共に生きてきた、愛する人の喪失
「なずなさん!!」
地面に倒れこんだ仲春はすぐに立ち上がり、なずなの名を叫んだ。
「やってしまった……」
「どうするんですか……?」
秋晴と日和は最悪な事態に陥っていた。
そして、仲春たちの方も最悪な状況に陥っていた。
なずなが死んだ。
もう助からない。
胸の中央には穴が開いていた。
ハンドボール大の大きさの穴。
だが、血は一滴も出ていなかった。
高温により欠陥が委縮、やけどによって欠陥が塞がっていた。
けれども確実に死んでいる。
胸の中央をその大きさでくり抜かれれば、心臓もなくなる。
「なんで…やっと仲直りしたというのに……」
なずなの体にひびが入る。
それは氷にひびが入るように。
そして、そのひびは広がり、美しく砕け散った。
氷の細かな破片が宙を舞う。
そしてそれと同時に雪が降り始める。
「始まる……」
秋晴が呟いた。
「あぁ、どうしてやろう……もうどうでもいいや……
こうなったら、君を殺しても構わない。すべて消えてしまえ」
もう一度、擬似太陽を放つ。
今度の標的はつぐみだった。
そして、それをくらったのは仲春だった。
仲春がつぐみを突き飛ばした。
その時、脇腹を抉られた。
またもや血は出ない。
こんどは脇腹であるため意識はまだあった。
「ハァ…ハァ……つ、つぐみ……」
「ハル……ハル!!死なないで!!いやだよ!私ハルと一緒じゃなきゃいやだよぉ!!」
仲春がつぐみの手を握る。
そして、雪の勢いが強くなる。
「結局……負けるのか……」
仲春は涙を流す。
「つぐみの…いうとおり……弱気になるのが…だめだったんだな……」
「ハル!!死なないで、ハル!!」
やさしく降っていた雪が、吹雪へと変貌する。
「鬱陶しい……その呼び名が君に言われているのかと思うと本当に腹が立つ……」
秋晴がすでに目を閉じている仲春に手をかざす。
擬似太陽が仲春の頭部を消し去った。
「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
つぐみは叫んだ。
「………………ル。……ロ……テ……ル。コロシテヤル……」
つぐみの目は死んでいた。
仲春の死はつぐみにとっては自分の死でもある。
「コロシテヤルッ!!」




