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去りぬ想い、去りぬ世界。  作者: 猫樹政也
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襲来

そして、放課後。

いつも通り、つぐみが仲春の教室にやってくる。


「ハル、帰るわよ」

「あぁ、すぐに準備する」

「それじゃ、仲春また明日な」

「おう、また明日」


仲春とつぐみは二人そろって、教室を出ていく。





昨日、仲春とやまめが出会った公園を歩いている。

この公園は二人の通学路である。


自然に囲まれ、ほぼ中央には小さな池。

その周囲はランニングコースとしても人気で、人の交通量も多い。

また、子供たちが走り回れるような広い芝生の広場もある。


「今日は一段と寒いな」

「そうね。明日は雪でも降るかもね」


つぐみは口元をマフラーで隠す。

つぐみが首に巻いているマフラーは、二人が出会った日に仲春がつぐみに渡したものと同じ柄のものである。

さすがにあのころのものでは小さく、買い替える時につぐみが自らこれをねだったものだ。


そして、仲春のマフラーはそれの色違い。

つぐみがクリスマスにあげたものである。


「ん?」


その時、仲春は正面からやってくる不審な人影に気づいた。

それは一目見れば不審に思わざるを得ない。


いくら冬とは言え、全身を覆う黒いコートは明らかに怪しい。

フードを深くかぶってるせいで、正面であっても顔が目視できない。


二人はその人物を避けようと横にずれる。

が、ほぼ同時に二人と同じ方向へずれる。


そして、また二人は横へずれようとするが―――


「!?」


気づけば、その人物は二人の目の前にいた。

3メートルほど離れたところから、刹那にして距離を詰めたのだ。


二人は状況を理解できていない。

そんな二人を無視して、貫手がつぐみを襲う。


それを仲春は目で捉え、つぐみを庇おうとするも間に合わない。

中指がつぐみの腹部に触れようとする瞬間―――


「!?」


動きが止まった。

謎の人物の手はつぐみの腹部に触れる直前で止まっていた。


「ハル‼」


つぐみが仲春の手を引いてその場を逃げ去った。


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