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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第一章◆ 忌み子の奴隷少女
4/126

1 異世界からの洗礼

02/28 読みやすくする為の文章の見直しをしました。サブタイトルを変えました。

04/12 誤字修正

09/26 誤字修正 会話文のインデント修正


 やや冷たい風が俺の頬に当たるのを感じる……。


 俺は真っ暗闇から明かりの見える状態になった。


 いや、目が覚めた、というべきか。


 眼球だけを左右に動かし、あたりを見回して様子を伺う。


 星空が見える。上向きに寝ている体勢だからか。すぐそばでパチパチと弾ける音がする。たき火の音だな。そちらに顔を向けるとやや熱い感覚が頬を覆う。


 どうやら今は夜で、屋外に上向きに寝転んでいる状態らしい。


「坊ちゃん。気が付きましたか」


 そう声をかけられ、声のする方向を見た。

 頭の禿げあがった男がたき火の前に座っている。火の様子を見ながら、俺の顔色をうかがっている。


 う~ん、だれだ、このおっさんは?


「急に倒れられたのでびっくりしましたよ。もう何ともないですか?」


 どうやら、俺は急に倒れて意識を失ったらしい。

 この見ず知らずのおっさんがそれを見かけて、看病してくれたのか?

 ……いや、俺のことを「坊ちゃん」と呼んだことから、俺のことを多少は知っていると思われる。


 しかし、ここはどこだ?この禿のおっさんは誰だ?坊ちゃん?


 わからないことだらけだ。


 ……たしか、神様と情熱的なキ……いや力をもらった後、どこかに瞬間移動して、一瞬弟に遭った気がして、暗転して……。


 俺は、目を閉じて覚えていることと想像力で整理する。


 ……結論は、



 この世界にいる誰かに転移して、その魂を乗っ取った……。



 が、一番納得できる。

 その誰かは、禿げ散らかしたおっさんと歩いているときに魂を乗っ取られて気を失い、おっさんに介抱されていた。

 と想定しておこう。……あっているはずだ。


「坊ちゃん、大丈夫ですかい?まだ、どこか悪いんですかい?」


 おっさんが顔を近づけてきた。闇夜に燃えるたき火の明かりがおっさんの顔に揺らめいて反射するとかなり怖い。しかも、知らない顔のおっさんだし。


「だ、大丈夫だ……。ここは?」


 俺はかろうじて声に出した。

 おっさんは顔を近づけるのをやめ、濡らした布を取り出し、俺の額に乗せた。


 ちょっと気持ちいい。


「ここはヤーボの村まで半日程度のあたりですよ。今日中に村まで行く予定でしたが、坊ちゃんが急に倒れられたので、その場で火をおこしました。今日はここで一晩明かしましょう。私がこのまま火の番をしますので、坊ちゃんは寝てください。」


 おっさんは優しく俺に話しかける。


 いくつかの情報を得た。

 俺はヤーボの村へ行く途中らしい。帰る途中ではないことから、ヤーボの村出身ではないようだ。おっさんに寝ろと言われたが、俺は状況がわからんので情報収集を続ける。


「どれくらい眠っていた?」


「お日様7つ分ほどです。倒れた時に腕から血が流れ出たもんで慌てて傷口を布を巻いたのですが、その時にお日様は2/3ほどの位置でしたので……」


「日が沈んでからどれくらいだ?」


「お日様1つ分ほどでしょうか。」


 ということは、日の出から日の入りまでを18等分して時間を計算していることになる。この世界には1日24時間という概念はないらしい。太陽の傾きで測っているのか。夜はどうするんだろ?同じく18等分か?とすると『お日様1つ分=10度』?


 そういえば腕を怪我したと言っていたな。

 俺は腕に巻かれた布を見た。血がにじんでいるが、痛みはない。俺は起き上がり、布を巻きとった。


 ……どこも怪我してない。


「坊ちゃん、どうなされましたか?あれ?腕の怪我がない……。」


 禿げおっさんが手を伸ばし、俺の腕を取り上げ肘のあたりを覗いている。おそらくこの辺りから血を出していたのであろう。だが、そこに傷らしきものはない。それよりも、そんなにべたべた触らないでくれ。そっちの趣味はないんだよ。


「寝ていると治りが早いんですかねえ。」


 そんなわけないだろう。きっと俺の中の何かが作用しているはずだ。俺は体をたき火のほうに向け温まるふりをしながら考え込んだ。


 確か転生ものの小説の中では、特殊な能力を手に入れて大活躍をするものがあったな。俺は転生ではないようだが、何かしらの能力を与えられているはずなので……。

 そこで神様との甘い行為をまた思い出した。俺、根は助平なんだろうか?すぐにあの時の口づけの気持ちよさを思い出してしまう……。


 ん?なんだこのガタイの良さは?


 俺は自分の体をまじまじと見た。結構マッチョだ。転移前の俺は、筋肉質だが、もっと細マッチョだったはず。立ち上がって全身を見てみる。かなりの身長だ。180センチ以上はあるのか?俺、元々は174センチなのだが……。やはり筋肉隆々だ。そして半裸だ。


「ふ、服は……?」


「何言ってるんですか、坊ちゃんはいつも服を着たがらないじゃないですか」


 おっさんから衝撃的なことを言われたよ。


 俺、裸族なんだ。



 大事なとこしか隠してない。


 おっさんはちゃんと服着てるのに。


 こんな恰好でヤーボの村に何しに行こうとしてるんだ?


 いや、そんなことよりも……


「この先どうするんだ?」


「明日の朝出発したら、昼過ぎには村に到着します。そこで食料を買ったら、ベルドの宿場町に向かいましょう。どこかで野宿することになりますが、明後日には町に到着できます。」


「その後は?」


「……鍛冶屋でこの剣を鑑定してもらうのでしょう?今回はそれが目的なんですから。」


 そう言っておっさんは剣を取り出し、俺に渡した。紫色の柄に紫色の鞘。鞘から柄を覆うように札が貼られていて、剣が鞘から抜けないようになっている。


 封印されているのか?この剣はいったい何の金属でできているんだ?結構軽いぞ。


 俺はまじまじと剣を眺めていた。


「どうされたんですか?親父様の形見の剣を不思議そうに眺めて……。もしや封を解く方法を見つけられました?」


「い、いや。」


 慌てて俺は頭を振った。

 そうか。これは父親の形見なのか。封印されていて、それを解くためにベルドの町に向かう途中なのか。封印されている理由も気になるが、あとは……。


 このおっさんの正体か。


 執事、というにはみすぼらしいな。住み込みの従者というのが妥当か。名前は……どうやって聞き出そう。


 次の会話をどうするか考えていたら、突然腕に強烈な痛みが襲った。


 痛みのする箇所を見ると、左腕に矢が刺さっている!


 矢が飛んできたと思われる方角を見ると、暗闇からヒュンヒュンと音を立てて何かが飛んできた!

 まずい!何者かが襲って来たんだ!

 2射目の矢は幸い俺にもおっさんにも当たらなかったが、敵はどこにいるのか見えない。


「たき火を消せ!」


 俺は叫んだ。こちら側は明かりの傍にいるせいで丸見えのはず!

 おっさんが足で砂をかけて火を消した。砂煙が舞い大きな音をたてて火は消え、一瞬にして真っ暗になった。明るい状態に目が慣れていたため、周りは何も見えない!


 俺は咄嗟にたき火から離れ、後ろに飛び退いた!次の瞬間、俺のいた場所に何かが突き刺さる音が聞こえた。


「ぎゃぁぁああ!!」


 それとほぼ同時に、悲鳴が聞こえた!おっさんの声だ!見ると、おっさんが暗闇にうずくまっている!


「やった!当たりましたよ兄貴!」


 遠くで声が聞こえた。

 声したのほうを見ると、真っ暗な中にうっすらと人の形が見える。はしゃいでいるような姿とその隣に何かを構えているような姿が見えた。


 まずい!


 俺は、おっさんに駆け寄り、両腕を持って強引に引きずった。


 矢の刺さった左腕が痛い!


 だが、痛がっている場合じゃない!必死でおっさんを引きずって後ろに下がる。


「うぅぅ……!ぼっちゃん……。」


 おっさんは苦しそうに呻いている。見ると腹のあたりに細い棒が刺さっている。その光景を見て俺は思わず手を放してしまった。


 俺、ビビッてる……。


 慌てておっさんの両腕を抱え直し、さらに引きずろうとした。


 ヒュン、ザクッ!


「ギャッ!!」


 聞きなれない嫌な音が聞こえ、おっさんの叫び声が上がった。途端に、おっさんが何かにつっかえたように動かなくなった。


 矢がおっさんのどこかに刺さり、地面に縫い付けたに違いない!


 俺は、手探りで刺さった矢を探す。おっさん触るの気持ち悪いとか言ってる場合じゃない。


 あった!足に刺さっている!


 俺はその矢を抜こうとした。


「ぐはぁぁああ!」


 おっさんが悲鳴を上げる!


「我慢してくれ!」


 そう言葉をかけ、俺は力を入れて矢を抜こうとした。


 ぬ、抜けない!


 どうやって抜くんだ!?


 俺は強引に矢の刺さった足を持ち上げた。矢が持ち上げた足の動きに合わせてふくらはぎに沈み込み、下から突き抜けた部分が見えた。


 「うわぁぁああ!」


 またビビった!


 思わず手を放してしまった!


 おっさんの足が支えを失って地面に落ちる。その拍子に刺さった矢が折れた。


 や、やった……。


 慌てながらも、おっさんを引きずろうとしたその時、


 ザクッ!ザクッ!


「がぁああ!」


 また、おっさんの叫び声がした。矢が刺さる音も聞こえた!


「あぁぁああ……!」


 俺は言葉にならない声をだし、腰を抜かしてしまった。


 やっぱ俺、ビビッてる!


 あまりの恐怖に体も硬直しているんだ!


 ……どうすれば……どうすればいい!?


「兄貴!また当たりました!俺の矢ですよ!」


 さっきより近くで声がする!俺は震えながらも声のしたほうを見た。さっきよりはっきり見える。小柄な胸板の薄い男と、少し大柄で太い腕の男。小柄なほうが弓を振り回して喜んでいる。よく見ると二人とも右肩に赤い肩当のようなものを付けている。


「ぼ…ぼっちゃん……。」


 おっさんの声がした。俺はおっさんのほうに顔を向ける。


「逃げて……ください。」


 弱々しい声で言い寄ってくる。

 かなり怖いがそれどころじゃない!俺も逃げたいんだよ!だが、体が言うことを聞いてくれない!おっさん!どうしたらいいか教えてくれ!


「に、逃げて……ください!」


 おっさんは振り絞るように声を出してる。見ると口から血を流していた。口から血が流れているということは、内臓を傷つけられたということ。さっきの腹の一撃かもしれない。


「ぼっちゃん!逃げて!」


 おっさんは俺の両肩を掴み叫んだ。


 うわぁあ!ゾンビに襲われてるみたいだ!


 ……な、なんだ!?硬直が解けたぞ……?


 俺は尻で地面を這うかのように後ずさった。


「一人逃げようとしてるぞ!」


 さっきとは違う声がして、走る音が聞こえた!


 まずい!逃げなきゃ!でもおっさんどうする!?ほっといていいのか!?ここで俺が逃げれば見殺しすることになる!


「アルテイト盗賊団から逃げれると思うなよ!」


 さらに近くから声が聞こえ、その声がおっさんにも聞こえたのか、おっさんは声のするほうを睨み付けた。すぐに俺のほうに向きなおして声を絞り出す!


「早く!」


 俺はおっさんの気迫に完全に怯えていた。

 何かが手に当たり、ちらりと見るとあの紫の剣がそこにあった。


 そうだ!この剣で戦えば……!


 俺は剣を左手で掴んだが直ぐに思い出した。

 ……封されてるんだった。えぇい!役立たず!


 俺は剣を抱えたまま後ずさりをし続けた。おっさんからは4~5メートルほど離れたか。


「いっちばん乗りぃぃいい!」


 嬉々とした叫び声がして、おっさんのすぐ側に人影が現れた!


 剣を振りかぶっている!


「早く逃げて!」


 おっさんの叫び声と剣を振り下ろす動作が同時だった!そして次の瞬間に俺は草むらに飛び込んだ!


 もう俺には見えないが、おっさんの悲鳴とザクザクという音がしてる!俺は草むらの中を這うようにして逃げた。後ろを振り返ることもできず、ひたすら逃げた。





 ……やってしまった。


 見殺しにしてしまった……。


 あの様子じゃおっさんは命を奪われているだろう。俺は何もできずに逃げ出してしまったんだ。恐怖と悔しさとで目に涙が溜まってる。でもそれを拭う余裕すらない。


 俺の頭ン中は、

 「とにかく遠くへ逃げろ!」

 「隠れる場所を探せ!」

 「音をたてるな!」

 がぐるぐる回っている。


 もう周りの状況や音が情報として全く入ってこない。遠くで「探せ!」という声がしているようだが、それも俺には届いていない。とにかく、足を動かして声のしないほうへ向かってひたすら遠くへ逃げた。







 ……どれくらい走っただろうか。不意に足が泥沼にはまり俺は倒れこんだ。全身、泥まみれになってしまった。しかし、ここは地面が窪んだところで雨水か何かが溜まって地面と同じ色に濁っている。俺は、その場から動かず、荒い息を無理やり殺して泥まみれで潜んだ。


 周囲は暗闇。きょろきょろと見渡して、動くものがないか確認する。遠くで人の声が聞こえた。俺の五感に聴覚が戻ったようだ。まだ、俺を探しているらしい。


 二人……三人か?

 く!左腕の矢が邪魔だ!


 俺は右手で矢を掴み力いっぱい引き抜いた。味わったことのない痛みが左半身を襲う!

 ……い、痛みってそこだけで感じてるんじゃないのか。


 足の指先までピリピリした。しかし、なんとか声は上げずに矢を引き抜いた。


 うわぁ……。矢じりになんかの肉片が残ってるよ……。


 俺は、泥沼の中に矢を沈ませた。大きく呼吸し、息を整えた。


 ……考えろ。考えろ。どうすればいい?


 俺は泥沼に身を沈め、見えないように隠れ続けた。









 ずいぶんと時間が経った。足音や声は聞こえず、静まり返っている。


 どうやら諦めてくれたか……?


 おれは、潜んだ泥沼から身動き一つせず、あたりを伺った。風の音、草の葉が擦れ合う音。聞こえるのはそれしかない。



「ふぅぅううううう……。」


 俺は大きく息を吐き出し、ようやく肩の力を抜いた。


 ……助かった。


 いろんな感情が込み上げてくるが、とにかく今はほっとしている。見殺しにしたとか、見殺しにしたとか、見殺しにしたとかいろいろあるが、後で後悔しよう。


 今は、状況の整理だ。


 俺はキスのくだりは何とか飛ばして、神様との会話からここまでのことを順に思い出した。


 俺は死んだ。

 死んで白い場所に連れてこられた。

 神様が現れ、転生の準備をするから転生する命を選択するように言われる。

 何十億の選択枝の中から、弟が創造した世界に転移できる来世を選択する。

 そのあとは……ちょっと飛ばして、神様から何かの力をもらってこの世界に移動。

 この体に乗り移ったが、大柄マッチョの体に、知らないおっさん……。おっさんのこと考えるのは、苦しいな……。

 俺は、ヤーボの村を経由してベルドの宿場町に行き、この紫色の剣を鑑定してもらうために、どこからかやってきた。

 その途中で俺の魂が乗り移り、俺は気絶する。

 おっさんがその場で看病したので、村まで行く予定が野宿。

 たき火の明かりのせいなのか、アルテイト盗賊団を名乗る奴らに襲われ、俺はおっさんを見捨てて今に至る……。


 まず、この世界は盗賊が襲ってくるような治安の悪い世界と思われる。しかも単独ではなく、徒党を組んで襲っている……。何人いるかはわからないが。

 それから俺が倒れていた場所は山道の中腹だった。そして今は山を下りきっている。半日の距離ではないにしろ、近くに村があるだろう。夜が明ければ、まずそこへ逃げ込もう。自警団なり、冒険者なりがいるはずだ。

 それから、俺の名前がわからない。おっさんは「坊ちゃん」としか言わなかったから、手がかりが全くない。

 最後に、俺の中には複数の俺がいる……。盗賊団に襲われた時も、ビビる俺とそれを俯瞰で見ている俺と、強引に逃げようとする俺と。そしてそれぞれの俺が実際にはほんの一瞬の間にいくつものことを考える。今も同時に複数の情報を整理しようとしている。気味が悪いとしかいいようがない。


 さらに……。



 左腕に刺さった矢傷がなくなっている……。



 ……これはあれだな。超絶治癒能力があると考えるべきだな。どうやって検証するかだが……。

 む、弟の本の中には、自分や他人の能力を見ることができるヤツとかあったな。

俺にはないのか?なんか、メニュー!とか言ったら目の前に画面が開いて……。


 ブゥン……。


 俺の目の前に半透明のウィンドウが表示された。


 ……まじかよ。



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