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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第七章◆ 新たなる使命
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4 ウルチ大泣き

久しぶりの投稿です。

ずいぶん時間がかかりました。

申し訳ありません




 銀色の蠍様との交渉は数分で終わった。



 処女獣様の圧力(オネガイ)を受け、俺の出した提案にしぶしぶ了承をされた。


 俺の提案は、


「五ノ島東部の森林地帯及び大渓谷を一時的に金竜族に貸し与える。金竜族は、竜人族の再統一を成し遂げた後、森林地帯を返上する。大渓谷は天蝎獣様を護神地としてこれを守護させる。統一の褒美として西部の砂漠地帯の半分を割譲する。」


 だった。


 魔獣と違い、人間の魔力を必要としないため、天蝎獣様には何のメリットもないのだが、何故か“護神地”という言葉は気に入ってくれたようで、貸し与える場所は難儀したが、護神地の場所は自ら指定してきたほどだ。…たしかこの大渓谷というのは、カミラが言っていた溶岩が噴き出す渓谷のことだな。後でカミラを連れて見に行ってみよう。


 で、問題は完全に俺に服従してしまったこの巨大な魔獣、ベヒモスだ。


 元々は天蝎獣様が自分の土地を守るために強制的に≪魔獣隷属≫させていたそうなんだが、処女獣様の説得(おどし)により、所有権を放棄したので、一応自由の身になっているはずなんだが…。


「お前を連れて回るにはちょっと巨大すぎる…。まずはその体、どうにかならぬか?」


 魔獣は俺の言葉が理解できるようで、コクリと肯くと体を光らせた。巨大な体を光が覆い、その光がだんだんと縮まって行く。そして着物美人さんの胸に収まるくらいの小さな光にまで縮まってようやく輝きが消えた。


 そこには、尻尾を激しく振って愛情を表現する小さなワン公がいた。


「まあ…可愛らしい。」


 そう言って抱き上げて胸でしっかりと抱える着物美人さん。魔獣ベヒモスは見た目は可愛らしい子犬に姿を変え俺に愛嬌を振った。そんなことをされては、嫌とは言えない。そもそも俺は憑代を用意しようと思っていたんだけど…まあいいか。


 俺達は天蝎獣様の礼を述べて洞窟を後にした。島の東部を覆う大森林を丸ごと借りられたので、それをオルティエンヌ殿に報告しよう。ついでにウルチを連れて行こう。

 そんなことを考えながら『エフィの洞穴』に戻ってきた。到着するなり着物美人さんは抱えたワン公を奴隷達に見せてキャッキャ、キャッキャと騒ぎ始めた。それを呆れた表情で処女獣様が見ていた。でも、以前のように怒り心頭することはなく、俺と視線を合わせて軽く会釈をすると奥にあるソファへと向かって行った。…なんかまるく収まった感がする。


 翌日、俺が目覚めると、エフィの指示でカミラが土壁に色を付けていた。明るめの色を魔法で造り出し壁にベタベタと塗りたくっていた。魔法にもこんな使い方があるのか。カミラにやり方を聞くと≪闇魔法≫の吸色という周りの色に溶け込む魔法を応用して色を付けたらしい。

 単なる洞穴だった場所が明るい部屋になった。女の子はいろいろと考える…。見るとヨーコも監修に入っていた。確かに王都にあるアイツの部屋の色遣いは……!




 そこで俺の思考が一旦停止した。




 …そうか!





 王都にあるヨーコの家の謎がわかった!





 間違いない!巨蟹獣の言葉の意味通りなんだ!





 …ヨーコはあの家で誰かと一緒に住んでいたんだ。そして、その誰かは命を落とした…。殺されたのか、寿命だったのかそれはわからない。確実なのは、その誰かは“この世ならざる者”。だから、その存在を全て消され、ヨーコの記憶にも残っていない。

 問題は、あの調度品の具合から、その誰かは……おそらく男だ。そして、ヨーコの恋人だ。

 …くそ!なんてことに気がついてしまったんだ!アイツは恋人の事を忘れて俺と出会って…俺の事を…。


 俺は拳を握りしめた。



 言えない。ヨーコには絶対に言えない。



 言えば、あの子の笑顔を奪ってしまうことになるかもしれない。



 “この世ならざる者”は命を失うと存在を抹消される。恐らく全ての人の記憶から消されるのだろう。


 これは重要な事実だ。



「サラ!急用を思い出した!今すぐ王都に戻る!後のことは頼む!昼には戻るから。」



 俺はサラにここを任せ、≪空間転移陣≫でカイトのいる屋敷へ飛んだ。


 カイトは寝起きの状態だった。突然俺がやってきたことにえらく腹を立てたが、真剣な表情で立つ俺を見て、気持ちを切り替えたようだった。


「…何があったの?」


「…俺達は、何も残らない。」


「は?」


「順を追って説明する。」


 俺は、巨蟹獣から聞いたこと、ヨーコの家のこと、創造神(おとうと)から聞いた魂の浄化の目的を説明した。カイトは黙って聞いていた。そして全てを聞き終えて俯いた。

 暫く考え込んでいて辺りは静寂に包まれる。


「…由々しき問題だな。」


 第一声は思った通りだった。


「君はともかく、僕はそれなりに地位のある人間だ。それが突然忘れ去られるとなると…相当な歴史の辻褄合わせが必要ななる。」


 そこまで言って何かを思い出し、カイトはまた考え込んだ。そしてまた話し始める。


「これは僕の想像だが、多分あっていると思う。…聞くか?」


 俺は黙って肯く。


「“この世ならざる者”には2種類存在する。1つはヨーコちゃんのような前世と同じ姿で転移した者。もう1つは僕たちの様に誰かの身体に転生した者。恐らく存在その者を消されるのは前者だけだと思う。僕たちの場合は魂の浄化に関わる記憶だけが抹消されるのだと思う。…そして両者とも、この世で命を失うことを前提として転移させられている。」

 俺は黙って肯いた。その通りだ。


「そこまでして他の世界から連れて来た魂を使って、世界の崩壊を止めようとしているのであれば…君の言う通り止めるのが精いっぱいだと思う。世界が自己修復する力がどこにも存在しない。君の話では黒い魂の力で四精の代用をしているだけなんだろ?」


「…そうだ。そしてそれではこの世界の自然は回復しない。」


 俺の言葉にカイトは肯く。そして考え込む。


「…エル。」


 普段と異なる真剣な表情のカイト。


「僕は…この世界に生きた証を残したいと思っている。…せっかくの異世界だ。ただ楽しくではなく、後世に称えられるような証をのこしてやりたいと思っている…これは僕の本心だ。」


 初めて真剣なカイトの思い。そして俺に痛いほど強く伝わってくる。


「…考える。神の言いなりになどなるものか。本気で考える。」


 カイトは立ち上がり、拳を握りしめる。歩き出して机に向かい、メモを手に取って俺に渡した。


「五ノ島については、この方針に合うように動いてもらえばいい。これであれば、竜人の国は表向き独立国家と扱うことができる。だが、裏ではヒト族の属国となってもらう。エル…非情になってくれ。それが国家に関わるというものだんだから。」


 わかった。


 俺は、カイトに礼を言い、メモをポケットにしまいこんで屋敷を後にした。

 あいつは辛辣な策謀家だ。目的のためには犠牲を良しとするタイプ。俺とは正反対に位置する智謀の者だ。だからこそ、今俺にとって必要なんだ。俺は個人の感情で動くタイプ。今、個人の為に動くことは危険だ。国王陛下の代理として動いている以上、個人の感情だけで物事を判断してはいけない。


 俺も神々の言いなりにはなりたくない。やらされるだけやらされて跡形もなく消されるなってまっぴらだ。何の為にサラ達に愛情を注いだんだ。


 俺は、久しぶりに感情が高ぶるのを抑えつつ、マイラクトの街へと向かった。

 港にはちょうど船が到着したところのようで接岸の手続きを行っているアリアを発見した。アリアも俺を見つけ嬉しそうに手を振りかえした。手続きを終え、船に戻ると委細を船乗り頭に任せ、俺はアリアを抱えて『エフィの洞穴』へと戻った。




 洞穴では、奴隷達がワン公と戯れていた。愛くるしい表情で尻尾を振り振りしてきゃんきゃんと喜んでいるベヒモスワン公。着物美人さんは「ベッヒーちゃん」と名付けて可愛がっていた。


 …そいつ、魔獣なんだけどなぁ。


 見ると、フェルエル殿…いや処女獣様も、着物美人さんも彼女らに対して何も言ってないってことは安全だと見ていいのかな。


 あれ?フォンだけが遠くから眺めてる。なんだろう?表情が少し怯えている。

 俺はフォンの様子が気になり、彼女に声をかけた。


「…あの子犬…何か…怖い。私の尻尾が、何かを感知してる。」


 見るとフォンの尻尾は垂れ下がっていた。そうか、尻尾で周りの状況が感知できるのか。それもその精度は高いと見た。あのワン公の本来の力を感知しているんだし。…まあ、安心はさせないと。


「フォンの尻尾は凄いな。確かにあれは上位魔獣の仮初の姿だ。だが、安心していい。俺に臣従している。見てろ。」


 俺はワン公を呼んだ。ワン公は俺の声に反応し、着物美人さんの膝上から飛び出した。


「あ、ベッヒーちゃん!待って!」


 思わずサラが声を上げる。ワン公はサラの声に反応し、くるりと向きを変えてサラの胸に跳びついた。

 俺は、無言のままフォンの表情を伺った。フォンは、微妙な不安そうな表情で俺を見返していた。


「…な?」


「意味が解らない。」


 フォンは俺に対し珍しく軽蔑するような視線を送って更に奥へを引き込んで行ってしまった。



 …アホ犬よ。お前には躾というものが必要なようだ。





 皆で昼食を食べた後、俺はフォンとウルチを伴って、海竜族の隠れ家に向かった。ウルチには敢えて何も言わずにしている。先に行ってしまうと会わないと言いだすかも知れないと思ったからだ。それに劇的な再会というシチュエーションもいいかなって思ったし。とりあえず何も言わずに二人を伴って村の中心にある小屋に入った。

 小屋には取り次ぎ役となる、女性の竜人が立っており、俺の顔を覚えていたようで、笑顔で応対してくれた。そして、一旦奥へと下がった。

 俺はソファに座り、その後ろにフォンとウルチが立つ。やがて奥のドアが開き、女性の竜人が出てきた。


「…え?」


 後ろで小さく驚きの声が聞こえた。俺は≪精神魔法≫を使ってウルチの心の状態を確認した。ウルチは自分がこの地に住んでいたころの記憶を目まぐるしく追いかけていた。様々な記憶が彼女の精神世界を駆け巡り、やがて1枚の記憶に辿り着く。


 それは、目の前にいる金竜族の女性との思い出。ウルチもこの女性の事は覚えているようだった。


 俺はソファから立ち上がり、女性に向かって挨拶をした。


「先日の件について、話をしに来た。」


「お座りください。伺います。」


 俺はソファに座り直しチラリとウルチを確認する。その表情は、平静を保っておらず、今すぐにでも金竜族の女性に向かって跳びつきそうな勢い。体を小刻みに震わせ、目の前の状況にどうしていいか反応ができていない感じだった。


「…オルティエンヌ殿、先に後ろの者に声を掛けてやってくれ。もう今にも泣き出しそうだ。」


 俺は女性に向かってウルチに注意を向けるよう促した。金竜族の女性は俺の後ろに控えるウルチを見た。そして体を硬直させた。


「ウ…ウルチ…?」


 ウルチの目から大粒の涙がこぼれた。


「あ…姉御!」


 …あーここは“姉御”で通ってんのか。感動的な再会シーンにちょっと似つかわしくない言葉だけどまあ、いいか。

 俺はもう一度ソファから立ち一礼する。


「オルティエンヌ殿、用事を思い出した故しばらく席を外す。ウルチ、お相手せよ。」


 そう言うとフォンを引っ張って一旦小屋を出た。



「…あ、ああ~んん!!!!」


 ウルチの大泣きする声が聞こえた。フォンは中を見たそうに振り返ったが、俺はその顔を無理やり反対に向けた。


「フォン、無粋だ。」


 残念そうに指をくわえるフォンを引っ張り小屋から少し離れて俺はゆっくりと空を見上げた。





(…エルバード殿、お待たせ致しました。)

 俺感覚で30分くらい経って≪遠隔念話≫を受けた。


(俺の奴隷が失礼をした。そちらに向かう。)


 俺は念話を切り、ウトウトと寝掛かっていたフォンをペチペチ叩いて起こしで、再び小屋に入った。

 小屋では、ウルチが改まったように畏まって膝を付いていた。


「御主人様、改めてお礼を申し上げます。僕の私事にご配慮頂き光栄の極み。これからは更なる邁進を誓い、ご主人様へのあらゆるご奉公を…ふげっ!」


 俺はウルチの脳天に唐竹割りをお見舞いした。…全く。アンナの影響を受けたのか長ったらしい遠回しな物言いを…。


 オルティエンヌはその様子を見てクスリと笑った。


「アタイからも礼を言います。…あの日以来アタイはずっと心配しておりましたが、今日ほど…今日ほど嬉しい日はございません。ありがとうございます。」


 オルティエンヌは俺に深々と頭を下げた。俺は何も言わずウルチを立たせてソファに座り直した。


「この話はもうおしまいだ。問題は何も解決していない。」


「そうですね。ではお話を伺います。」


 オルティエンヌも俺に対する位置に腰を降ろした。



 俺は、カイトからもらったメモを元に話を進めた。


 ヒト族には金竜族を支援する用意がある。それは、人員や資金ではなく、武器と食料その他資材として。だが、それを表だって供与することはできない。よって、エルバード卿から購入する形式を取ってもらう。

 加えて拠点の移動。五ノ島東部の森林地帯にいくつかの拠点を用意する。その為の資材も全てエルバード卿から購入してもらう。

 そして灰角竜族と対峙するための戦略、戦術もエルバード卿と通じて準備する。金竜族においては、その為の情報収集と決戦のための人材収集に注力せよ。


 一通り読み終えてから、俺は舌打ちした。事前に呼んでおくべきだった。この内容だと俺はフル活動しなきゃならないではないか。

 そして、ヒト族からの要求事項を読み上げた。


 1.ヒト族との国交を無条件に解放


 2.五ノ島に大使館の設置


 3.国家資金を無条件に開示


 4.兵力増減の報告義務



 俺の読み上げる声に、オルティエンヌは無表情で聞き入っていた。ウルチとフォンは正直青ざめていた。


 完全に属国に対する扱いととらえられる内容。そして、それを全く意に介していないかのように淡々と喋る俺。…いや、俺も苦労して表情消してんのよ。

 読み終えて俺はそのメモをオルティエンヌの前に差し出す。彼女はそのメモを確認した。最後にカイトのサインがある。このサインがどれほどの効力があるか知らんけど、正式文書っぽい雰囲気はある。

 金竜族の姉御はメモを置き、自然な笑みを俺に見せた。


「アタイが考えていたよりも、優しい内容です。今のヒト族の王は甘いのではないかと疑ってしまいます。」


「…陛下は、亜人に対する偏見はありません。むしろ共存を望んでおられる。」


「わかりました。この条件、全て受け入れましょう。ですが、アタイの目的は金竜族としての“棟梁”の奪還ではありません。あくまでも全部族との“共和”であることを理解してください。」


「承知した。」


 俺は右手を差し出した。オルティエンヌは何のためらいもなくその手を握った。

 俺は笑顔でその手を握りしめたが、内心は複雑だった。



 彼女は統治者には向いていない。象徴としては申し分ないのだろうが。



 俺はもう一度ソファに座り、実務的な内容を進めた。

 海竜族も含めて、東の森に移動する人員。それらが居住するのに必要な家屋の数、食糧、武具一式、その他資材。


 …うん、案の定、彼女は把握してなかった。わかってたんだけど。

 そこで、まずは現状把握することを依頼し、俺に従う竜人を数名求めた。姉御に呼ばれて小屋に5人の竜人がやってきた。

 海竜族の若頭、アルディ。金竜族の若き騎士スウェーヌ。赤眼竜族のベルサ。森竜族のベルー。十二指竜族のヴォーヌ。

 いずれもベルサのせいなのか、俺に忠誠を誓う恰好で礼をする。俺は云いたいことを飲み込んで5人に指示をした。

 ベルーとヴォーヌに現状把握を、ベルサへは灰角竜族の動向を監視、アルディとスウェーヌは俺と一緒に東の森に来るように指示した。そしてオルティエンヌにはいつでもこの村を出て行けるように依頼した。




 若い竜人に拠点候補をいくつか見せたあと、いつまでにどこへ何人移動させるか検討するよう指示し、“エフィの洞穴”へ戻ると問答無用でサラを連れて王都へ移動した。事情を全てサラに説明し、ナヴィス殿から資金と資材を提供するよう説得しろと命じてベスタさんに預けた。

 次にライラさんを伴ってカルタノオに移動し、バジル商に向かった。ライラさんに食材を準備するよう依頼して、五ノ島へと戻る。

 そしてエフィとカミラを連れて四ノ島へ跳ぶ。そこは年中吹雪く雪山(アスプロヴノ)の中腹。彼女達には≪土魔法≫と≪闇魔法≫を駆使して、雪の大きなブロックを作るよう指示した。

 これで、資材、食材、水は確保できた。後は武具類だが、ナヴィス殿もライラ殿も武器類の取引はあまりやっていないし商売敵は紹介してくれないだろう。他に武器を扱う商人を紹介してもらえそうな人は…。


 カイトの野郎は忙しいって断られた。


 ファティナ殿も無理って言われた。


 残るは侯爵閣下か…。でもあの方には借りを作りたくない…。あ~でも他にいないし。




 結局、俺はヤグナーン侯爵に連絡を取り、武器を取り扱う商人を紹介してもらった。もちろん、いろいろ約束させられたけど。武器商人とはカルタノオで会う約束をして、一先ず“エフィの洞穴”に戻った。

 いつも騒がしいサラ、エフィ、カミラがいないので、静かな洞穴内。俺を見つけてウルチとアンナが片膝を付く。もう完全にアンナ病がウルチにも感染ってるわ。二人に楽にするよう言ってソファに座る。着物美人さんがアホ犬を抱えて俺の隣に座った。


「…貴公、この国に干渉するのか。」


 魔獣からすれば、どうでもいい事のはずだが俺に質問してきた。


「はい。それが我が国と竜人族との関係改善の近道と思いました故。」


「我は2000年もの間、人間どもの営みを見てきたが、何を求めているのかいまだにわからぬ。」


 俺は黙っていた。


「それに、あの少年…。創造神様は何故あの少年を貴公に託したのか…。」


 それは、俺が神に近いチカラを持っているから…ではないな。何故だろう。弟はアユムを魔族との最終決戦のために…という言い方で俺に任せた。それは神が人間側に加担したということ?いや、弟はともかく、六柱神は納得しない。神は中立のはず。それが何も文句を言っていないということは、勇者という人物を与えることに意味があると考えるべきか…。いや、此の世界では神は中立ではないのかもしれない。そもそも、魔族って何?


「九尾妖狐殿、魔族とはいったいどのような…種族なのです?」


 俺は魔族について聞いてみた。考えてみりゃ名前しか知らない。着物美人さんは少し上に目線を写し何か考えてニコリとした。


「それは六ノ島に行ってからにしましょ。」


 俺はどう返答すべきかかわからなかった。魔人族の島…魔族との関連があるということ?もう一度聞こうとしたが美人さんは拒絶の笑顔を俺に向けている。俺は深呼吸して話を切り替えた。


「九尾妖狐殿、アユムの件…手伝ってもらえませんか?」


着物美人さんは少し上に目線を写し何か考えてニコリとした。


「いいわ。創造神様が何をなされるおつもりか知りたかったし。」


 アンナには剣の指導を。


 妖狐殿には魔法の指導を。


 そしては俺はスキルの指導を。


 これで、勇者を育てる布陣の恰好だけはついたな。後はあの子のコミュ症をどう改善していくか。まあ、あんだけ周りに美少女がいれば、そのうち改善できるか。



 夜になり、再び四ノ島へと跳んで、大量の雪ブロックを前に全身をブルブル震わせていたエフィとカミラを拾い、雪ブロックを≪異空間倉庫≫に押し込んだ。洞穴に二人を置いてカルタノオでベラを回収。ライラ殿から食材を大量に貰い、お礼を言う。即金で支払う俺を見てちょっと引かれた。


「貴族でもないあなたから簡単にこれほどの大金を出されると私の常識感が狂いそう…。」


 そうでもないんですよ。ライラさんへの支払いで残金がかなり減ったんだから。


 俺は用意された大量の食材を≪異空間倉庫≫に仕舞い込み、ライラさんを抱え洞穴と転移した。転移後、ライラさんを下ろす瞬間に軽く口づけされた。


「な…なんでしょう?」


「…なんとなく。」


 そう言うとそそくさとソファに座り、何事もなかったようにくつろぎ始めた。




 俺は見回した。




 ヨーコと目が合った。おかんむりだ。



 俺は瞬間土下座をやってからサラの元に転移(とうぼう)した。




 転移した先ではナヴィス殿がサラに説明をしている最中だった。


 何を?


 代金の話をだった。バッドタイミング。


 話はそのまま俺の方に移動し、持ち金では足りず、支払の交渉をするが全面敗訴。多額の借金を背負うことに。…まあその返済は全額カイトにさせるけどね。


 俺は、資材を≪異空間倉庫≫に仕舞い、サラを抱き上げて…


「あ、あの!ご主人様!」


 サラが転移しようとした俺を引き止めるように声を掛けた。


「どうした?」


「あの…ヤグナーンのおうちに…行きたいです。」


 恥ずかしそうな表情で懇願するように言うサラ。


「どうした?ヤグナーンに忘れものか?でもお前の持ち物は全部そのかばんの中だろ?」

 奴隷は自分の所有物はほとんどない。衣服くらいである。当然サラも服以外の自分の所有物は無いはずだが…。


「い、いえ、あの…その…。」


 サラのモジモジ度が増していく。




 …あー何となくわかった。


 うん、そうね。最近は忙しかったし、他の娘がいたからね。


 俺は軽くサラの頭を撫でて肯いた。


「悪いなサラ。最近は忙しかったからな。」


 俺はヤグナーンの自宅へと転移した。




 時間にして約3時間。




 俺はたっぷりとサラと楽しんだ。




主人公は楽しみました。

…うらやましいです。


次話では、徐々に竜人族内の抗争に踏み入ってしまいます。


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