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プロローグ1

02/28 いろいろ勉強して読みやすくする為の見直しを行いました。

03/01 ルビの使い方を覚えました

09/26 誤字修正


 ……弟は何故死んだ?


 ようやくいい友達に巡り合え、昔のように笑顔を取戻し、外にも出られるようになった途端だ。


 弟は友達と自転車に乗って少し遠くにあるコンビニエンスストアに向かった。今はまっているオンラインゲームのコラボ商品を買う為で、出かける直前まではしゃいでいた。弟は俺に「行ってくる!」と言って友達と家を出て行った。




 そこで強盗に遭遇し、運悪く刺された。




 警察から連絡を受け、病院に到着した時には息を引き取っていた。俺は弟も会うことすらできなかった。弟はICUのガラスの向こう側で顔に布をかけられていた。取り乱していた俺は病院の中で大声で叫び続けた為、警察の人に別室に連れて行かれてしまい、弟に会うことができなかった。

 やがて警察の人が司法解剖の確認を取りに俺に話しかけてきたがほとんど聞いていなかった。そして弟は警察病院に移動し、司法解剖を受けその後警察署の霊安室に移された。


 死因は喉の殺傷で呼吸ができなくなったことによる窒息死。そこでようやく弟と対面した。


 俺はその霊安室でただ突っ立って弟の亡骸を見つめている……。




 窒息死なんて……苦しかったろうに。








 弟の名は良聖(りょうせい)。俺が6歳の時に生まれた。


 小さいころからゲーム好きで友達とオンラインゲームとやらを楽しむ普通の男の子だ。両親は弟が小学6年の時に事故で他界してしまい、当時高校3年だった俺は高校を中退して就職。俺は、自分と弟の為に必死になって働いた。

 弟は中学に進学してすぐに凄惨ないじめに遭い、不登校、引きこもりの生活に。その時は俺すら遠ざけて過ごすようになってしまった。俺は仕事の傍ら、一所懸命弟の面倒を診た。たった一人の家族の為に、昼も夜も働いて金を稼いでは弟の看病のために使った。


 そして弟が中学3年になった。

 本気で弟とぶつかってくれる友達が現れ、弟は徐々に外の世界に目を向けてくれた。弟は自分のためにいろいろと尽くしてくれた俺のこともわかってくれた。お礼も言ってくれた。これから一緒に頑張ろう、とも言ってくれた。





 その矢先だった。



 良聖……なぜ死んだんだ?



 俺は、ただ繰り返し自分に問いかけていた。





 弟と俺は家に帰ってきた。


 中学校の校長がやってきて弟の葬式を全てとりしきらせてほしいと言ってきたが断った。


「お前らは俺の弟を見たことがあるのか?」


 何も言い返せなかった校長と弟のクラスの担任。二人とも俺の弟には一度も会っていない。不登校を何とかしようとしていたかどうかも怪しい。ただ、社会的な体裁を取り繕うために、葬式を取り仕切らせてほしいと言っている。だから断った。他にも何人か来たが誰にも会せなかった。

 親戚のいない俺たちはすぐに簡易的な葬式を行い火葬も済ませ、小さな壺に弟を入れて住んでいるアパートに帰ってきた。



 だけど……。



 あの時、一緒に頑張ろうと言った弟は小さな骨壺の中……。



「これじゃ一緒にがんばれないじゃないか……」



 俺は誰に聞かせるわけでもなくつぶやいた。



 壺をテーブルに置いて呆然としていた。そして泣いた。


 家について、弟がいなくなったことを実感したのだ。これまでは、引きこもりのせいもあり、家には弟の声が聞こえていた。弟が中学3年になってからは、友達のおかげで徐々に会話するようになっていたんだ。毎日、他愛もないことから、俺の仕事での苦労話、弟がはまっているゲームのよもやま話、いろんな会話をしていた。



 この家には音があったんだ。




 ……あったんだ。






 事件が起きてから1週間が経った。

 コンビニ強盗は、弟を刺したあと、その友達を拉致し行方をくらましていた。それが今朝発見されたそうだ。



 友達の遺体と共に。





 ……俺、本気で独りぼっちになったようだ。








 俺は引きこもった。弟の部屋に引きこもった。


 部屋には弟の為に買った本がたくさんある。俺はこれらを読んだことがなかった。仕事仕事で時間がなかったせいもあるが、興味もなかったので読まなかった。でも弟が毎日の会話の中でいくつか聞かせてくれていたので、どんな内容なのかはある程度はわかる。


 俺は弟の本を読み始めた。興味を持ったからではない。読むことで弟との思い出を忘れないようにするために。


 ひたすら読み続けた。読んでは中身を考察し、弟が言っていた意味を理解する。


 「聞いてた当時は何のことかわからなかったんだがな。いまはよくわかる」


 理解できないものは理解するまで読み直し、弟が持っていた知識をひたすら叩き込む。そうすれば弟が生きているような気がするかもしれない。


 俺は、食事もとらずただひたすら本を読み続けた。全ての本を読み終え、中身を理解しきったところで俺は息を引き取った。



 ……死因は餓死だった。


 死後1か月した頃に異臭騒ぎの通報で発見されたそうだ。







 そう説明された。目の前の女性に。





 俺は真っ白い空間にいる。





 ……なんで?


初投稿です。

拙い部分もあるかと思いますが、長い目で見て頂けるとありがたいです。

週一ペースというゆっくりとした投稿になると思います。

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