努力への決意
二人の通う学校の生徒会長、初空なずな。
容姿端麗で、全国模試10番以内に入る才女。
さらにスポーツもなんでもできる完璧な女性だ。
「見られる前にやるつもりだったけど……仕方ないね」
「ちょっと待ってください!!なんで会長が!!」
「誰に、この世界の秘密を聞いたの?」
「……ある人に」
「そう。世界の秘密を知っているなら、なんでかはわかるよね?」
「世界を繰り返すため……」
なずなは先の攻撃で頬にかすり傷ができ、血が垂れていた。
それを拭い、話し続ける。
「そう。私は世界を繰り返すの。お姉ちゃんと仲直りするために……。だから佐保姫つぐみちゃん、私に殺されて」
「ッ……」
「そんなことはさせません……」
「ふふっ、やっぱり仲がいいわね。羨ましい、そして妬ましい。なんで私たちがこんなに険悪な関係になって、
あなた達が仲睦まじく暮らしてるのよ‼」
その声には怒気が孕んでいた。
「私はお姉ちゃんのことが好きなのに、お姉ちゃんは私のことを嫌う。私はそれを10回以上も繰り返してきた!
なのに、なんで仲良く暮らせないのよ!!―――だから私はまた世界をやりなおしたい。だからつぐみちゃん、殺されて頂戴」
なずなは勢いよく駆け出す。
その中で左手にも氷を纏う。
そして、両手で舞うように仲春に斬りかかる。
仲春は防戦一方。
二刀流により反撃するタイミングが伺えないのもあるが、一番は相手が自分の知っている人だからだ。
もし相手が見知らぬ人なら、迷うことなく相手を殺すことができたかもしれない。
でも、今の状況は違う。
会長とは何度か話したこともある。
(会長はずっと私のことを狙ってたの……?
初めて話した時も、今日相談にのってくれた時も……)
つぐみはなずなといた時のことを思い返した。
ずっと自分のことを狙っていたと思うと裏切られた気持ちになった。
「会長!なんで、繰り返して仲直りしようとするんです!!なんで、この世界で仲直りしようとしないんです!!」
なずなは攻撃の手を止める。
「君にはわからないだろうね……兄弟というものは君たちみたいに仲がいいのが当たり前じゃないんだよ。
私たちみたいに仲が悪いのが普通なんだよ。一度、仲が悪くなれば仲直りすることはできないんだよ」
「俺たちだって仲が悪くなる時だってあります。それでも、仲直りしてきましたよ」
「だから……君たちと私たちは違うんだよ。君たちは喧嘩したとしても、自分が悪いって思うことができて、
すぐに謝ることができる。昨日のことだってそうだろう?全部、つぐみちゃんから聞いた。そして、君たちが仲直りしてるとこも
見させてもらった。お互いが相手に対して素直になれるからすぐに仲直りできるんだよ。仲直りするにはお互いが素直にならなければならない。
でも、私たちの場合は違う。お姉ちゃんが素直になってくれない。お姉ちゃんが、自分が悪いんだって思ってくれない。だから―――」
「会長」
仲春がなずなの話を遮る。
「会長だって素直になってないじゃないですか」
「何を言っている。私はちゃんと―――」
「仲直りできないのは姉のせいにしてるじゃないですか。自分が悪いとは思っていないじゃないですか」
「私はちゃんとそう思っている!!でも……どうしようもないんだよ……。
君たちが知っての通り、私は努力しなくてもなんでもできる。だから、お姉ちゃんは私のことを妬んでいる。
お姉ちゃんは私の生まれ持った才能を妬んでいるんだよ……。お姉ちゃんは何もかもが普通な自分が嫌いだった。
そして、特別な私が嫌いだったんだ……。
ねぇ、才能は今さら捨てることができないんだよ。だから、いくら私が悪いと思っても何もできない。
ただ謝って、ただ冀うことしかできない」
「会長は……会長はなんでもできるっていいましたよね!?そう言ったんだから、仲直りぐらい簡単にやってのけてくださいよ‼
この世界には会長のようにやり直したいと思う人がたくさんいるかもしれない。でも、俺のようにこの世界で生き続けたいと
思っている人も同じぐらいいるんです‼自分の願いのためだけに他人を巻き込まないでください‼
それに会長、努力しましょう……。初めて、努力しましょう。きっと、その努力はとても価値あるものになるはずです」
「……」
なずなは仲春の言葉に反論しようとしない。
「努力、か……。そういや、一度もしたことがなかった……」
両手に纏われていた氷が融ける。
「二人とも……手伝ってくれるかな……。私ひとりじゃ怖いんだ」
なずなは仲春を見る。
すでに仲春の髪は元に戻っており、隣になずなが立っていた。
「もちろんです。今までたくさん相談に乗ってくれましたから、今度は私が会長を助けます」
「俺も会長を助けますよ」
「ありがとう……私、がんばってみるよ……」
なずなは二人に笑顔を見せる。
その笑顔には、少し心が晴れた様子が伺えた。




