出会い
気づけば、自分は座っていた。
どこかの家の玄関の横で自分は膝を抱えて座っていた。
どうしてここにいるのかわからない。
どうやってここに来たのかわからない。
自分の過去もわからない。
わからないことばかりだった。
わかるのは、
「つぐみ……?」
自分の名前だけだった。
つぐみは自分の名前を呟いた後、目を閉じた。
何もわからないから、ここを動くのが怖かった。
だから、目を瞑った。
目を閉じれば時間は早く過ぎ去る。
それは、どうしてかわかった。
人は夜になれば眠る。
眠ればすぐに朝がやってくる。
それは記憶がない彼女でも、本能でわかったのだろう。
そして、気づかぬうちに眠りに落ちていた。
それがわかったのは、誰かに体を揺さぶられ目を覚ましたからだ。
「んんっ……」
つぐみは顔を挙げる。
そこには男の子がいた。
自分と同年代ぐらいの男の子。
幼くて、かわいらしい顔だった。
「ねぇねぇ、君どうしてここにいるの?」
「……わからない」
「えーと、それじゃぁ、名前は?」
「つぐみ……」
「僕は、なかはる。覚えた?」
「うん……」
小さく頷いた。
「あれ?仲春、その子は?」
男性の声が聞こえた。
仲春が後ろを振り返る。
「つぐみちゃん。ここにいたんだ」
男性が近づき、つぐみの目の前でしゃがみこみ、目線を合わせる。
目元が仲春に似ていた。
すぐに、彼の父親だとわかった。
「一体、こんな寒い日にひとりでどうしたんだい?」
「わからない……気づいたらここにいたの……」
「そうか……それじゃ、お家は?」
「わからない……。わからないのぉ……なんにもわからないのぉ……!」
つぐみは涙を零す。
名前以外何もわからない自分が怖く感じた。
とても不安に感じた。
顔をうずくめて泣き続ける。
そして彼女は首元に何かかが被さるのに気付いた。
それはとても温かかった。
自分が感じた、恐怖と不安をかき消すかのようの温かさ。
「寒いでしょ?マフラー、使って」
仲春が自分のマフラーを首にかけてくれたのだ。
「さて、つぐみちゃんだっけ?立てるかな?」
仲春の父がそう言う。
「うん……」
泣くことを止め、立ち上がる。
そして、仲春がマフラーを首にちゃんと巻いてあげる。
「寒くない?」
「うん、とても温かい……」
その後、三人はつぐみの親や家の場所を探すために交番に向かった。
しかし、見つからなかった。
警察の方も必死で探してくれたらしい。
だが、見つからなかった。
そのため、つぐみは彼らに引き取られることになった。
「生年月日は……わかる?」
「わからないです……」
今は養子縁組届に記入している。
「そうか。誕生日は……あの日、12月7日として……年は……」
「僕と同じでいいんじゃない?」
「どうして?」
「僕と同じなら学校でも同じクラスになれるかもしれないし、そうしたほうが
つぐみちゃんと一緒にいられるから安心できるんじゃないかなって」
「そうだな……それじゃ、それでいいかい?」
「はい」
『平成○年12月7日』
これがつぐみの誕生日。
ちなみに、仲春の誕生日は4月30日。
この日、つぐみは佐保姫家の家族となった。




