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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第一章◆ 忌み子の奴隷少女
18/126

15 契約と秘密と

09/26 誤字修正 会話文のインデント修正




 俺はくしゃくしゃになった受付嬢からの手紙を見ていた。一度は怒りのあまりに握りつぶしていたが、よく見ると紙は二枚重ねになっていたのだ。


 二枚目にはまっとうなことが書かれていた。


 ヴァルドナの港街の宿泊先の住所が書かれており、【金牛宮】の支配人の名でエルバード殿への融通の依頼が書かれていた。

 ヴァルドナではこの宿を訪れればいろいろと融通してくれるだろう。だが、そのような依頼を何故おの受付嬢が?



 確かに俺はヴァルドナに行く予定があった。バナーシ旗下の客分扱いで『例の件』に参加する。

 『例の件』については領代のヘリヤから内容を聞いた。

 ヴァルドナの港には、沖合に小島が存在し、その小島を拠点として大規模な海賊が闊歩している状態だった。これまでは、子爵様直轄の領兵団で商船漁船の警護を行って何とか対処していたが、最近になって活動が活発になり、子爵様単独では対抗できなくなったため、ベルド公設領兵団、ナヴィス私設傭兵団で協力して大規模討伐を行うこととなった。



 総兵力1000名。



 バナーシもマグナールも初めての規模だと言っていた。この世界では万を超える規模の戦争はまずないようだ。だが、ナヴィス殿の到着でベルドには領兵団150名、傭兵団300名に膨れ上がっている。街の宿泊施設は一気に満員御礼だそうだ。

 そしてこの大兵力を運用する資金の半分をナヴィス殿が提供しているという。個人での資金提供が半分を賄っているということは、立場上は子爵様の配下だったとしても、事実上の大将ではないだろうか。『ヤグナーンの大商人』の2つ名は伊達じゃないということか。

 マグナールの話では、2日後にここを出発し、陸路で2日かけてヴァルドナへ向かうそうだ。


 対する海賊団は総勢200人。兵力差だけを見れば余裕かと思っていたが、相手は上陸場所の少ない小島を拠点としており、そこに攻め込むためにはこれぐらいの兵力差が必要だそうだ。

 確かに攻城戦の場合は、攻め込む側は3倍の兵力が必要、て読んだことあるな。







 ナヴィス殿との約束の時間までは、暇であった。バナーシ殿やマグナール殿は出発までのさまざまな準備で忙しく、俺のことはほったらかしである。俺は宿の部屋でのんびりと時間を過ごしていた。ソファに座って、武器屋で手に入れた小剣を眺めている。



 【輝銀鉱の小剣】生産品



 そこそこの値段だったが、割と固く扱いやすそうだったので、サラの為に買ってはみたものの…。

 俺もサラも剣の訓練は受けていない。我流で剣の鍛錬をして、身に付くものなのであろうかと考えている。


「サラ、この小剣を君に渡すよ。」


 そう言って、鞘に納めた小剣を2本をサラの腰につける。サラは両腰の剣を交互に見て嬉しそうに俺にお礼を言う。


「サラは≪風見の構え≫で高速移動ができるってのがわかったからな。小回りの利く武器で一撃離脱の戦闘術を身に着けてもらいたいと思って。」


 サラは武器をじっくり見ていたがやがて申し訳なさそうにそれを俺に返してきた。


「ご主人様、奴隷であるサラが普段から持っているのは周りに誤解を与えます。それと、サラはご主人様の奴隷ですから、ご主人様の戦い方に似合ったものを選ぶ方が良いと思います。」


 ふむ。サラのいうことはもっともだ。だが武器は手元に持っていて価値のあるもの。いざ戦いが始まってからサラに武器を渡しているようでは、全く意味がないのだが。しかし、今はサラのいう通りにしよう。俺の武器を早く決めなければ。

 俺はメニューを開き、収納しているリストを眺めていた。





 夜も更け、夕食も済ませたあと、俺とサラは外出した。行先はナヴィス殿のいる商館。受付嬢にも行先を伝え、バーバーリィに乗って目的地まで進む。商館の入り口には先日ナヴィス殿の傍にいた女性が立っていた。


「ベスタ姉さま!」


 サラが思わず、その女性に手を振る。女性は俺たちが馬に乗ってやってくる姿を見て、戸惑うようなしぐさながらもお辞儀をした。


 …まあ、そうだろうな。奴隷と一緒に馬に乗るのはおかしいらしいからな。


 俺はサラを降ろし、バーバリィを柱にくくりつけたあと、その女性に近づいた。


 サラは怒られていた。


「…サラ。どういうつもりですか。ご主人様の馬に乗っているとは。しかもご主人様より先に声を出しましたね。」


 サラは肩をすぼめてシュンとしている。俺は後ろからサラの頭をポンポンと叩き、女性に声を掛けた。


「俺から注意しておきます。今はサラとの再会を喜んでやってください。ベスタさん」


 そう言われたベスタは、俺に深々とお辞儀をしてサラを抱きしめた。


「元気そうでよかった。」


 サラはうれし涙を流し、ベスタに抱き付いている。


「エルバード様、お騒がせいたしました。主がお待ちです。」


 そういって、入り口の扉を開け、中へと勧める。俺とサラは中へと入って行った。


 うるさいぞ、バーバリィ。なんであいつは俺が離れるとヒンヒン鳴くんだ。



 俺は、商館の一室に案内された。10畳ほどの広さの部屋にいくつかの調度品が整然と並べられており、中央には高そうなソファとテーブルが置かれている。そこに、白いひげを生やした男性が座っていた。


「待っておりましたよ、エルバード殿。」


 そう言って、目の前のソファに座るよう勧める。俺はそのソファに座り、サラはソファの後ろに立った。ふむ。奴隷はそのようにするのが儀礼なのか。



「では、サラとの奴隷契約を行いましょう。サラ、こちらへ来て首輪を出して。」


 サラはナヴィス殿の前に座り、髪をかき上げて、首輪がよく見えるようにした。ナヴィス殿は左手を首輪に当て、何やら呪文みたいなものを唱える。


「…これで今サラは主のない状態です。エルバード殿、サラの使役範囲はどうしますか。」


 俺の答えは決まっていたが、サラは不安そうに俺を見ている。俺はサラを安心させるように微笑みかけた後、


「全てです。」


 と答えた。サラの顔はパッと明るくなった。俺に全ての使役を受けることがよほどうれしいのだろう。


「全てを使役させる奴隷は高額ですよ。よろしいのですか?」


 ナヴィス殿は心配げな表情を見せる。


「費用については後程相談させてください。そのためにお時間を頂いたのですから。」


 だが、そこは商人である。口約束では通じなかった。


「…では先にその相談とやらを聞きましょう。サラの契約手続きはそのうえで判断します。」


 ナヴィス殿は、サラの首輪に当てた左手を降ろした。一気にサラの表情は不安げになる。


 俺は辺りを見回した。部屋の窓はカーテンが掛けられ外からは見えない。部屋の中には俺とサラとナヴィス殿と女性奴隷だけである。俺はその女性に視線を向けた。


「彼女は信用して大丈夫ですか?」


 ナヴィス殿の表情は一瞬険しくなったが、すぐに落ち着いた表情に戻し答えた。


「よほどの内容のようですな。大丈夫です。ベスタは私の身の回りの世話をする奴隷ですよ。」


 俺は無言で肯き、改めてナヴィスに視線を戻した。


「今からお見せするものは、サラにも見せておりません。もちろん他の誰にも。これは俺の失った記憶を取り戻す手がかりにもなると考えています。ですが、同時に俺の命、サラの命を危険にさらすことにもなると考えております。」


 俺は言葉を切り、右肩を前にしてナヴィス殿によく見えるようにした。ファスナーが現れ、その中に手を突っ込み、中に入っているものを取り出していく。


「≪異空間倉庫≫か…。固有スキルを持っていたとは驚きですな。しかし、それだけでは秘密とは言えないでしょう。」


 この時点でサラは驚きの表情になっているが、ナヴィス殿はその程度か、と言いたげな顔で俺を見ている。


「…これらは盗賊団の塒にあったものです。盗賊団を全滅させた俺は、そこにあった宝を全て収納いたしました。」


 俺は、ファスナーから次々ともの取り出す。冷やかな眼差しだったナヴィスの表情は、だんだんと引きつった表情に変わった。それでも俺は、収納した宝をどんどんと取り出し、床に並べていった。



 武器・防具類:86

 服類:48

 宝石:68

 金貨:6048

 銀貨:3930

 その他:187



 これが俺の≪異空間倉庫≫に入っていた全てだ。それを全部床に並べ終わった時にはナヴィスの表情はすっかり真っ青になっていた。サラとベスタはお互いを抱き寄せただただ唇を強張らせている。


「これが盗賊団の所持していた宝になります。奴らはマイラクト領主と手を組んで海賊行為を行っていた可能性があります。これらの大半についてもその海賊行為で奪ったものと思われます。1つめの質問ですが、討伐対象が所持していたものは討伐者のものになりますが、これらはどうなりますでしょうか。」


 ナヴィス殿は、我を忘れたかのように、床に置かれた宝の前に歩み寄り、じっと見ていたが、俺の声を聴いて我を思い出し、俺の方に向き直る。


「…まず、こちらから質問させてもらいたい。」


 ナヴィスは、驚きの表情で、目の前の宝を見つめたまま俺に問いかけた。


「……私の部下にも≪異空間倉庫≫を持つ者はいるが、これほどの量を収納できる者はいませんよ。通常、≪異空間倉庫≫は収納量と収納時間に比例して魔力を消費していく。君は、これだけの物を仕舞い込み、維持するための魔力を、いったいどうやって…?」


 スキルの使用には魔力が必要。これだけのものを中に入れておくのにも魔力が必要で、それを維持させるにも魔力が必要なのか。そりゃ驚くわな。サラもアホな顔状態からまだ脱出してないし。


「それについては、俺自身もわかっていません。失われた記憶の一部に該当します。俺の中では、魔力を消費せずにスキルが扱える能力を持っている、と割り切っています。」


 俺自身もまだわかってないのだ。この説明で納得してくれ、と心の中で願う。


「…ふむ。納得しかねる内容ですが、次の質問に行きましょう。私が領兵団から受けている報告の中には、君が≪異空間倉庫≫を持っていることは記載されていませんでしたが?」


「ナヴィス殿、サラ以外に≪鑑定≫できるものはいますか。」


「私も鑑定は使えるよ。それでは視させてもらうよ。」


 そう言って、俺を睨み付けるように見る。が直ぐに表情が変わった。


「ど…どういうことですか?≪鑑定≫の結果には、≪異空間倉庫≫がありません……。そんな、もう一度…な?何故視えないのです?」


 ナヴィスはワナワナと唇を震わせている。サラに見せた時も同様の反応だったのだが、≪偽りの仮面≫というスキルは知られていないスキルのようだ。


「…スキルを使っています。俺は世の中には知られていないようなスキルを持っています。」


 ナヴィスはしばらく黙りこんでいた。やがて杖を使ってゆっくりと歩きだし、部屋の中央に置かれたソファに座る。


「エルバード殿、こちらへ。ベスタとサラもこちらに来て座りなさい。」


 ナヴィス殿は俺と二人の奴隷を呼び寄せ、ソファに座らせる。


「君が私に見せた秘密は2つ。1つは、スキルの使用に魔力を消費していないこと、もう1つは、私たちの知らないスキルをもっていること。認識は合っていますか?」


 ナヴィス殿は指を折って数えながら俺に質問する。


「いえ、もう一つ。そのスキル全てをお見せしていないことが加わります。」


 俺は、自分にはまだ秘密があることを追加した。サラは、さっきから口を開けたままだ。


「…エルバード殿、君はこれだけの秘密を私に見せて、どうするつもりなのです。?」



「……俺の後ろ盾(・・・)となって頂きたいのです。」


 ナヴィスは目を細め、俺を見る。俺を見定めているようだ。


「…君は私の何が欲しいのかね?資金か?」


「いえ、人脈です。」


 俺の言葉を聞いて、ナヴィス殿は一気に破顔した。


「ホッホッホ…。1商人の人脈なんてたかが知れている。」


「いえ、私にはされど人脈、です。今の私には何もありません。しかし、ナヴィス殿の人脈を通じて情報を得ることができれば、私がやりたいことを達成することができるでしょう。」


「…やりたいこと、とは?」


「いえ、そんな大それたことではありません。単に世界をくまなく旅してみたいと思っているのです。それに対してできるだけ安全に、という保証を設けたいと思っているだけです。」


 ナヴィス殿の沈黙は続いている。俺は、答えをはぐらかした説明をしている。それは相手にも伝わっている。けれど、本音をナヴィス殿には言えない。誰が俺の目的を信じるというのだ。『この世ならざる者』という言葉は、神やその眷属に対しては通じるが、人間に対して通じる言葉かどうかわからない。この段階で俺の正体を現すような説明はできないのだ。


「…正直に言いましょう。私は君が恐ろしい…。先ほど見せてもらった能力は然り、君が隠し持っている能力、そして我々の常識に囚われない思考。そんな人間が権力を手に入れればどうなると思いますか?史上最強の独裁者が生まれるのではないかと危惧します。」


 ナヴィス殿の言っていることはもっともだ。俺も時々自分の力が怖くなる時がある。だからこそ、俺は一人で行動してはいけないと考えている。


「確かに、ナヴィス殿のおっしゃることは私自身も危惧しております。それゆえ、俺は一人きりになることを恐れています。一人で考え、決断し、それが誤りであってもそれを正すものがいなければ俺はやがてナヴィス殿のおっしゃる独裁者へと変貌していくでしょう。そうならない為に誰かとの繋がりを持っておきたいと思っております。サラ然り、バナーシ殿然り、もちろんナヴィス殿とも。」


 ナヴィス殿は目を閉じ考えに耽った。商人としてはずいぶん考えに耽っている。よほど俺を警戒していたのか。

 やがて、目を開け、傍で不安そうにしているサラを見た。


「サラ、お前はご主人様のことは怖くないか?」


「はい!」


 サラは元気よく答える。


 ナヴィスは立ち上がり、再び床に置かれた宝を見分し始めた。


「エルバード殿、君の価値をゆっくりと見定めさせてもらうぞ。価値なしと判断すればすぐさまその場で捨てさせてもらう故。」


「それで構いません。」


 ナヴィスは振り向き笑顔をみせた。老紳士風のやさしげな姿だった。俺は安堵した。

 ナヴィス殿は見分を再開し、その価値を確認していく。


「高価なものほど≪所有者記録(ネームタグ)≫というスキルで、所有者を記録して盗難を防止するものですが、ここにあるものは全て≪所有者記録(ネームタグ)≫はつけられておりません。恐らく、何らかの方法で取り払われているのでしょう。これでは所有者を特定することはできず、所有者への返還はできません。」


 ナヴィスは人の悪そうな笑顔で俺を見る。


「1つ目の質問じゃが、これらの宝物は間違いなく君のものになる。しかし、これほどの装飾を施した武具や宝石類は『業物』としても名の知れたものも多く、売買記録を追いかけていくことで所有者が特定できるものもあります。そういったシロモノを所持したままでいるのは、問題が起こりましょう。ここは業物について公にして、マイラクト領主を貶める材料として使用するのと、元の所有者に法的根拠を押し並べて返還ではなく買取させて資金調達の材料にしませんか。」


 ナヴィス殿の回答及び提案は妙を得ている。俺はその提案を受け入れた。ナヴィス殿の方で商品の出所を探し出し、前の持ち主に売却を持ちかけ、相手が買うことを承諾した場合にそれを売っていくという手段だ。俺の方は一切損はしない。当然、ナヴィス殿は手数料をいくらか取るだろうが、安全にお宝を売りさばけるのであれば大した問題ではない。

 このため、業物と表示された品物は全てナヴィス殿に預けることにした。


 一つ一つ≪鑑定≫し、『業物』とついているものを選り分けていく。だがあるひとつの武器のところで俺の手は止まった。


 【アルキュオネーの長槍】


 この武器は、どっちだろう。俺はナヴィス殿に聞いてみた。ナヴィス殿も≪鑑定≫を行い、目を見張る。しばらく沈黙した後やはり沈黙したままで部屋を出て行った。ナヴィス殿の行動がどういう意味か分からず、3人できょとんとしていると、大きな弓を持って、返ってきた。


「エルバード殿、この弓を≪鑑定≫してみてくだされ。」


 そう言って、俺に大きな弓を差し出す。俺は言われるがままに≪鑑定≫した。


 【ステロペーの楽弓】


 …。俺の長槍と同じく、名前しか表示されない。俺は、ナヴィス殿を見た。


「この弓は、壊れているのだと思っておりました。ですが気にはなるので、売らずに手元に置いておいたのです。君の持ってきた長槍を見て、何かしらの理由のある武具だと感じましたが、君の意見を聞きましょう。」


 俺は弓と槍とを交互に眺めた。


 …さわり心地が同じ。材質が同じということか?色も似ている。何か秘密が込められてると考えた方がいいのか?


「…売りますよ。」


 ナヴィス殿の囁きは悪魔のようだ。俺が興味津々で見ていることを知って、商売っ気を出してきた。だが、ここはナヴィス殿の誘いに乗っておくことにする。


「さすが商人ですね。絶妙な状況でのそのお言葉では断ることはできませんよ。」


「金貨1000枚です。これらの商品の売却額から差し引いておきますよ。」


「わかりました。」


 商談成立である。サラは目を丸くして驚いている。いくらお金に疎いサラでも金貨1000枚はあまりにも高額と思ったのだろう。何かを言いかけたが俺はそれを制した。俺は妙な駆け引きをやって相手との交渉をややこしくする気はなかったので、言い値で了承することにしたのだ。文句は後で聞いてやるから今は黙っといて。



 一通りの仕分けが終わり、サラの契約を勧めた。サラの使役契約料は金貨500枚。盗賊の宝から手に入れた金貨で支払った。だが、サラは何かを言いたそうにして頬を膨らませている。ナヴィスはそれに気づく様子もなく、手続きを進めた。

 左手を首輪に当て、右手を契約書に当て、なにやら呪文を唱える。

 右手の手のひらからは黒い稲妻のような光が現れ、契約書に文字を書きだす。…ニ・ホーン語だ。スキルをつけたままにしてよかった。もしスキルをつけずにこの光景を見たら、俺は大爆笑してしまったであろう。

 俺は黒い光で書き上げられていくニ・ホーン語を順次読んでいく。最後に契約者の俺の名前、非契約者のサラの名前、契約履行者のナヴィス殿の名前が書かれた。


「…契約は完了です。サラ、これを新しいご主人様にお渡しして。」


 そう言って、出来上がった契約書をサラに渡す。サラをおずおずと俺の下にやってきて契約書を差し出す。

 俺は契約書を受け取らずにサラを引き寄せ抱きしめた。


「これから、宜しくな。」


「…う~…、う~…」


 サラは返事をせずに唸っている。サラがこういう声を出すのは俺に対して不満がある時だ。ベスタが心配そうに見ている。


「サラ、返事をせぬか。」


 ナヴィス殿に促されて、


「…ヨロクオネガイシマス」


 と、抑揚のない声で返事をした。ナヴィス殿の顔は呆れ顔になっている。


「大丈夫ですよ、ナヴィス殿。俺に対しては不満があるときこんな風になります。ですが、俺に対してだけなので問題ありません。」


「…サラは前は聞き分けの良い子じゃったがなぁ。なんか、我がままな部分が出ておるのぉ。何かあったのですか?」


 似たような質問をマグナールにもされたな。サラは俺と出会って変わってしまったということか?ベスタさんが心配そうにサラを見ているぞ。


 一通りの事を済ませ、俺はナヴィス殿にお礼の挨拶をした。ナヴィス殿は最後のサラの態度はともかく、俺自身のことは気に入ってくれた。後ろ盾についても了承してくれた。今後は、奴隷の主人としての教育を施すという名目で、私設傭兵団の護衛部隊に配属するように取り計らうそうだ。当然、そのために使った費用は後で請求することを言われたが。


 宿に戻ってきた。サラは相変わらず口をへの字に曲げて、頬を膨らましている。もう夜も更けているので、寝る準備をしているのだが、俺がいるのもお構いなしに全裸になって夜着に着換える。


「サラ、どうしたんだい。契約の少し前からなんだか怒っていたが。」


「だって…あの弓がサラより高いなんて納得できません。グランマスターはご主人様の足元を見たんですきっと!」



 ……。



 サラちゃん、可愛いよ。



 弓に負けてるのが悔しいのか。世界には奴隷より高いものはいくらでもあるだろうに。それにサラの価値は金額じゃないんだから。



 俺はサラをベッドに引き連れご機嫌の悪い奴隷少女を押し倒した。

 こんな可愛いサラちゃん見せられたら、ご主人様は我慢できません!





 今宵はハッスルだ!サラとの契約記念なんだから。





主人公はようやくサラと奴隷契約を行いました。

使役範囲は『全て』です。

つまり、あんなことやこんなことも使役可能なのです。

この先、ちょいちょいあんなことやこんなことを出す予定です。ご了承ください。


次回は、一章の最終話です。

といっても二章に続く幕間みたいな感じになります。


ご意見、ご感想をいただければ幸いです。

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