嫉妬、そしてわがまま
「さぁ、来てもらおうか」
二人が引力により秋晴のもとへ運ばれた。
地面へ倒れこむ二人。
「君はまだあきらめていないのか……?」
「諦めきれねぇよ……俺はこの世界で生きていきたいんだ……」
「諦めればいいものを……。次の世界で必ずしも君の大好きな彼女に会えないっていうわけじゃないんだよ?
私みたいに何度も彼女に出会い、彼女と付き合い、そして彼女は殺された。
諦めなよ……諦めてくれ!」
声を荒げる。
「君たちを見てると憎たらしいんだ……妬ましいんだ……
なんで君たちが幸せになっているのかって……
なんで、私たちが幸せになれないのかって……
ふざけてる!こんな世界創り直してやる!!」
「ただの妬みかよ……なんで俺たちが、なんでこの世界の人間みんながそのとばっちりに会わなきゃいけないんだ!!」
仲春は立ち上がり、秋晴にそう怒鳴りつけた。
「この世界にはこの世界で生きていきたい人がいるんだよ!!
その人たちの邪魔をしないでくれ!!」
「……この世界にはその逆を考えている人もたくさんいるんだよ。
その二つ、どちらの夢を叶えた方がいい?もちろん、後者だ。
前者なんて、どうせ世界をやり直しても幸せになれるのだよ」
仲春は応えられなかった。
彼の言うことに一理あった。
でも、自分の言うことにも一理あるはずだと仲春は思っていた。
そう思うしかなかった。
そう思わなければ彼は挫けそうだった。
「憑依している君。出てきてくれないか。じゃないと、この子を殺せない」
「!!」
その言葉につぐみはますます憑依を解く気にはなれなかった。
無言を貫く仲春を秋晴は殴った。
「仲春君!!」
なずなが地面に倒れこんだ仲春を支える。
「出てくるんだ。今の状態でこの子を殺すと君も殺してしまう。それだと計画がダメになるんだよ」
(出るんだつぐみ)
「いやよ!なんで、でなきゃいけないのよ!!」
(もう無理なんだ。あきらめよう)
「絶対に勝つって言ったじゃない!!」
(あの時は……)
「ハルのバカ!!なんで……なんでなのよ……この世界でいっぱい楽しい思い出作ろうよ……」
仲春の隣につぐみが現れる。
「え?なんで……」
それは決してつぐみが自分の意志で解いたのではなかった。
「はじかれた……?」
それは仲春がつぐみを拒んだから。
それをつぐみは感じ取ってしまった。
「なんで……拒んだの……?」
「頼むから……もう、諦めよう……」
「ものわかりがいい人間は好きだよ」
宙に浮かぶ擬似太陽が消える。
そして、秋晴のてのひらに小さな擬似太陽が現れる。
「な、なにをする気だ……」
「仲春君……君は邪魔なんだ」
擬似太陽を仲春に放つ。
仲春はまだなずなに支えられていた。
だから、よけられない。
でも、それが彼の体にあたることはなかった。
「なずな……さん……?」
なずなが彼の体を投げ飛ばしていた。
「消しきれない!!」
急いで擬似太陽を消そうとした。
だが、それは一瞬にして消えることはなく萎んで消えるのだ。
それでも擬似太陽はある程度の大きさがある状態で、なずなの体を溶かし貫いた。
口から血が溢れる。
つぐみは見ていた。
なずなの胸の結晶が砕ける瞬間を。
空が灰色に染まる。
灰色の雲が空を覆った。




