が結ばれる。

少女を思いっきり俺の方へ引っ張る。




ミノタウロスの拳は少女の右靴だけを掠め、吹き飛ばし、床を砕いた。


「…………っ!!!」


ギロリとミノタウロスが俺と少女を見る。

体を屈め、前傾姿勢になり、突進の体勢に入る。


「―――君!!こっちだ!!!」


俺の名前を呼ぶ士流の声に気付く。考えるよりも先に、士流のいる東横線の改札の向こう。ホームへの下り階段へと少女を抱えて走り出す。


1拍遅れてミノタウロスが突進を開始した。

背後に迫る走行音。揺れる大地。圧倒的な圧力が背後からやってくる。


「お お お お お お お お あぁ!!!」


紙一重の所で下り階段に入る。突進は軌道を変えられず、壁を砕き、破片が俺達に降り注ぐ。


「早く!!ホームに降りるんだ!!」


士流に促されるまま、俺は少女を抱えミノタウロスから逃げ出した。



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「ハァ、ハァ、ハァ…」


俺と士流の荒い息遣いだけが当たりに響く。ミノタウロスが追ってくる気配はない。一先ず撒けたようだ。


「おにーちゃん、ありがと」


少女がたどたどしい口調で俺に礼を言った。


「あ、あぁ…どういたしまして。怪我はない?」

「うん。でも、おにーちゃんが…」

「俺?」

「背中…」


見ると背中の1部が抉れて出血している。突進を避けきれなかったのだろう。


「大丈夫、かすり傷だよ」


少女を心配させまいと、咄嗟に嘘をついた。出血は止まらないし、痛みも増してきている。


「取り合えず、応急処置だけはしておこう」


俺の考えを悟ってくれたのか、士流がタオルを取りだし、傷口に当てる。


「っ!……ありがとな」

「いいよ、これくらい」


少女に聞こえないよう、小声で礼を言う。


「あれ?そういえば、士流さっき俺の名前…」


『ピーンポーンパーンポーン♪』


突然放送がなった。忘れもしない、ミノタウロスが出現したときに流れた時と同じものだ。


『今から2体目のミノタウロスを放ちます。場所は横浜市営地下鉄ブルーライン改札です。皆さん、お気をつけください』


「なっ…2体目だと!?」

「今回はペースが早いな…まずいぞ…」

「さっきの話が途中だったな…ここを出るにはどうすればいいんだ?それに、ミノタウロスは何体出てくるんだ?」

「4体だ」

「4体も…!?」

「この閉ざされた空間から出るには、空間を開く扉と、扉を開く鍵を見つけなければならないんだ」

「その手がかりは?」

「そう、その手がかりがわかるまでには、最低4体のミノタウロスが出現するまで耐えなければならないんだ」

「なんで4体なんだ?」

「それは…ま、そのうちわかるさ。今は安全に隠れられる場所を探そう」

「あ、あぁ…」


俺と士流は少女を連れて東横線ホームを後にした。



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赤い水滴がぽつり、ぽつりと落ちている。

水滴の道標は奥へ、奥へと続いてる。


ミノタウロスの足音も、奥へ、奥へと続いてる。

ニヤリ、とミノタウロスが笑った気がした。



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