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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第六章◆ 背信の半神少女
91/126

9 雪崩



 四ノ島の支配者、半神族。



 その起源はヒト族よりも古く、ヒト族が魔大陸からやって来るよりも昔からこの六大群島で暮らしていたという。



 彼らの崇める神は、自らの部族の始祖となる者。戦乙女族であれば、戦神ヴァルキリー。半人半馬族であれば、酒神ケンタウリア。主天使族であれば、神教護軍長ウリエル(ホシガミノクソギンチャク)

 そして、巨神族であれば、男神…クレイオス。





 そう、語り部サラから聞いた話だ。





 ウリエルと同系統の神力を持ち、≪気配察知≫に映らないその姿は、巨躯で見事な顎鬚を蓄え、老人とは思えぬほどの若々しい肉体を見せている。


 あの方は、間違いなく神。俺の推理が正しければ、巨神族の始祖、クレイオス様。





「そうじゃのぉ。」



 そして、またしても心を読んで応える系…。


「フォッフォッフォッ…。面白き男じゃな。流石、幾多の神と交わり、力を与えられし“この世ならざる者”…。」


 ああ…この流れは、「儂も儂も」で力を与える系だ。


 現世で直接神様にお会いするのは、竜王様以来2度目ではあるが、違和感もある。竜王様を見た黒竜(ヘイロン)は恐怖に怯えていたが、俺に仕える天馬は、勝手に顕現してクレイオス様に頭を垂れ、恭順の意を示していた。…おい、ドワーフの監視はどうした?


天馬(ペガサス)よ。この男に仕えておるならちょうど良い。こ奴を助け、この地に安寧をもたらして欲しいのだ。」


 ご老体の声に俺の背後で傅く天馬が深く頭を下げた。


「…お任せを。この方であればクレイオス様が与えし加護を持つ少年をお守り頂けるでしょう。」


 …ちょっと待て。なんか今の会話で一気にいろんなものが繋がったぞ。誘拐されたエルティスケースはクレイオス様の加護を持っていて、その力がカーテリーナ殿の言われる主と仰ぐべき特殊なスキル。そして俺はその少年を助ける役目!

 俺はチラリと天馬を睨んだ。天馬は軽く会釈する。…よろしくって意味か。


 そのやり取りを見たクレイオス様はカッカッカと笑った。


「面白き男よ。その顔は『できるけど嫌じゃ』と語っておるぞ。普通はそのようには思わぬものじゃがな。…ヘゼラサート様もさぞかし会うのを楽しみにしておろうぞ。」


 俺は、クレイオス様の言葉に食いついた。


「おまちを。今ヘゼラサート様の御名をお聞きしました。命神様は今いずこに…?」


 俺の問いに対し、急に洞穴内の空気が変わった。


 冷たい刃のような神力が洞穴内に充満し、青い光がクレイオス様の前に現れ、中から何かが姿を現した。クレイオス様も天馬もその姿に頭を垂れている。


(“この世ならざる者”よ。少しだけ話をさせてくれ。)


 そう言って青い光から姿を現した者は心にずしりと響く声を発した。


 全身が硬直する。体内にあるあらゆる魔力を奪われそうな感覚。立っていられなくなるほどの威圧感。星神様から感じた恐怖と同質のもの…。


 その姿は青い輝きのまま俺に語りかけた。


(故あって、この姿のままで話すことを許せ。本体はまだ封印されたままなのだ。)


 そう言って一旦言葉を切った後、クレイオス様に向きを変えた。


(長きにわたりこの祠にて神像の守護、大義である。あと少しで我も復活できよう。それまで今しばらく守護を頼む。)


 巨体の老人は恭しく頭をさげた。


(さて…。お前には数多の神が力を貸しておるが、我の力も得ている様じゃな?しかし我は記憶にはないが。)


 俺は素直に答えた。


「この地に来た時から持っておりました。…恐らくこの肉体の持ち主が元々持っていたのではないかと思っております。」


 青い光は俺をじっと見つめた。そしてニヤリと笑う。


(そうか…。あの時の赤子(・・)か。)


 不意に青い輝きが弱まり出した。


(む、これ以上は無理か。“この世ならざる者”よ。六ノ島に来るが良い。そこでお前の求めている全てが明らかになるであろう。それまで死なぬようこの精霊を渡しておく。好きに使うがよい)


 小さくなった青い光からまたもやスライムのような物体が飛び出し俺の肩に乗った。


(こ奴は命の精霊ホタル。…8大属性の中でも貴重な存在だ。大切に扱うが良い。)


 言い終ると同時に青い光ははじけ飛び、洞穴は元の薄暗い世界へと戻った。俺の肩でうにうにと動く青白い精霊と、いつまでも地面に膝を折るクレイオス様が残った。



 …いや、また何かアビリティを貰ったかもしれんが、見ないでおこう。それよりも、イーヴァルディの行方を追わなくては。


 俺がクレイオス様に一礼をして洞穴を出ようとしたとき、大きな地鳴りが起こった。


「な、なんだ!?地震か!?」


 クレイオスが訝しげな表情で俺を見つめいていたが、大きく息を吐いて俺を呼び止めた。


「本来は、神が下界の行う行為に手を出すことは禁じられておるが、儂の加護を持つ者への頼みごともある。1つだけ教えよう。」


 クレイオス様は小さな包み紙を取り出した。中には黒い粉が入っている。


「この粉はな、火の力で大きな爆発を起しよる。妖精族の者どもがこれをあちこちに埋めておった。」


 俺は戦慄した。あの粉は爆薬。どれほどの威力があるのかわからないが、この粉が担う役割は…。


「そうじゃ。これで奴らは人為的に雪崩を起しおった。」


 俺は即座に洞穴を出た。既に山の上から大量の雪が押し寄せており、俺は慌てて洞穴の中に戻った。


「クソッ!遅かった!こうなりゃ…。」



 俺は全身に力を込める。だが…。



「…また人外すぎる力を使い、神獣どもを呼び寄せるか?」


 ニヤニヤと笑みを浮かべてクレイオス様が俺がどう対応するのかを見ていた。


 そうだ。俺が本当に本気で武器を振るえば山ごと雪崩を吹き飛ばすことができる。…だが、それは神の命に抗う“人外”の使い方らしく、あっという間に神獣様に命を奪われる。

 ……よし、俺の命1つで多くの命が救われるなら…。


 そう考えて行動しようとした時、俺の喉仏に蟹ハサミが突き付けられた。


「その考え方、ぎるてぃ。」


 蟹のハサミに、俺の前世の世界の言葉のおかしな使い方…。ちょっと早すぎるんじゃないのか、【巨蟹獣】様?


「その考え方のままでは、この先は通さないんで。」


 口調からはまるで殺気は感じられないが突き付けられたハサミとその圧倒的なまでの神力に俺は身動き一つできない状況となった。

 一旦、力を抜く。


 大きく深呼吸する。



 頭を冷やし思考をやり直す。




 雪崩はもう麓に向けて駆け下っている。まずはドワーフ共を睨み付けている魔獣たちに連絡だ。


(黒竜!誰でもいい!ドワーフを一人連れてそこから脱出しろ!)


 次に氷狼'sに命令する。


(お前達の力で雪崩を凍らせてくれ。全部じゃなくていい。部分的に凍らせることで街への到達を遅らせて欲しい。)


 氷狼'sは一斉に洞穴を飛び出した。


 次はエフィとウルチだ。


(エフィ!今すぐ街の北東へ向かえ!俺もそこへ行く。ウルチ!竜人化してエフィを俺の指示する場所へ連れて行くんだ!)


 二人の慌ただしい返事が返ってくるが、それに応える間もなくフォンに話しかける。


(フォン!アレクトー達は今どこだ!?)


(…街の外を出たところです。)


(よし!そのまま尾行だ!後で俺も合流する!)


 次はカミラだ。


(カミラ!もう俺の変わり身は不要だ。そこに黒竜が来る予定だから、そいつが抱えてきたドワーフを縛り上げてサラと合流しろ!)


 そして俺は外へ出ようとした。


「…何をするつもり?」


【巨蟹獣】様が目を細めて俺を見やった。


「…雪崩の向きを変える。…少しだけ。」


 【巨蟹獣】が更に目を細めた。そして、ハサミを引込めた。


「いいでしょ。その程度なら。…でもこれで救国の英雄になるのは間違いないからね。」


 わかっています。


 そう込めて俺は一礼し、洞穴を飛び出した。


 天馬(ペガサス)に跨り、一気に山を駆け下りる。眼下には雪や木々を飲み込み白い雪しぶきを吹き上げながら山を下って行く雪崩が見える。

 俺は雪崩の到達する場所に先回りし、地面に降り立った。ほどなくエフィとウルチがやってきた。


「エフィ、あの雪崩が見えるな。今からあの雪崩の進行方向を少しだけずらす。そうすれば街の中心街はなんとか助かるはずだ。この斜面に沿ってありったけの≪土魔法≫で壁を作れ。」


 エフィは迫りくる雪崩に恐怖し、思考が停止していた。俺はエフィの頬を軽く叩き、振り向いたところで口づけをする。一瞬目を見張るが、すぐに我に返り、雪崩に対峙した。俺はエフィを後ろから抱き上げた。


「≪魔力操作≫でお前にバンバン魔力を送る。お前は何も気にせず全力で魔法をぶっ放せ!」


 エフィは一瞬だけ俺の顔を見て「うす」とだけ答えると、【雷爪の杖】を両手に持ち、目を閉じた。



 エフィの体内から魔力が湧きあがる。




 その量は俺でも驚くほど。





 そして、エフィはカッと目を見開き両手に持った杖をつきだした。




 ゴゴゴン!ゴゴゴン!




 地面を揺らすほどの轟音が鳴り響き、山の斜面が盛り上がる。その高さは10mくらいか。一気に盛り上がった山の斜面は軋みを見せるが、そこに更に≪土魔法≫で補強するように土が盛り上がる。

 二重三重にも盛り上り、強固な壁が出来上がった。


「エフィ!まだ足りない!こっちもだ!」


 俺は盛り上がった壁の斜め下を指さし、エフィに≪魔力操作≫で自分の魔力を流し込んだ。エフィは体をビクンと震わせたが、すぐに体制を整え一気に放出した。

 俺が差した地面がボコボコと盛り上がる。先の壁と合わさってその横幅が大きく広がった。


 これだけあれば、多少は角度が変わるだろう。



 そこに氷狼'sも到着し、氷で壁を補強し始めた。



 ドッゴォオオオオオン!!



 雪崩の第一波が到達した。氷で補強された壁が揺らぎを見せるが、その力に耐えた。雪崩なエフィの作った壁に進路を阻まれ、壁伝いに向きを変えた。


「やった!」


 思わずエフィも声をあげた。


 氷狼達が補強してくれたおかげもあるだろう。だが、エフィは巨大な質量をも押し返すほどの強固な物質を魔法で作り上げたのだ。



 この世界の魔法は衰退している。


 理由は、精霊を司る神様達が長きにわたりお隠れになっているからだとサラから聞いた。


 だから、今は魔法使いはほとんどいない。いても、俺や、カミラの様に熟練度は2ないし3程度。


 今エフィのスキルを鑑定すると、


 【エフィルディス】

  ≪水魔法.3≫

  ≪土魔法.5≫

  ≪樹魔法.1≫

  ≪雷魔法.2≫


 となっていた。


 これは、俺の魔力を受けたエフィが急激な成長をしたと思っていいのか?


 俺は黙ってエフィの頭を撫でる。

 気がつくと氷狼'sも俺の隣に座って頭を差し出していた。…撫でろということか。

 俺は、黙って氷狼's(フェンリルズ)の頭を1匹ずつ撫でていった。




 雪崩は少しだけ向きを変え、尾根伝いに流れていき、ステイピアの街に到達した。街の正面から城壁にぶつかるのではなく、斜めから撫でるような恰好で巨大な雪の塊が街の城壁にぶつかり、その衝撃は幾分か和らげられ、城壁は破壊されることなく、その質量から街を守りきった。


 サラとヨーコは、ファティナ男爵とフェルエル殿の護衛に終始しており、カミラと合流後も【巨蟹宮】の一室に篭って不測の事態に備えていた。そのカミラは黒竜から預かったドワーフを恥ずかしい恰好で縛り上げている。

 ウルチはエフィの大魔法を目の当たりにし、敬意を表して「ハイ・エルフ殿」と呼ぶ様になっていた。…いやウルチの方が強いんだからな。そのエフィは天狗になっている。そのうちその伸びた鼻をバッキバキにへし折ってやるから。


 俺はサラ達と合流し、捕えたドワーフを連れて、カーテリーナ殿に面会するために領主館に向かった。

 領主館では、全ての兵士が騎士風の礼をして俺を迎えた。…なにがあったのだろうか。謁見の間へ連れて行かれ、その理由が読めた。


 事前に俺が≪念話≫で行った報告で、内通者を捕えており、その者たちの裁きが終わったところだったようだ。

 うな垂れた女性騎士が引きずられて部屋を後にした。それを目で追っていると、壇上の女性騎士に声を掛けられた。


「救国の騎士よ。此度は重ね重ねお礼を申し上げる。」


 その声に反応し、カーテリーナ殿を見ると騎士の礼を俺に向けていた。周囲の兵士達も俺に礼をしている。

 俺は一夜にして有名になっていた。


 それは“この世ならざる者”にとってはとても怖いこと。


 だから、布石を置いておく。



「カーテリーナ殿。既に私は今上陛下より称号を頂く身。故に他種族から新たな称号を頂くわけにはまいりませぬ。我が一団がこの地に来た意味をもう一度お考え頂き、それにふさわしい返答を頂けることが、私にとって最高の礼となりましょう。」


 称号とか、爵位とか、二つ名は要らんぞ。実のある返答さえくれたらいい。そう伝えた。カーテリーナ殿は笑って肯いてくれた。…これで回避できたかどうかわからんが、とりあえずはよしとしておこう。


「…ところで。アンネローゼ殿は?」


 俺の質問にカーテリーナ殿は首を振った。

「彼女は、背信の罪で地下の牢獄に放り込んでおる。そして、クラーラも行方不明のままじゃ。」


 カーテリーナ殿が、自分の後任にと思っていたクラーラもこの混乱で行方不明に。その理由は最早明白。部族を裏切っていたに他ならない。俺は≪気配察知≫で街中を探してみたが、見つからなかった。


「…この混乱にまぎれ、街を抜け出した者がおります。…如何いたしましょうか。」


 俺の問いにカーテリーナ殿は周りに示すかのように怒気をみなぎらせた。


「アレクトーは我ら崇高なる半神族を裏切り、ここにいる妖精族の豚共と結託しておった。ここに巨神族(ティターン)族長代理のアレクトーは背信の罪により、死罪を言い渡す!見つけ次第刃を向けることを許可する!奴に組する者も同罪と見なす!」


 周りの騎士が一同に頭を下げた。




 半人半馬族の代表ウェイントと主天使族の代表クェルが俺に挨拶に来た。


「まさかヒト族に助けられることになろうとは…。いや、部族にこだわらず接することのできる貴公に敬意を表する。」


「貴公には借りができたと認識する。」


 二人は俺に会釈をした。これでアレクトー以外からは俺自身を認めて貰えたことになる。こうなると、四ノ島でも商業にいい影響を与えそうだ。



 俺は早々にその場を辞し、宿に戻った。




 フォンはまだ戻って来ていなかった。


 心配そうな顔をするサラを慰め、≪念話≫を使う。


(フォン、今どこにいる?)


 フォンからの返事は意外なモノだった。



 フォンはアレクトー一派を尾行し、オルフェンスの街へと向かう途中の森にいた。そしてその森には、様々な半神族が集結し、1000を超えていると。



 ステイピアに居を構える戦乙女族(ヴァルキリー)の人口は約10万人。このうち兵士として活動している人口は2000人。割合としてはそれほど高くない。だが、この2000人全員がアレクトー一派討伐の為に、出撃できるわけではない。

 街の防衛、要人の警護、その他もろもろを差し引けば最大でも1000人。更に今は先の雪崩対応に駆り出されている兵士もいるため、戦乙女族単独では500名くらいが限界だろう。


 俺はフォンにその場で待機するよう命じて、急いでカーテリーナ殿に≪念話≫を送った。カーテリーナ殿は至急領主館に来るよう言われ、もう一度サラとヨーコにここでの全般を頼んで、領主館へと向かった。


 領主館には既に半人半馬族(ケンタウルス)ウェイントと主天使族(ドミニオン)クェルがフル装備で待っており、部屋の中央に坐するカーテリーナ殿も甲冑を着こんでいた。


「ヒト族の勇者よ、待っておった。」


 …止めて、俺の事をいろんな呼び方するのは勘弁。


「今しがた、お二人に全てをお話したところじゃ。これより背信者アレクトー討伐を行うための会議を行う。エルバード殿にも加わって欲しい。」


 俺は恭しく頭を下げる。正直出たくないが、情報提供者は俺である以上、断るわけにはいかない。

 会議は各部族の代表3名と俺の9名で始まった。当然のごとく、巨神族はいない。街に残っていた巨神族は全員拘束されている。

 敵の拠点及びその兵力は俺からの情報でわかっている。だが、そこに何時誰がどれだけどのように投入するかだ。

 アレクトー派が集結している森には巨神族だけでなく他の部族もいる。当然、同族同士で対決することもあり得る。


「此度、アレクトーに組している者はいかなる理由であれ“背信者”として処罰することを宣言する。」


 カーテリーナ殿の言葉に俺以外の全員が肯いた。


「更にこの紛争終結後、私は族長を退き、ウェイパー卿に後任を委ねることを宣言する。」


 これには他の族長も驚きを隠せないようで何やら意見を言い始めた。だが、カーテリーナ殿の意志は固く、話も前に進まない為、一旦保留とし、具体的な作戦案に移った。






 作戦は決まった。


 戦乙女族、半人半馬族、主天使族で500ずつ兵を出す。

 戦乙女族が森の正面から、半人半馬族が森の後方から攻撃する。主天使族はオルフェンスの街を占拠し、退路を断つ。俺は遊撃隊として、先に森に潜入して攪乱を担当。

 例の破壊兵器は先の鎮圧行動で使用して冷却中のため、まだ使用はできないとのことだった。俺はホッとした。…あんなのがまた投入されたら、今度は俺も我慢できないと思っていたので胸をなでおろした。



 俺はカーテリーナ殿の許可を得て、地下牢にやってきた。



 こつこつと廊下を歩き、とある檻の前で足を止めた。

 裸の女性騎士が天井から両手を縛られて吊るされていた。全身殴られた跡があり、顔も以前の美しさのかけらも見当たらない。両手の指は全て逆方向の捻じ曲げられ、足の甲には太い釘が打ちつけられていた。


 俺は彼女の正面に立ち、じっとその姿を見つめた。彼女は気を失っているのか俺の様子に気づいてはいなかった。




 この後、奴隷の紋を刻まれるらしい。



 俺は彼女を鑑定した。


 【アンネローゼ】

 『属スキル』

  ≪命魔法.0≫

  ≪槍術≫

  ≪剣術≫

  ≪盾術≫

 『固有スキル』

  ≪十槍≫

  ≪戦乙女の誓い≫

 『呪い』


 …『呪い』の欄に≪魅了≫はなかった。



 だが、新たな呪いが掛けられるらしい。




 ≪背信の制約≫




 その効果は、戦乙女族としての能力を全て封印し、使用できなくなるものだそうだ。犯罪を犯した半神族は部族の能力を封印された状態で奴隷となる。そして、決して解放されることなく、最底辺の生活へと落とされるそうだ。


 故に、半神族の奴隷は生きる希望を失っている。


 故に、半神族の奴隷は国外に売られることもない。


 故に、半神族の奴隷には人権がない。




 アンネローゼは、その奴隷の世界へと足を踏み入れてしまった。



 半分は部族による運命で。

 半分は自らの意志で。




アンナ(・・・)……。」





 暫くアンネローゼをじっと見つめていたが、俺は彼女に向かって拳を突きだした。風がアンネローゼにまで届き、彼女の薄汚れてしまった髪をわずかに揺らした。





「…決めた。お前を俺の奴隷にする。それがお前を助ける道だ。」




 誰に聞かせるわけでもなく呟き、俺はその場を後にした。




主人公はボロボロのアンネローゼを見て決意をしました。

最後のヒロイン誕生の瞬間です。


次回はファティナ殿が無双します。

フォンが発情します。

エフィが決意します。

そして、アンナが奴隷になります。


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