偶然の再開
なずなを説得してから翌日が経った。
仲春とつぐみは生徒会室でなずなと話をしていた。
「それで、仲直りするにはどうしたらいい?」
「直球すぎやしませんか……」
「し、仕方ないじゃないか。本当にわからないんだから」
部屋の中が静まる。
頭の中で必死に考える。
『才能』『嫉妬』『嫌悪』『一方的』
それらの言葉から成り立つ、なずなとその姉の姉妹喧嘩。
いや、喧嘩という言葉は間違っているかもしれない。
これは、姉のくだらない嫉妬心から発した問題である。
この問題を解決するにはなずながどうこうするより、姉をどうにかしたほうが得策だろう。
「お姉さんをどうにかしたほうがいいと思いますね」
「やっぱりハルもそう思うよね……」
仲春は頷く。
「そうは言うけれど、私がなにを言っても聞く耳を持ってくれないんだよ」
「それなら、俺たちがまず説得してきちんと話を聞いてもらえるようにしましょうか?」
「いや、それはしなくていい。話を聞いてもらうのも私がやるべき『努力』だと思う」
「……わかりました。でも、自分たちの間でなにかアイデアがでたら伝えますね」
「うん。そうしてくれると助かる」
そうして、仲春とつぐみは生徒会室から退出した。
一人残されたなずな。
「どうすればいいんだろう……」
一人残された彼女は悩みに悩んだ。
そして、5日が経った。
結局、なんの案も浮かばなかった。
「もう、今年も終わりますね」
「あと一週間か。一年は経つのがはやい」
「今まで何年過ごしてきたんですか?」
「この17年間の人生を50回はやってきたかな」
「50…!?」
「このループが始まる前は普通に仲が良かったのだよ。私のこの運動能力は『司者』によるものだからね。
それはそうと今日は君たちの家に行ってもいいかな?」
「どうしてですか?」
「作戦会議というものだよ。たまには場所を変えて雰囲気をだそうじゃないか」
「いや、生徒会室でやる方が作戦会議の雰囲気がでると思いますよ」
「それもそうか……いや、そうだな。つぐみちゃんの手料理が食べてみたいという理由はどうかな?」
「え?私ですか!?」
「そうだよ。だって、あんなにおいしそうなものを毎日食べてる仲春君がうらやましくてね」
「そ、そこまでいうのでしたら、別に構いませんよ……」
「それじゃあ、終わり次第行くわよ」
そして、終業式はなんの滞りもなく終わった。
「さて、早速行こうか」
なずなはわくわくが止まらないようった。
その後、三人は家に到着した。
仲春は玄関のドアを開け、その異変に気付いた。
「誰のくつだ……?」
玄関に見覚えのない靴があった。
「どうしたの?」
つぐみが仲春に尋ねる。
「ん?この靴見たことあるな…」
そう言って、つぐみの質問に答えることなく家にあがりリビングへ向かう。
「やっぱり、あなたですか……なにしてるんですか……」
「あ、おかえりー」
そこにはリビングのソファでくつろいでいたやまめがいた。
「いやーそろそろ帰るころと思ってたよー」
「今日平日ですよ。仕事はどうしたんですか?」
「休みだよー」
「OLなのに?」
「有給というものがあるのだよ」
「なんのために休んだんですか?」
「なんとなくよ」
「なんかかわいそうになってきました」
「どういうことよ!」
そんな時、つぐみとなずながリビングに入ってきた。
「ハル―、一体どうしたの―――って、なんでここにいるんですか、やまめさん」
「やまめ……?」
その名前になずなが反応した。
そのやまめと呼ばれる人間を確認しようとつぐみの背後から顔をのぞかせた。
「ちょっと、幽体になって玄関を―――ッ!!」
その時、やまめの表情が変わった。
その一瞬にして怒りにみちた表情になっていた。
「ねぇ、なんでここにいるのかしら。なずな」
「お、お姉ちゃん……」
やまめの目はなずなをとらえていた。




