9 サラ、我が下へ
03/04 大切な部分に誤字があり修正いたしました。
誤)俺が俺を
正)俺がサラを
03/05 不評だった1-7を、話の流れが変わらないように書き換えました。
良くなったのか、悪くなったのかご意見を頂ければ幸いです。
04/12 誤字修正
09/26 誤字修正 会話文のインデント修正
ヤーボの村の長に、事の顛末を報告し、俺は家を辞した。あの家にはサラがいる。俺はあの場に留まることができなかった。そのため何かと理由を付けて外へと出てしまった。
…情けない。
サラは自分の役割を全うしようしているだけだ。決して俺に含むところがあるわけでもない。話しかければ答えてくれだろう。『奴隷のサラ』として。
俺にはそんなサラを見ることが耐えられない。こんな時どう接すればいいのかなんて、恋愛経験のない俺には全くわからない。
行く宛があるわけでもなく、俺は村の畑をぼーっと歩いていた。
翌日の太陽が真上を通り過ぎてから少しした頃に、村にベルドからの領兵団本隊が到着した。
俺は先行到着した領兵の男に引っ張られてお出迎えに行った。もうちょっと感傷に浸らせて欲しいのに…。
「ベルド領兵団の団長、バナーシという。『長』殿はおられるか。それと盗賊団を倒した者も。話が聞きたい。」
そう言って村の入り口で大声を出した。村長と俺がややあってから歩き出す。それを見たバナーシは後ろを向き部下に指示を出す。
「村の女性と食料を中へ!我々は村の外に野営準備をしろ。」
そう言うとまたこちらに向き直った。後ろからは食料を積んだ台車を引く屈強な男と女性が歩いてきた。あの夫を殺された女性だった。
女性は俺の前まで来て少し呆れた顔をした。
「…ほんとに一人で片づけてしまったのね。」
俺は誇るわけでもなく答える。
「みんなが俺に協力してくれたからだ。俺だけの力じゃない。」
俺はホントにそう思っている。暗殺に使った果物ナイフも奇襲をかけた時の剣もサラを守った檻も全部村のみんなで準備したものだ。だから俺は戦うことができたんだ。
「…いずれにしても礼を言うわ。夫の仇を取ってくれて。」
女性はそれだけ言うと村の中に入っていった。それに屈強な男と台車が続く。それを見送ってからバナーシが俺に声を掛けてきた。
「普通なら自分の功績をもっと誇示してもよかろう?無欲な男よな。」
「俺は今記憶を失っている。何が一般的なのかもよくわからない。正直言うとわからないことだらけで不安になる。こういう時は謙虚になってるほうが良いと思ってるので。」
強調するわけでもなく自分の状況を簡潔に説明した。バナーシは目を細めて俺を見やったが別に疑っているわけではなさそうだ。
「念のため、≪鑑定≫はさせてもらうぞ。それとあの女性から聞いたが、お前の推論の話も聞きたい。」
そう言って、野営準備を始めている男たちのほうを指し示す。いいよ。今の俺は『村から離れたい派』だからな。俺はバナーシに向かって肯いた。
「『長』殿、先ほどの食糧は領兵団からの提供だ。好きに使ってくれ。また領兵団全員を村に入れるのは迷惑をかける。本隊は今日一日ここで野営をして明日盗賊団の塒に向かう。何名かは周辺調査と護衛の為に数日間は滞在させてもらう。よいか?」
村長はバナーシの話を全て受け入れた。その後副団長?と思しき屈強な兵と共に家に戻っていく。バナーシは改めて俺を見た。
「体格はいいな。どこから来たのだ?…ああ。記憶を失っているのだったな?」
わざとらしい質問ではあるが俺はいくつもの想定しているうちの一つだったので動揺はしない。
「ああ、だが来た方向はわかる。あの山の中腹で従者と思われる者と野宿していた。おそらく北東の山岳から来たのだろうと考えている。」
俺は用意していた答えを言い間違えないよう答える。バナーシはちらりと山のほうを見たが興味がなかったのかすぐ俺のほうに視線を戻した。
「わかった。いろいろ聞きたいこともあるし、ついてきてくれ。」
そう言って野営準備中のキャンプ?の中に入っていった。俺はその後に続く。
野営地の奥には既にテントも立てられていた。野営地には50人近くの男がいる。うん、この部隊だったら盗賊団に勝てたかもしれんな。でも犠牲者0で倒すことが俺の目標だったから、この集団を待ってから行動することはやっぱりできなかったよ。
そんなことを考えながら歩いていると、バナーシがテントの中に入ろうとしてこっちを振り向いた。
「入ってくれ」
そう言いながら、先にテントの中に消える。俺も中に入った。
中には小柄な男がいた。バナーシと何やら話し込んでいる。俺はテントの入り口でぼーっと待っていると、バナーシが話しかけてきた。
「今から≪鑑定≫を受けてもらうから。ここに座ってくれ」
そう言って、小柄な男の前にある椅子を進める。俺は言われるがまま、躊躇なくそこに座った。
さっそく≪鑑定≫が出てきたか…。事前に聞いていて良かった。既に≪偽りの仮面≫で偽メニューをセット済みである。問題ない。全部見てくれ。
小柄な男は俺に鑑定をかけ、見えたものを記録する。
【エルバード】
≪仰俯角監視≫
≪遠視≫
≪投擲≫
≪気配察知≫
≪一撃瞬殺≫
男から報告されたスキルはこれだけだった。うん、偽メニューに設定した通り。俺は安堵したが表情には出さないようにして、バナーシに話しかけた。
「闇にまぎれて一人ずつ倒していった。俺にはそれしか手はなかったもんで。討伐証明はない。」
男の報告を見ながらバナーシは考え込んでいる。大丈夫だ。間違ったことは言っていないはず。
バナーシが気にしていたのは俺の戦い方のほうだった。俺は正直答えている。≪気配察知≫で敵の位置を確認しつつ、後ろから≪一撃瞬殺≫。バナーシは納得がいったようで結論を出す。
「貴公を信じよう。記憶がない理由が気になるが、怪しいところもなく、村人も貴公を悪く言ってないしな。では、盗賊団の話を聞かせてくれ。」
バナーシは本題を振ってきた。俺は、村人にも聞かせた推論をバナーシに説明した。最後にこれを証明する証拠は一切発見できていないと添えて。
バナーシはまた考え込んでいた。相手が領主となるとそう簡単に自分の了見だけでは動けないだろう。
「盗賊団とマイラクト領主の件は、ベルドの領代経由でヴァルドナ領主にお伺いしよう。ヤグナーンのナヴィス殿の意見も聞きたい。誰か早馬でこのことを領代に伝えてくれ。」
バナーシは入り口近くの男に声を掛ける。男は返事をしてテントを出て行った。
「…失礼。質問してよいか?ヴァルドナとは?ヤグナーンのナヴィス殿、とは?」
俺の質問にバナーシはその意図を図っていたが俺に記憶がないことを思い出したようですぐ納得した表情を見せた。
「ヴァルドナは、ベルドの西にある港町だ。そこにこの島の大半を治める子爵様がおられる。ナヴィス殿とは、本土ヤグナーンの街を拠点にされている大商人様のことだ。」
何も知らない俺にわかりやすく説明してくれるバナーシ。ありがとう、とてもいい情報だ。ヤグナーンとは本土にあるのか。ということは村人はわざわざ本土まで行ってサラを買って来たのか?
俺はついでに『領兵団』についても聞いた。
領兵団とは戦闘のみを専門に訓練した公設軍隊でベルドの領兵団はヴァルドナ、ベルド、ガラの3つの街とヴァルドナ領主、ナヴィス商人が出資しているそうだ。ちなみにガラとは、ベルドの東にある港町らしい。構成員は最大200人ほどでベルドに常駐の半数を今回連れての大規模行動だったそうだ。
やべぇ。これほどの規模での大討伐を俺一人でやっちまったってことは結構目立ってねぇか?いろいろと面倒な気がする。
結局、俺の扱いはこうなった。
・盗賊討伐はヤーボ村長の緊急依頼を受け、ベルド領兵団長への紹介を報酬に実施。
・ベルド領兵団長と客分扱いとして一時的に領兵団に入団
全くの後付け設定なんだが、ことがことなので、体裁が必要だった。だが、問題は俺のほうではなかったようで。
村長は、デハイドの名で奴隷を購入している。それも『農耕作業の支援全般を目的』として購入しているため、実際の目的(盗賊団への献上)と異なっている。
今から彼女を契約通りの目的で使役すれば取り繕うことはできるが、ことがことなので、露呈する可能性がある。その場合、ナヴィス殿の顔に泥を塗ったことになるらしい。
サラを売った奴隷商ってナヴィスさんのことだったのね。別人物だと思ってた。
バナーシ曰く村長は保身に走り過ぎたそうだ。穏便に済ませたいが、罰則なしとはいかないだろうと頭を抱えて悩んでいる。
この時、≪思考並列化≫≪情報整理≫コンビがこの問題の解決案を提案してきた。だが俺はそれを無視した。
これ以上、首は突っ込みたくない。目立つことになるし、傷心中の俺は出来ればサラから離れておきたい。
だが、バナーシに恩を売っといて、ベルドの街でいろいろ融通してもらうのもいいかもしれない。
俺は「事情をよく知らない者の戯言ですが」と前置きしておいて、バナーシに俺の案を説明した。
俺の≪情報整理≫が出した案はこうだ。
ナヴィス殿に偽りの内容で奴隷購入の依頼を行ったヤーボ村長に対しては、その責を取り村長の座を自主的に降りて頂く。
次期村長については、息子のデハイドをナヴィス殿から推薦して頂く。
デハイドの推薦理由としては、ヤーボ村に余っている土地を農耕用に無担保でナヴィス殿に貸し出すので、移住計画人口増加計画の事業主としてヤーボ村自体をナヴィスの商業域に収めるという利益供出の提案のを受け、先見あるものと判断したから、というのはどうだろう。これならサラがこの村で契約通りに使役する弁も立つし、ナヴィスの監視もちゃんと入るはずだ。
俺は一通りの説明をバナーシに行って相手の返事を待った。
「最終的には細かい部分も含めてナヴィス殿に確認頂くとして、概ね問題ないだろう。貴公の案を採用する。…貴公は文官として成功できるのではないか?」
バナーシは人の悪い笑顔をこちらに向ける。…だから首は突っ込みたくないんだよ。いい意味でも悪い意味でも顔と名前を憶えられてしまう。
俺は心の中で舌打ちをして、バナーシには笑顔を見せる。
バナーシはさっそく村長とデハイドに説明するため、俺を外に連れ出そうとする。俺は、盗賊団の塒の調査が終わった後でもいいのでは?と提案するが、村長に先に別の手を打たれるのは困るので機先を制する意味で今から行くと言い出した。
いろいろ言い訳してあの家から出てきたのに、もう戻るのかよ。俺、傷心中だってば。
結局その日の夕方に、バナーシに連れられ村長の家を訪ねた。
村長は相変わらず表情を隠して部屋の奥で佇んでいる。デハイドは幾分腫れがが引いたのかベッドの上に座ってサラの看病を受けていた。
「『長』殿、『若長』殿!今回の件でお話ししたいことがござる。いきなりで申し訳ないが、あまり時間もないゆえ、この場をお借りしたい。まずは人払いを!」
バナーシはやや強気の口調でことさら大きな声を出して村長に迫る。突然の出来事で村長は何のことかわからないようで真っ青な顔で震え始めた。
それを見て俺が助け舟を出す。
「『長』殿。大丈夫ですよ、落ち着いてください。お話というのは盗賊団の件です。」
本当は奴隷契約の話もあるのだが、サラがまだいるのでその部分は伏せていう。
デハイドはやや顔をしかめたが、諦めたようにベッドに座り直し、サラに外で待っているように指示した。
「それでは小屋のほうで控えておきます。終わられましたらお呼び下さいませ。」
そう言って深々とお辞儀をして部屋を出て行った。
それを見届けてからバナーシは俺の案を1つ1つ村長とデハイドに説明した。デハイドはともかく、村長は顔を真っ青にしていた。
当然だわな。村長の座を追われるんだもん。でもちゃんと息子に継げるように配慮してるんだよ。
説明を聞き終えたデハイドは何度も肯いてから自分の考えを切り出した。
「少し前から考えていたのだが、この話について一部変更して頂きたい。」
そうバナーシに前置きしてから、俺のほうに向きなおった。
「エルバード殿、サラを貰ってくれないか。あの子をこの村に埋もれさせてしまうのはもったいないし、村人のサラを見る蔑みの目は、この村に奴隷が不要であることを物語っている。国には奴隷を守る法律があるが、その法に俺たちの知識が追い付いていない。遅かれ早かれ問題が起きるだろう。そうなる前に奴隷を手放し、未然に防ぎたい。本来であればヤグナーンの奴隷商に返却するのが筋だろうが、俺としてはお前に買ってもらいたい。それがあの子の為だと思っているから。」
バナーシは勢いよく立ちあがった。
「デハイド殿!俺の話を聞いてなかったのか!?」
怒りをあらわにしたバナーシは握りこぶしをしてワナワナと震えている。それを見た村長は更に顔色を悪くしぶるぶると震えている。だが、デハイドは気にしたそぶりも見せず、平然としている。こいつ、いつの間にこんな度胸を付けたんだ?
「別にこの話を台無しにしようというわけではない。より納得しやすいほうに修正したいのだ。エルバード殿にとっても悪い話ではない。盗賊討伐の報酬として奴隷を求めるという俗物的な部分を見せておくほうが周りから警戒されにくいのではないかと思ったまでだ。」
そこまで言うとバナーシもデハイドの言葉に耳を傾け始めた。
「俺たちとしても、無理やり辻褄を合わせてここで働いてもらい後々に問題が起きてしまうよりもちゃんと扱ってくれる者に渡したほうが、よりヤグナーンの奴隷商への配慮につながる。」
バナーシは考え込み、俺のほうをちらりと見る。
そうだな。この話は俺一人を悪者扱いにするような内容だもんな。
正直言うと、やだ。大体どのツラ下げてサラに会ったらいいの?と感じ。
だが、この方がヤグナーンの大商人との接点がより強くなる、と俺の≪情報整理≫が伝えている。
俺はどこで身の振り方を間違えたのだろう?
自分の命を助けたつもりが、村とサラの命を助けた格好になってるし、サラにはちゃんと奴隷としての契約を果たすよう言ったつもりが、デハイドには恋バナ的に扱われてるし。挙句バナーシに恩を売るつもりが大商人との接点に繋がってるし。
全部、話が大きくなっちゃってる。
これ、弟がよく言ってた『フラグ』ってやつだ。
俺は、流れに任せることにした。
『立てたフラグは回収すること』
弟はそんなことを昔言ってたな。今の俺ならよくわかるよ。回収せざるを得ないんだってことが。
サラにはデハイドから説明してもらうことになった。村長には、この場で隠居願いを、デハイドには売買の委任状を書いてもらい、バナーシはそれぞれの第3者証明書を書いた。
俺は結局、サラを手に入れることになったが、手放しで喜んでいいわけでもない。なんせ当てもないし、将来もないし、この世界の常識を知らないから不安だらけだ。
だが、腹は括った。
後は、なるようになれ、だ。
バナーシと俺は村長の家を辞し、キャンプに戻った。その日はなんかぐっすり眠れたよ。
朝が来た。
俺がこの世界に転移してから7日目の朝。
この世界に7曜はないので、『1週間』という言葉は存在しないことはわかっている。けれど、1年は何日とか、日にちの表し方とか普通誰もが知っていて日常の中で使われる言葉はまだまだたくさんあるのだ。
これら『常識』というものを早く取り込んで違和感のない生活になるようにしなければと決意を新たにし、テントから外にでる。
そこにはサラがいた。
「…エルバード様。ご主人様がお預かりしていたこの紫の剣をご主人様に代わり、お返しいたします。…それと、ご主人様からの伝言です。」
サラは俺に剣を渡し、下を向く。俺の目を見ないようにしている。
「…早く記憶を取戻し、本当の名を思い出すことを心待ちにしている。」
…デハイド殿がそんなことを言う訳がない。あいつは俺の名前の由来は知らないんだ。今の言葉はお前の気持ちだろうが。
俺はサラをまじまじと見つめる。サラは俺のほうを見ずにずっと下を向いている。
「サラ。」
「……はい。」
サラの返事は俯いたままで声も小さい。
「…その様子だとデハイド殿からは何も聞いてないんだな。」
サラは俺の言った意味が分からなかったようだ。顔を上げて俺を見ようとした。だが途中で動きを止めた。
おのれデハイドめ。ここにきて俺に全部押しつけやがったな。
「どういうことで…しょうか?」
俺はどう説明しようか迷ったが、自分の気持ちに正直になることにした。なるようになれ、だ。
「サラ、お前は俺と一緒にナヴィス殿のところに行くぞ。」
「へ……?」
俺の口にした『ナヴィス殿』の言葉を聞いて思わず顔を上げた。俺はすかさずサラにあるものを見せる。
「これはサラの奴隷契約書だ。んで、これがデハイド殿が書いた奴隷譲渡の委任状だ。でもって、これが領兵団長殿が書いた委任状の第3者証明書だ」
俺は3枚の紙をサラに見せる。サラの焦点は見せた紙にいってない。それでも俺は話を続ける。
「委任状には『サラをエルバードに売る』と書いてある。」
サラは目を見開いたままだ。
「ナヴィス殿には奴隷商としてその売買の仲介をして頂く。」
サラは全く表情を変えていないが瞳孔が開き、俺の声が聞こえていることを示している。
「そしてここにサラを買うための金貨がある。」
俺は何枚かの金貨をサラに見せたが全くその金貨には反応を示さない。だが、サラの開き切った瞳を涙が潤ませていく。
「サラ…。これからは『俺の奴隷』だ」
溜まりきった涙がサラの両目から溢れ、頬を伝っていく。それは留まることなく頬から顎に流れ、そこから地面へぽたぽたと落ちていく。
サラの唇が何かをつぶやく。最初は聞こえなかったが、二度目は聞こえた。
「ご主人様と……お呼びしても、よろしいのでしょうか…?」
「いいぞ。まだ(仮)だけどな。」
サラはまた下を向いた。その瞬間に溜まっていた涙が一気に流れ落ち、ぼたぼたと地面を濡らす。
「……抱き着いても…いいのでしょうか?」
「それはダメだ!」
俺の答えにガバッと顔を上げる。だが俺は既にサラの目の前まで歩み寄っていた。そしてやさしく抱きしめた。
「今は俺がサラを抱きしめる。…だから、だめ。」
サラは声にならない声を出して涙を流し続ける。
「ぐす……、ごしゅじんさまぁ……」
サラは俺の腰に手を回し、しがみついて泣き出した。
「ふぇぇぇえん!ぶぇぇぇえん!」
鼻やら喉やら、いろんなとこを鳴らして泣きじゃくる。その声は野営地に響き渡り、なんだなんだとあちこちのテントから顔を出し始めた。
サラちゃん、早く泣き止んで。俺、恥ずかしい。
この回はベタにしたつもりです。
主人公はやや前向き思考になりました。
けれどまだまだ常識の知らない異世界人。
この先、いろんなトラブルを引き起こしてしまう予定です。
次回からはサラとの旅路が始まります。
よりサラのセリフが増えていきます。
彼女の性格をブラさないように気を付けて執筆いたします。