もう一度会いたい
私は、やっとのことで結ばれた二人を見守った後、ふと校舎裏の駐車場に目を下した。
そこにかすみがいた。
もっと近くで見たい。
そう思って、彼女の頭上へ私は移動した。
かすみともう一人そこにいる。
仲のいい同僚の女性の教師だった。
話をしているみたいだ。
「かすみは結婚とか考えないの?そろそろ30でしょ?」
「んー、結婚したいけど、だれかと付き合いとは思わないんだよねー」
「今まで付き合ったことあるでしょ?」
「え?ないよ?」
「え……それ本当なの?」
「ほんとう」
「なんで?」
「さっき言ったけどだれかと付き合いたいと思わないの」
「恋に冷めてるってわけね」
「いや、あのね、冷めてるってわけじゃないの。ただ、私にはもう好きな人がいるんじゃないかって思って」
「なにそれ?」
「前世からの運命とかよく言うでしょ?あれに近い感じかなー」
私はその言葉に衝撃を受けた。
それと同時に涙が出てきた。
「かすみって案外、乙女チックなのね」
「案外って失礼だよ。私は十分乙女チックだよ」
「30にもなって?」
「まだ、30じゃない!」
かすみ……きみは私への愛を覚えていてくれたのか……
この言葉はなんともナルシストだ。
でも、そう言わざるを得ない。
かすみ……君はわたしのことをすべて忘れていいんだ。
君は夢が叶ったじゃないか。
みんなに慕われる先生になるっていう夢が叶ったじゃないか。
もう忘れていいんだ。
私は夢が叶った君の姿を見たい。
それだけなんだ。
だから、君に会いたくなるようなことを言わないでくれ。
頼むから……!!
私の涙が頬をつたい、顎の先からしずくとなって下へ落ちる。
重力に逆らうことなく、物理法則にしたがって落ちていく。
そして、
「あれ?雨かしら?」
「え?本当?かすみの気のせいじゃないかしら?」
「んー……」
かすみの鼻先に触れた。
ああああああああああああああああああああああああああっっ!!!
私は慟哭した。
でも、その声は決して届かない。
私の愛する人の耳には。




