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去りぬ想い、去りぬ世界。  作者: 猫樹政也
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世界の真実

「つぐみ?どうしたんだボォーっとして?」

「え?あ、ごめんね。ちょっといろいろ考えてて」

「そうか」


気づいたら自宅についていた。

ふと、玄関の横を見る。

自分があの日、座っていたところだ。


(ありがとね、ハル。大好きだよ)


そう心の中で言って家の中へ入っていった。


台所で買ってきたものを広げていると仲春があることに気が付いた。


「うわ、醤油買い忘れた」

「もう、何やってんのよ」

「仕方ないか。また出てくるから」

「わかった。気を付けてね」


仲春は急いで家から出ていった。


「あ、トートバック……ま、いっか」


残されたつぐみは買ってきたものを冷蔵庫へしまい始めた。



そして、約15分後。

仲春は醤油の入ったスーパーの袋を提げて帰路についていた。

公園の中の道を歩く。


「少し急ぐか」


そう言って、小走りを始めようとした時だった。


「ちょっと!そこの少年!!」


何やら女性の声が聞こえた。

ただ、気に留めようとは思わなかった。


『そこの少年』なんてそこらじゅうにいそうな気がしたからだ。


「そこのスーパーの袋を提げている少年!!」


これには反応せざるを得なかった。

もしかしたら、スーパーの袋を持っている少年なんているかもしれないけど。

自分に当てはまっている特徴を言われたら、もしかしたら自分のことでは?と思うの致し方ない。


声のする方を見れば、20代半ばの女性と同じ年代ぐらいの男性がいた。


「そうそう、君!」


目があった。その女性と目があった。

完全に自分のことを言っていると認識した。


「ちょっと、この人がしつこくてどうにかしてちょうだい?」


たぶんナンパでもされているのだろう。


「え、いや、あの……がんばってください」


見捨てることにした。


かかわると面倒なことになりそう気がした。

男のほうの見た目なんて、かかわったら面倒なことになりそうな身なりをしている。


仲春はそのまま見過ごそうとした。


「どうやら助けてくれないみたいだし。あきらめて俺についてきてよ。つまらなくはさせないからさ」


予想通りのナンパだった。


「あーー!もう!!」


女がついに怒った。


「あれ?」


背後で男が頓狂な声を出していた。

気になって後ろを見てみる。


するとそこには先ほどの女の姿はなかった。

男が一人、そこにいるだけだった。


「さっきの女はどこにいった?」


男はあたりを見渡す。


「あ~、もういいや。次、行こ」


男はこの場から去っていた。


「さっきの人はどこに行ったんだ?」

「ここにいるわよ~」

「!?」


頭に先の女の声が聞こえてきた。


「ど、どこから!?」

「よいしょっと……」


そして、女一瞬にして目の前に現れた。


「いやー、ありがとね。助かったよー」

「い、一体……」

「事情を説明したいのは山々だけど、外じゃ寒いじゃない?」

「そう、ですね……」

「というわけで、あなたのお家に招待してもらえる?」

「は?」


つい、年上に『は?』なんて言ってしまった。

それほど、彼女の言ったことは突拍子もなかった。


今日初めて会って、尚且つ名前も知らない相手の家にお邪魔するだろうか。


「ほら、早く連れてって頂戴」




「で、どういうこと?」


結局、連れてきてしまった。


「いや、いろいろあってだな」

「なんで、醤油を買ってくるだけで、女の人を連れてきてるの?

 なに?もしかして醤油じゃなくてその人を買ってきたの?」

「んなわけあるかっ」

「なになに~、修羅場?」


なぜか、玄関で修羅場に近い展開が繰り広げられていた。


「はぁ~……」


結局、女の人を返すことはできずにこのまま居座ることになってしまった。

今は仲春とつぐみが三人分の食事を作っているところである。


「まるで、夫婦みたいね」


包丁が勢いよく大根を切り裂いた。


「な、何をいってるんですか!?私とハルが夫婦なんて、ありえないことを言わないでください!!」

「ふっふっふ~」

「つぐみ、包丁持ってるんだから気をつけろよ」

「わ、わかってる!!」


時々、彼女のからかいが邪魔をするも三人は食事を終えた。


「で、説明を……」

「はいはい、わかってるわよ。それにしても……」


彼女はつぐみを見つめる。


「つぐみちゃんにも関係あるみたいだし」

「どういうことですか?」

「まぁ、先に自己紹介しておくわ。私はやまめ。よろしくね。

 で、何を言うべきなか迷うんだけど、スケールがでかい話になる上に、漫画のような話になるけどいい?」

「それで説明できるなら」

「それじゃ、質問は最後にまとめて聞いてちょうだい」


二人は頷いた。

そして、やまめは一呼吸おいて語りだす。


「まず、このままだと世界は滅ぶ。そして、新しい世界が始まる」


二人はいきなり質問を投げかけそうになった。

だが、約束した通りここは抑える。


「この世界は何回も壊されて、何回も作り直されてきた。簡単に言えばループしてきたの、この世界は。

 で、ループしている原因なんだけど―――『司者ルーラー』。『司る者』と書いて『司者』。

 司者は7人いるのだけれど、その7人にはそれぞれ自然の力が宿っているの。一人に一つの自然の力。

 炎・水・木・土・雷・雪・風の7つね。自然を司るから司者というわけらしいのよ。

 

 それで、その司者に対抗するのが『亡霊ゴースト』。これが私の正体よ。

 亡霊は文字通り幽霊。でも、実体はあるし生きている。亡霊と言われる所以は、一つ前の世界で死んだから。

 一つ前の世界で死んだ人の一部が亡霊となり、自然の力を分割されて体内に入れられる。

 

 司者は自分と同じ自然の力を持つ亡霊を探し出して、殺して、奪い取る。

 すべての司者がすべての力を取り戻したら、この世界が終るの。世界のリセットが始まる。

 ちなみに、司者に殺された亡霊はそれ以降の世界から存在しなくなる。

 その逆もまた然りよ。


 それで、止める方法なんだけど。司者を全員殺せばいい。ただそれだけ。

 でも、彼らは自然の力を放出できるから簡単には殺せない。それに対して、私たち亡霊は無理。

 亡霊が自然の力を放出するためには、普通の人間に憑依する必要があるの。

 それで初めて司者と戦える。

 

 おおまかな説明はこれくらいかしら」


「質問。これまで何回リセットしてきたんですか?」

「それはわからない。私は今回が初めての参戦だし」

「それじゃ、なんでさっき話したこと知っているんですか?」

「気づけばこの知識を持っていた。ちなみに亡霊は前回の世界の記憶を引き継いでいるの。私もちゃんと記憶があるわよ」


「それじゃ、つぐみに関係があるってどいうことですか?」

「そうね。彼女も亡霊だから。記憶、あるでしょ?」

「つぐみが、亡霊……?」

「ない……ないです!そんな記憶!」

「ウソつかないで、ちゃんとあるはずよ」

「待ってください、やまめさん。つぐみには本当に記憶がないんです。

 こいつは8歳より前の記憶がないんです」

「なんなの?記憶喪失ってやつなの?」

「たぶん……」


「んー、まぁいいや。それでね、あなたは雪の亡霊。ほらつぐみちゃん、私の胸のあたりを見てみなさい。何が見える?」

「……青色の炎みたいなのが」

「色で何の自然の力なのかがわかる。私は水で、つぐみちゃんは銀白色だったから雪よ。あ、そうそう。亡霊は金縛りも使えるから覚えとくと便利よ」

「事情は大体理解できました。もしかしたらつぐみのところにも司者が来ることもありうるんですよね?」

「ほぼ確実よ」

「わかりました。それだけ確認できればいいです」

「……人殺しする覚悟を決めた?」

「司者は人……」

「そうよ。だから人殺し。司者を傷つければ、ちゃんと血が出るわよ。それでも彼女を守るの?」

「……はい」

「そう。がんばって頂戴ね。それじゃ、私はそろそろ帰ろうかしらね。ごはん、ごちそうさまでした」


そう言って、やまめは立ち上がりこの家から出ていった。

椅子に座る二人。


「人殺しなんてダメだよ、ハル……」

「それは、お前の本心なんだろうけど、俺はやる。じゃないと、お前を守れないだろ」

「こんな……こんな私なんて守らなくていいんだよ、ハル。昔の記憶なんてなんにもなくて、家族なんてなくて、

 ちゃんとした名前もなかった私なんて気持ち悪いだけだよ。

 それに、あれが本当ならこのまま私が殺されて、このまま世界がリセットされて、ハルはお父さんと二人で今のように苦労せず、

 楽に過ごせばいいんだよ、ハル……」


パンッ


乾いた音がリビングに響いた。


「え……は、ハル……?」


仲春がつぐみの頬をはたいた。

決して力を込めたわけではないが、痛みは十分に感じる。


「ハル……どうして……?」


仲春の顔は怒りの感情が表に出ていることは一目瞭然だった。


つぐみは勢いよく立ち上がり、二階へ駆け上がっていった。


「つぐみ、ごめん……。でも、『家族なんていない』『名前もない』『今のように苦労せずに楽にすごせばいい』って、そんなこと言わないでくれ……」



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