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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第三章◆ 孤独の耳長少女
44/126

12 兄と妹

2話連続です


 朝。


 エメルダ嬢が3日ぶりに宿に戻ってきた。もう、そのまま伯爵の所に行ってても良かったんだけど。帰ってきて部屋に入るなり俺を呼び出して、肩を揉ませた。


 「お疲れのご様子ですが、ウチの奴隷たちにも按摩をやらせますよ。」


 「エルの奴隷だろ?…遠慮する。」


 どういう意味だ?いろいろな意味に捉えられるぞ。


 肩を揉みほぐしながらさりげなく≪心身回復≫を掛ける。直ぐにエメルダ嬢が振り向き、じろりと睨み付けた。


 「何かしただろう?」


 「え、ええ…。ちょっと。」


 「…。お前は一体、何者なんだ?」


 肩揉みは続けるように指示され、≪超振動≫で程よい振動を加えながら肩から背中にかけて順々に揉んでいく。


 「…何者なんでしょうねぇ。」


 曖昧な返事をして按摩を続ける。


 「今夜、エウレーン公爵の晩餐に呼ばれている。」


 俺は一瞬だけ手を止めたが直ぐに按摩を再開する。


 「また晩餐ですか?よくもまあ毎日…」


 「私の護衛にお前を連れて行く。父上からの命令だ。ナヴィスの同意もある。」


 俺はもう一度手を止めた。


 「エスコート役ですか?俺よりふさわしい騎士はいるでしょうに。」


 「裾持ちも1名随伴するようにとのことだ。」


 …意図が分かった。


 正直、行きたくない。なんでこのタイミングなんだろう。市はあと3日続くのに。


 「昨日の夜に、妖精族のドワーフ達が急きょ街を出て行ったんだが…何か知ってるか?」


 エメルダの質問は俺が何かしたかと勘繰っての質問だったろうが、その質問で俺は答えを得た。つまり、監視の目が緩まったので俺にコンタクトを取ってきたということか。ドワーフ達が出て行ったのはなんとなく俺が原因だと思う。だって、尾行していた奴を屠ってるんだもんな。でもそれだけで逃げる様に帰っちゃうのかな。理由はそれだけじゃないかもしれん。


 「エル?」


 黙り込んでいる俺にしびれを切らしたようにエメルダ嬢が問いかける。


 「あ、申し訳ありません。晩餐に呼ばれると聞いて舞い上がってしまい、何も聞いておりませんでした。」


 と、わかりやすいごまかし返事をする。エメルダ嬢は探るような目で睨み付けるが俺は鉄面皮でかわす。


 「…もういい、疲れは取れた。眠らせてくれ。」


 そう言ってベッドに横たわる。


 「お着替えをされた方が…」


 「じゃあ出て行ってくれ!」


 「はい、出ます。」


 俺は手が飛んでくる前に寝室を出て行く。…ここ、俺の寝室でもあるのに。


 寝室を出た俺は、今日の予定を組み直すためにソファに寝転んであれやこれやと考え始めた。




 朝食後、ナヴィス殿の下に向かってから俺の一日の仕事が始まるのだが、今日はナヴィス殿にまず呼び止められた。


 「エメルダ様から聞いておるか?」


 ナヴィス殿は手に取った壺を≪鑑定≫しながら俺に話しかけた。


 「晩餐のことですか?」


 「人選は?」


 「…エフィを連れていきます。」


 ふむ、と鼻息に近い返事をして作業にもどるナヴィス殿。ていうかエフィ以外の人選がありな訳ないでしょ?


 「こちらも準備が整いました。晩餐の後、エフィルディス様を連れて来なさい。」


 “準備”とは奴隷の首輪の事だ。特殊な金属が必要なため、準備が必要だったのだ。ようやくエフィの首に制約がはめられる。複雑な気分だ。


 「わかりました。エフィに伝えておきます。」


 俺は軽く会釈して次の作業場に移動しようとしたが、もう一度呼び止められた。袖から巾着袋のようなものを取り出し、俺に放り投げた。


 「エルバード殿の働きに対する給金です。前渡しで少し色を付けています。」


 袋を受け取った俺は中を見てびっくりする。金貨がたくさん入っている。いやいや、色つけ過ぎじゃないの?


 「今日の作業は結構です。市場で彼女に合う給仕服を探してやりなさい。」


 …このお金、お返ししたいです。明らかに恩の押し売りです。


 結局何も言えずナヴィス殿の宿を出て【双魚宮】に戻る。お早いお帰りに大喜びのサラだが、エメルダ嬢がまだ寝ているので静かにするよう注意する。そのあとソファに座ってフォンの入れてくれた白湯を一口飲む。


 「エフィ。」


 俺は暇そうにしているエフィを呼んだ。呼ばれたエフィはめんどくさそうにこっちへやってくる。


 「今晩、エメルダ様のエスコート役としてエウレーン公爵主催の晩餐に参加する。」


 エフィの顔が強張った。


 「…で?」


 「エメルダ様の裾持ち役として、お前を連れて行く。」


 エフィは表情も仕草も変えず黙っている。


 「その後はナヴィス殿の下で首輪をつける。」


 その言葉に周りがどよめいた。サラ、フォン、ベスタさんが三者三様の表情でエフィを見る。


 「…わかった。」


 以外に素直な返事に拍子抜けする。


 「そのほうが、妾を守りやすいのだろう?」


 「いろいろ文句を言われるかと思っていたが。」


 「…責任とれ。」


 「は?」


 「…わ、妾の唇を…ううう、奪ったのじゃ!奴隷になってやるから責任とれ!」


 恥ずかしさを紛らわすかのように大声を出すエフィ。


 「静かにしろ!エメルダ様が寝ておられるのだ!」


 一瞬静寂になる。だがエフィは取れ取れとしつこく続ける。


 「やかましい!責任とるかどうかはお前の今後の態度次第だ!」


 俺もカッとなって言い返した。



 寝室の扉が開く。中から手だけが出てきてチョイチョイと手招きした。




 俺は殴られることを覚悟して寝室に向かったよ。








 夕方になり、【双魚宮】に迎えの馬車が到着した。

 受付嬢がエメルダ嬢を呼びに部屋をノックする。俺が応対し、直ぐに行くことを受付嬢に伝えて一旦扉を閉めた。


 「エメルダ様、ご用意は出来ましたか?」


 寝室の扉が開きエメルダ嬢が出てくる。胸元がパッカァと開いた黄色いドレスに身を包んだエメルダ嬢が気恥ずかしそうにしている。



 うん、いい。



 あ、いや、ダメだダメだ。そんな目で見てはいけない。

 俺はエスコート役として、エフィは裾持ち役として、晩餐に出るんだ。しゃんとしなければ。

 俺はエメルダ嬢の手を取り、エフィがベスタさんに教えられたとおりにドレスの裾を持って部屋を出て行く。

 宿の前に止められた馬車へ向かい、入り口の扉を俺が開ける。エメルダ嬢が中に入る。その後ろをドレスの裾を持ってエフィが入る。最後に俺が入り扉を閉めた。

 馬車は動きだし、ガタガタと揺れる。3人とも無言だった。俺とエフィはともかく、エメルダ嬢は今回は事情も目的もわかっているようで、多分何を話していいのかわからないのだろう。

 終始無言のまま、馬車は晩餐の会場に到着したのか動きが止まった。御者の人が外から到着しましたと小声で話す。

 俺は立ち上がって、外から扉が開けられるのを待った。


 扉が開かれる。俺が一礼し、外に出てすぐ横に移動して手を差し出した。

 俺は黒のエスコート用のスーツに白い手袋をはめ、同じ黒の帽子を深めにかぶっている。似たような恰好の男は何人も周りにおり、一般的なエスコート役の恰好であるとわかってホッとする。

 俺の手をにぎり、中からエメルダ嬢が出てきた。周りから少しざわめきが上がる。まあ、肩書は伯爵の娘だからな。知っている人もいるだろうし、何よりも美人だし。

 そのエメルダ嬢のドレスを後ろから持ち上げながらエフィが馬車から出てくる。

 やや濃いめの緑の給仕服。髪はいつものボリューム感を持たせた髪型ではなく、まっすぐに梳いて後ろで束ねただけの質素な形。帽子を深くかぶり耳も帽子の中に仕舞いこんで見えないようにしている。表情は硬い。

 俺はにっこりとほほ笑むエメルダ嬢の手を取ったまま、会場となる建物に近づく。扉の前に居た男に、


 「ヤグナーン伯爵令嬢、エメルダ様でございます。本日のエウレーン公爵主催の晩餐に出席させて頂きます、どうかお通しを。」


 と挨拶する。男がエメルダ嬢を確認し、


 「ようこそお越しくださいました。」


 と深くお辞儀をして入り口の扉を開ける。


 貴族の慣習は面倒くさい。だが、今回はやらざるを得ない。俺は表情を変えずエメルダ嬢の手を取り中へと入って行った。





 非日常的な光景が目に入る。


 鮮やかな光源に色とりどりの花。


 煌びやかな衣装を纏う男女に豊かな香り。


 晩餐会が始まっているわけでもないのに既に酒を片手に談話が行われていた。


 「エメルダ様、どちらに向かわれますか?」


 できるだけ平静を装いエメルダ嬢に質問する。


 「…まず父上のもとへ。」


 ニコリともせず答えるエメルダ嬢。俺は≪気配察知≫を使って、ヤグナーン伯爵を探す。2階に通じる階段の途中で知らない赤い点と一緒にいるのを発見した。


 「こちらにございます。」


 俺は作り笑顔をしてエメルダ嬢を誘導する。俺の後ろにエメルダ嬢。更に後ろにエフィがついていく。

 途中で知らない男がエメルダ嬢に声を掛けてきた。


 「おお、これはこれはエメルダ姫。今日もご出席ですか。昨日も伯爵様と遅くまで臨席されていたときいておりましたが。お体の方は」


 「ご心配ありがとう。この通り丈夫だけが取り柄ですので。」


 男の言葉を遮って返答し、先へ進んで行く。俺とエフィが男に向かって一礼をしてエメルダ嬢についていく。


 本当に面倒くさい。


 「おお、エメルダ!」


 聞き覚えのある声がして、見上げると階段の上から伯爵が手を振っていた。俺たちは階段をしずしずと登り、公爵の下へ行く。


 あ~階段も2段飛ばししたい!


 最初に到着したエメルダ嬢が、ドレスの両脇を摘んで少し膝を曲げて体を沈ませる。貴族のお嬢様が宮中のパーティとかでやってるやつだ。その後ろで俺とエフィが一礼する。

 「うむ、エルバード殿も来てくれたか。」


 伯爵は顔を伏せたままのエフィをみやる。


 「息災でしたか。」


 微妙な言い回しでエフィに声を掛ける。


 「…お気遣いありがとうございます。過分なご配慮を頂き、ひとまず安堵できる場所を得られました。」




 …エフィ。




 本来であれば公爵の妹であるエフィの方が格式は上。しかし、エフィは顔を上げず敬語で伯爵に返答する。覚悟を決めた意思表示以外の何物でもない。


 伯爵はエフィの態度をじっと見つめていたが、やがて視線を遠くに移す。


 「わかりました。エメルダ、エウレーン公爵が控室におられる。ご挨拶をして来なさい。」


 エメルダ嬢の顔が強張った。一瞬だけエフィを見やる。どうしたものかと立ち尽くしている。


 「エメルダ様、大丈夫ですよ。きっとお会いすることを待ち望んでおられます。」


 俺はエメルダ様にだけわかる言葉で促す。エメルダ嬢は俺を見た。俺は無言で肯く。


 「…わ、わかった。父上、行って来ます。」


 緊張の色が隠せず、落ち着きのない表情で階段をそのまま上る。2階の一番奥の部屋が公爵の控室だ。晩餐が始まる時間まで待機されておられる。俺たちはゆっくりとその部屋に向かって歩いていく。


 扉の前には騎士が立っていた。


 「ヤグナーン伯爵の娘、エメルダです。公爵様にご挨拶に伺いました。…お取次ぎを。」


 声が震えていた。騎士はちょっと小首をかしげたが、確認のために控室に入り、しばらくしてにこやかな顔で迎え入れられた。


 「どうぞ、エメルダ様。2人の従者もご一緒でかまわないとのことなので。」


 扉を大きく開き俺たちを中に通す。





 控室はそこそこの広さを持っており、中には数人のエルフや、人間があちこちで会話をしていた。部屋の奥のテーブルにひときわ鮮やかなマントを纏った男が立っていた。後ろを向いているので顔はわからない。だが≪気配察知≫で誰なのかを確認していた。

 エメルダ嬢がゆっくりとその男に近づく。あと5~6歩の位置で止まり、声を掛ける。


 声に気づき男は振り返った。






 そこに居るのがエメルダ嬢だとわかると緊張した表情に変わる。エメルダは膝を曲げ、俺とエフィは相手の顔を見ないように下を向いて挨拶する。


 「…エメルダ姫、ようこそ。今日は従者を連れてご出席ですか。」


 笑顔を作りできるだけ柔らかい声でエメルダ嬢に話しかける。だが緊張しているのがわかる。


 「本日はご出席される方も多いと聞きました故、父上にお願いをして見栄を張りました。」


 「ハッハッハッ。ではお父上とは別行動で晩餐を楽しまれるわけですな。お気を付け下され、今日は若い男どもおります。エメルダ姫に近づこうとする者もおりましょうぞ。」

 「…この従者がうまく取り計らってくれるでしょう。」


 エメルダ嬢は少しだけ後ろを振り向き俺の方を見た。公爵は俺に目を向ける。俺は舌を向いたままだ。


 「…ふむ。そこの従者、面をあげよ。」


 俺はかろうじて公爵が視界に入る程度に顔を上げる。公爵は俺の顔をじっと見ていた。

 「雰囲気は少し違う気がするが、貴公なのか?」


 主語のない質問。エフィを助けた時のことを言っているのだろう。


 「はい。」


 「名は?」


 「エルバードと申します。」


 「去る大商人の雇われ戦士とは貴公のことか?」


 「…はい。」


 俺の身長は180以上ある。だがエウレーン公爵もそれに負けぬほどの背がある。こういう場では美丈夫と言っていいだろう。その公爵が俺を値踏みするように見ている。


 「貴公にはいろいろと世話になったな。背中の痛みがまだ残っておる。」


 「制御の聞かぬ力にございます。今のうちに成敗されては?」


 「だが助かる命があるのだ。」


 「…あの時の“はぐれエルフ”はここに居ます。」


 その返事を受け、公爵はもう一人の従者に目を向けた。公爵は明らかに驚いていた。これほどの目立つ場に堂々といると思っていなかったようだ。エフィはまだ下を向いていた。


 「…そうか。今はどうしておる?」


 「…はい。身寄りもなく、身分を証明するものもないので、私が預かっております。晩餐の後にナヴィス様の下にて手続きを行います。」


 エフィにはまだ首輪がない。だがその首輪がない姿は今日で最後だった。



 公爵はじっとエフィを見た。



 「……面をあげよ。」


 公爵の声にエフィはゆっくりと顔を上げた。



とうとう公爵主催の晩餐に呼ばれることになりました。

エフィは自分の気持ちをどう兄に伝えるのでしょうか。

作者自身、できるだけ丁寧に書こうと思い2話に分割しました。


次話はその後編になります。


ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

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